投票者に黒人が1人もいないことが暴露されたHFPA
2021年3月のゴールデン・グローブ賞開催直前に、受賞者を決めるわずか90名ほどの会員の中に黒人が1人もいないうえ、ノミネート作品からの接待を受けていた疑惑が出た、主催団体のハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)。
黒人会員がいない問題に対してHFPAは「行動計画を早急に実行に移す」と約束して、授賞式本番に役員を緊急出演させて「我々の組織には黒人ジャーナリストがいなければなりません。全員が席を確保しなければなりません。それは、多様性が、例外ではなく当たり前になるような環境を作ることを意味します」とした。
具体的な行動計画がなかなか示されないなか、同じ業界で働く関係者たちが動いた。
ハリウッドのパブリシストが連盟で“行動”を要求
今回、ハリウッドの俳優たちをクライアントに持つパブリシストたちが、HFPAに早急な行動を求める声明を連盟で発表。
HFPAは早急に大きな変革に向けた行動を起こす必要があるとしたパブリシストたちは、事の重大さを訴えるためにも、「変革のための明確な計画とタイムラインが示されるのを待つ間は、HFPAのイベントやインタビューに参加することを我々のクライアントに推奨することはできません」とコメント。
さらに、一丸となってHFPAの変革をサポートするつもりがある一方で、「我々のクライアント、その同僚、世界中の視聴者の多様性と尊厳を尊重する、透明性のある有意義な変革」を行わなければ、自分たち及び自分たちのクライアントとHFPAの関係は「直ちに回復不能なダメージを受けることになる」と語気を強め、事実上の“行動がなければ絶縁”という意思が示された。
HFPA(ハリウッド外国人映画記者協会)、会員の13%が黒人
ハリウッドのパブリシストたちからの連盟メッセージが公開された直後、HFPAが声明を発表。
「理事会は、今年の会員数を最低でも100名に増やす計画を全会一致で承認しました。その際、会員の13%以上が黒人ジャーナリストであることを条件としています」と、これまでの約90人から100人以上へと会員数を増やし、現状はゼロである黒人の会員数を全体の13%に増やす、という具体的な計画を発表した。
さらに、人種間の公平性に関する専門家であるショーン・ハーパー博士の指揮のもと、以下を変革計画のポイントとすると発表した。
- DEI=ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の観点から、ポリシー、実務、会員募集活動、会員選考プロセスを分析
- 暗黙の偏見、明示的な偏見、戦略的な会員の多様化、人口動態の変化に伴う協会の発展、黒人会員の包括的な環境への受け入れ
- 女性会員のリーダーシップへの公平な道筋の確保
- DEIに関するトピックについて今後5年間で四半期ごとに20回のトレーニングを実施
投票者と受賞者が白人男性を中心に構成されていたことが「OscarSoWhite(オスカーは真っ白)」というハッシュタグに繋がり変革を求められたアカデミー賞は、その後、“2020年までに女性や白人以外の人種の会員数を倍にする”という目標を達成し、現在は、2025年までの新たな目標を設定して動いている。そんなアクションの後押しも受け、2021年のノミネーションでは、初めて複数の女性監督が監督賞にノミネートされたり、アジア人俳優が初めて主演男優賞にノミネートされたりと、数多くの“史上初”を達成した。
今回のHFPA(ハリウッド外国人映画記者協会)の動きがエンタメ界の大きな変化につながるか、世界中が注目している。(フロントロウ編集部)