素晴らしき鬱映画
そのストーリー、映像、カメラワークなどから名作と評される作品は多数存在する。しかし名作がゆえに、その強いメッセージが視聴者の心の奥底にまで届き、もう1度見ることはためらってしまう作品もある。
ニュージーランドのコメディアンで脚本家のローズ・マタフェオがツイッターで、「もう二度と、もしくは、少なくとも長い間は見たくない最高な映画は何?」と投稿したところ、数多くのタイトルがあがった。そのなかでも、複数のユーザーから名前があがったり、多くのいいねがついたりした作品とは?
『脳内ニューヨーク』
ローズが真っ先にあげたのは、映画『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』の脚本家であるチャーリー・カウフマンの監督作品であり、故フィリップ・シーモア・ホフマンの存在感が際立った『脳内ニューヨーク』。
フィリップ演じる劇作家のケイデンは、人生に嫌気が指していた時にマッカーサー・フェロー賞を受賞。その賞金と名誉で、理想のニューヨークを作り出し、誰も見たことのない舞台を作り出すという人生をかけたプロジェクトに取り掛かる。
またローズは、『メランコリア』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『ファントム・スレッド』も、完璧だけれど、もう一度見るまでには時間を空けたいそう。
『レクイエム・フォー・ドリーム』
若かりしジャレッド・レトやジェニファー・コネリーなどが共演しており、様々な映画賞にノミネートされるなど、評価も高い一方で、2009年には、英Empireが「落ち込む映画」の1位に選んだほど鬱映画として名高い『レクイエム・フォー・ドリーム』は、ここでも名前があがった。
ある4人の人物が、薬物に依存するようになり、物語は破滅へ向かっていく…。
『ルーム』
実の父親に娘が24年間、家の地下室に監禁され、強姦され、出産した実際の事件であるフリッツル事件に影響を受けているフィクション映画『ルーム』は、その物語も、主演のブリー・ラーソンや子役のジェイコブ・トレンブレイの演技も、非常に高い評価を得ている。
一方で、鑑賞しながら、もしくは見終わったあとに実際の事件の存在を感じてしまう人も少なくなく、もう1度見るというのはハードルが高いと感じる映画ファンは一定数いるよう。
『パンズ・ラビリンス』
鬼才ギレルモ・デル・トロ監督によるダーク・ファンタジーは、その映像美と作り込まれた世界観で見る者を圧倒する。第79回アカデミー賞では撮影賞、美術賞、メイクアップ賞も受賞したほどだけれど、その徹底された世界観に圧倒されすぎたファンも少なくないよう。
1940年代のスペイン。冷酷な義父に苦しむ少女オフェリアは、ある日、妖精たちが姿を変えた虫たちに導かれ、迷宮の世界へと足を踏み入れる…。
『ザカリーに捧ぐ』
『ザカリーに捧ぐ』は、ある青年を殺した元恋人、その赤ちゃん、そして息子を殺された両親で赤ちゃんの祖父母を追った、実際にあった残酷な事件を収めたドキュメンタリー映画。
本作のタイトルをあげた1人のユーザーは、楽しい夕食の後に知人たちに見せたそうで、「そのうちの2人は今でも話してくれないけど、2人を責めることはできない」と自虐コメントをしていた。
今回は、素晴らしいけれどもう見たくはないという映画の名前が集められたので、鬱映画として有名な作品でも名前が出なかったタイトルも。一方で、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『縞模様のパジャマの少年』などの存在感がなかったのは意外かもしれない。自分が思う作品タイトルを考えてみるのも面白いかも?(フロントロウ編集部)