ゼインが1月15日にリリースしたサードアルバム『ノーバディ・イズ・リスニング』では、“誰も知らないゼインの物語”が歌われている? ソロデビューから徹底してメディアで語らない姿勢を貫き、その音楽だけで自分を語ってきたゼインが、長年くっついたり別れたりを繰り返してきた恋人ジジ・ハディッドとの間に第1子となる娘が誕生した今、最新作に込めた思いに迫る。(フロントロウ編集部)

今年でデビューから10周年を迎えるゼイン

 ゼインことゼイン・マリクは2010年、当時17歳だった時にソロで英オーディション番組『Xファクター』に出演。ハリー・スタイルズ、ナイル・ホーラン、ルイ・トムリンソン、リアム・ペインと共に番組内でワン・ダイレクションを結成し、翌2011年にグループでデビューを果たした。

画像1: 今年でデビューから10周年を迎えるゼイン

 ワン・ダイレクションに在籍していたおよそ4年半のなかで、リリースしたアルバム4枚で全米アルバムチャートの首位を獲得したほか、世界中に多くのファンを獲得。2014年に行なったワールドツアーではおよそ350万人を動員し、ここ日本でも、2015年2月〜3月にかけて行なったジャパンツアーでおよそ20万人を動員した。世界中のファンを虜にし、ポップスターの名を欲しいがままにしていたワン・ダイレクションだったけれど、人気絶頂のなかで、ゼインはジャパン・ツアーを終えた直後の2015年3月25日にグループから脱退することを発表した。

ソロとしてもセンセーショナルなデビュー

 ゼインはその後、2016年1月にシングル「ピロウトーク」をリリースしてソロアーティストとしてデビュー。全英/全米のシングルチャートで初登場1位を獲得し、グループからソロデビューしたアーティストとしてはザ・ビートルズのジョージ・ハリスン以来という快挙を達成した。

 さらに、ワン・ダイレクションを脱退してからちょうど1年後となる2016年3月25日にファーストアルバム『マインド・オブ・マイン』をリリース。こちらも、全英/全米のアルバムチャートで初登場1位を獲得し、イギリス出身のソロアーティストとして史上初めてデビューアルバムを全米初登場1位に送り込んだ。

 その後はテイラー・スウィフトとコラボ曲「アイ・ドント・ワナ・リヴ・フォーエヴァー(フィフティ・シェイズ・ダーカー)」をリリースしたり、シーアと「ダスク・ティル・ドーン」をリリースしたりと、多くのアーティストとコラボシングルをリリースした後で、2枚組29曲入りの超大作となったセカンドアルバム『イカロス・フォールズ』を2018年12月にリリース。アーティストとしての多作さを示してみせた。

ジジ・ハディッドとの第1子が誕生

 ゼインのソロキャリアを語る上で欠かせないのが、彼にとってのミューズとも言えるモデルで恋人のジジ・ハディッドとの関係性。

画像1: ゼインが最新作『ノーバディ・イズ・リスニング』で綴る“誰も知らないジジとの物語”【全曲レビュー】

 ゼインは、ソロデビューシングル「ピロウトーク」のミュージックビデオにも出演したジジと2015年末に交際をスタートさせ、その後およそ2年間の交際を経て2018年に破局。そのおよそ3ヶ月後に復縁するも、2019年1月に再び破局が報じられた。

 しかしながら、2人の縁はそう簡単には切れなかったようで、2019年11月に再び接近。2020年4月には、ジジが妊娠したことが報道によって明らかになり、2020年9月に第1子となる娘カイが誕生した。

画像2: ゼインが最新作『ノーバディ・イズ・リスニング』で綴る“誰も知らないジジとの物語”【全曲レビュー】

 そんな、プライベートで1つの節目を迎えたなかで2021年1月15日にリリースされたのが、サードアルバム『ノーバディ・イズ・リスニング』だった。

画像2: 今年でデビューから10周年を迎えるゼイン

 ゼインはソロデビューして以降、メディアでほとんど取材に応じないことで知られており、“音楽で語る”姿勢を貫いてきた。なので、今回についてもゼインがニューアルバムに込めた思いは本人の口からは語られていないのだけれど、29曲入りだった前作『イカロス・フォールズ』とは打って変わって、11曲入り36分と“ボリュームダウン”した最新作には、ゼインが今伝えたいメッセージが濃縮されていると言える。

 ゼインがワン・ダイレクションを脱退した時には、人気絶頂だったグループを去ったことで一部のファンやメディアからや批判を集め、そっぽを向かれる形になったが、そうしたバックラッシュを逆手にとったとも言える最新作のタイトル『ノーバディ・イズ・リスニング=誰も耳を傾けない』には、“誰も知らない/聞いていない自分の話”というダブルミーニングが込められているのではないだろうか。

 フロントロウ編集部が全11曲を徹底的に聴き込み、それぞれに込められたゼインの思いを紐解いてみた。

1. カラミティ

 『ノーバディ・イズ・リスニング』の幕開けを告げるのは、ゼインが独り言のように思いの丈を吐き出すスポークン・ワードによる楽曲「カラミティ」。「正解もない、俺の考え方が非難されるだけなら/どの不正解を選べばいいんだ?/手元に残ったのは何もない部屋だけ/俺達の部屋だ、正直に話そう」とゼインはつぶやきながら、「誰も、誰も、 yeah 俺の話を聞いてもいない(Nobody, nobody yeah/Is listening to me)」とアルバムのタイトルにもなっているフレーズを歌い上げ、オーディエンスに向けて、これから“誰も聴いていない”自身の歌集が流れることを告げる

2. ベター

 米現地時間9月24日にジジ・ハディッドとの間に娘のカイが生まれたことを発表したゼインが、第1子誕生のわずか数時間前にリリースを告知していたのが、『ノーバディ・イズ・リスニング』からのファーストシングルとなった「ベター」だった。娘誕生を報告した翌日の9月25日にリリースされたこの曲で、ゼインは「その涙を抑える方法があるだろうか?/涙にくれる君を見ている/なぜいつしか憎むことになるのだろう? 愛を守る方法はあるのかな?」と、3人家族となったことを噛みしめ、新たに父親としての視点を含めて歌っている。

3. アウトサイド

 「考えるだけで苦しいんだ/他の誰かが君のベッドにいると思うと」と、ジジと一時的に別れていた期間を思い起こさせるような歌詞が登場する「アウトサイド」では、「犬は俺が引き取る? それとも君が欲しい?/犬を見てるだけで君を想ってしまう」という、2017年に交際していた頃にたびたびジジのSNSに登場していた飼い犬のスティッチのことと思われるような歌詞も歌われる。

4. ヴァイブス

 リリース時に恋人のジジ・ハディッドがインスタグラムストーリーで宣伝したことも話題になった「ヴァイブス」。「ずっと待たせるのはやめてくれよ/近づきたくて一晩中待ってるのに」という歌詞からスタートするこの楽曲は、ジジとのベッドタイムを想像させるような甘いラブソングとなっていて、ゼインは「あらゆること、全部してあげる/君が夢の中でしか起こらないと思ってたことも/ガール、君の居場所はここ/だからもう俺に我慢させないで」と愛を囁いている。

5. ホウェン・ラヴズ・アラウンド feat. シド

 ヒップホップグループ、ジ・インターネットのボーカルであるシド・ザ・キッドが参加した「ホウェン・ラヴズ・アラウンド」は、アルバムのリリース時にファンの間で最も話題になった楽曲の1つ。「俺の妻になってくれればいいのに」と、ゼインが恋人ジジとの婚約を匂わせている一方で、シドは「人はすぐに無茶をしがち/人は焦りだけで愛そうとしがち/1人の女性だけで十分/あなたに愛する意味を教えてあげられるのは」と、愛を教えてくれる女性は生涯で1人だとゼインに語りかけている。ゼインとジジはまだ婚約を発表していないものの、2人から発表される日も近い...?

6. コネクション

 “繋がり”を意味する「connection」をもじったタイトルがつけられた「コネクション(Connexion)」でゼインが歌うのは、「思いっきり飛び込んでみるんだ/さぁ、未開の経験へ/そうすることしか知らないかのように/ベイビー、君はついてこれる?」という、3人家族という新しい生活を共に協力して乗り越えていこうと伝えているかのような、ジジへのメッセージとも取れる歌詞。

7. スウェット

 アルバムが後半に差し掛かって間もなくして披露される7曲目の楽曲「スウェット」は、愛について歌う楽曲が多く収録された本作のなかでも、最もストレートに愛情が表現されている1曲。「俺がやりたいと思うことはただ1つ/君がやりたいと思うことはただ1つ」というフレーズで表現されるのは、文字通り“汗=スウェット”を伴う愛の行為で、「俺の肌が君の肌の上に重なり/何度も、何度も/濡れて、俺のために」と、低音が響く音楽に載せてゼインはベッドに誘っている。

8. アンファックウィテーブル

 一連の楽曲で恋人への愛を囁いてきたゼインだけれど、“騙されるような人間じゃない”を意味する「アンファックウィテーブル(Unfuckwitable)」というオリジナルの言葉がタイトルにつけられたこの楽曲で、トーンは一転する。ワン・ダイレクションというメガグループを脱退し、ソロとして再出発した自身に向けられた批判に反論するかのように、「俺は何もしないって言うけど/そう言ってた奴らがみんな俺の新しいのに食らいついてる」と、批判してきた人々が自分の新曲を聴いている状況を揶揄している。

9. ウィンドウスィル feat. デブリン

 「デブリンの『Bitches』は最高だよ」とゼインがロンドン出身のラッパーであるデブリンについて2016年にツイートしていたけれど、2人のコラボが「ウィンドウスィル」で実現した。

画像: 9. ウィンドウスィル feat. デブリン

 「ウィンドウスィル」は、7曲目の「スウェット」と並んでアルバムにおける最も大胆な楽曲の1つで、ゼインは「カウンタートップ、貯蔵室、ベッドにドアでファック/俺に目隠しして俺に乗ってもいい/手におえるなら、望んでるなら」とリズミカルに歌い上げている。

10. タイトロープ

 ジジとの関係を不安定な“綱渡り=タイトロープ”のようなものに見立てていると思われるこの楽曲で、ゼインは「君は心の準備は出来てる?/俺はもう手離す準備は出来てる」と、不安定だった日々と決別し、全力で愛と向き合う準備が整ったことを宣言。彼はくっついたり別れたりを繰り返してきたジジとまた別れてしまう日が来るのではないかと不安を感じながらも、「なんとなく、君じゃないかと思うんだ」と、運命を信じる気持ちを歌っている。

11. リバー・ロード

 アルバムを締めくくるのは、ギターのサウンドをバックに静かに歌われる「リバー・ロード」。ゼインが2020年5月にタトゥーにも入れていた、レバノン出身の詩人で芸術家のハリール・ジブラーンが“愛と結婚”について綴ったポエム「On Love and Marriage(オン・ラブ・アンド・マリッジ)」に触れた、「俺達は2人で1つじゃない/それぞれ自立してる/ただ互いの支えになるだけ」という歌詞から幕を明けるこの楽曲でゼインが歌うのは、先が見通せないなかで抱える葛藤について。

 ゼインは「全ての結果をコントロールすることは出来ない/辛いことは忘れるしかない、リズムで/自分のビジョンに確信がなくて/この気分はずっと持ってきた」と、ビジョンに確信が持てない不安を吐き出しながらも、「ただ互いの支えになるだけ/俺の枕に横たわり/君をラヴァーと呼び/大量に飲んで/俺は号泣したりしない/フワフワとして/期待しないでくれ、それ以外は」と、恋人の側から離れないことだけは約束している。

 11曲が収録された最新作『ノーバディ・イズ・リスニング』で、“誰も知らない自分の物語”を歌ったゼイン。ワン・ダイレクション脱退後の葛藤について歌ったと思われる楽曲も中には含まれるものの、全編を通して感じるのは、やっぱりソロデビュー当時からゼインの芸術にインスピレーションを与えてきたジジ・ハディッドへの愛で、家族が増え、気持ち新たにこれからも一緒に歩んで行こうとしているゼインの純粋な思いを感じることができる。

<作品情報>

画像: 11. リバー・ロード

ゼイン | 『ノーバディ・イズ・リスニング』
発売中
SICP-6371 / ¥2,200+税
日本盤初回仕様のみジャケ写ステッカー封入

<トラックリスト>
01. カラミティ | Calamity
02. ベター | Better
03. アウトサイド | Outside
04. ヴァイブス | Vibez
05. ホウェン・ラヴズ・アラウンド feat. シド | When Love's Around feat. Syd
06. コネクション | Connexion
07. スウェット | Sweat
08. アンファックウィテーブル | Unfuckwitable
09. ウィンドウスィル feat. デブリン | Windowsill feat. Devlin
10. タイトロープ | Tightrope
11. リバー・ロード | River Road

(フロントロウ編集部)

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