主演のはずなのにアカデミー賞「助演男優賞」にノミネート
1960年代後半から1970年代にかけてアメリカで黒人民族主義運動・黒人解放闘争を展開した急進的政治組織「ブラックパンサー党」の指導者フレッド・パンプトンの暗殺事件を描いた伝記映画『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』。
映画『ゲット・アウト』で一躍注目を浴びたダニエル・カルーヤ演じる、フレッドに関する情報をFBIに提供する内通者としてブラックパンサー党に潜入する主人公のウィリアム・オニールを演じたラキース・スタンフィールド(※)は、第93回アカデミー賞でダニエルとそろって助演男優賞にノミネートされた。
※日本のメディアでは「レイキース・スタンフィールド」と表記される場合もある。
映画はラキース演じるウィリアムとダニエル演じるフレッドの両方の視点で描かれるものの、主演はラキース。米Varietyによると、配給元であるワーナー・ブラザースもラキースを主演男優賞のカテゴリーにエントリーしたが、日本時間3月15日に発表されたノミネートリストでは、ラキースは「助演男優賞」にノミネートしたことが明らかになった。
本人も困惑 でも…
『ゲット・アウト』でダニエルと共演したほか、『アンカット・ダイヤモンド』、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』といった話題作で確かな演技力と存在感を見せつけてきたラキース。
アカデミー賞にノミネートを果たすのは初めてとあり、彼を応援するファンたちも大いに沸いたが、やはり主演であるはずのラキースが助演男優賞枠で選ばれたことが、どうにも腑に落ちないという意見が続出した。
「一体なぜこんなことが起きたのか? 」とSNSで議論が交わされるなか、ラキースがインスタグラムストーリーを通じて自身の胸中を吐露。
「俺だって困惑してるよ、でも、いいじゃないか(笑)!」と、世間の多くの人たちと同様にノミネート結果に戸惑っていることを明かしつつ、それでも嬉しいと喜びを滲ませた。
ラキースはその後、このコメントを削除し、さらにポジティブな見解をシェア。自身の顔に小さなタトゥーが入っていることを話題にして、「顔面にタトゥーが入ってる俳優が(アカデミー賞に)ノミネートされたのなんて初めてだろ(爆笑)」とユーモアを織り交ぜて綴った。
どうしてこうなった?
ラキースが主演ながらも助演男優賞にノミネートされたのは、誰がどのカテゴリーにノミネートするかを決めるのは、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー側だから。
たとえ、映画の制作・配給会社がエントリー枠を指定したとしても、アカデミー側の意向に沿ってノミネーションが決まる。
Varietyの映画アワード担当記者のクレイトン・デイヴィスは、ラキースが助演男優賞にノミネートされたのは、「アカデミーの俳優部門が『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』が、(ラキースとダニエルの)アンサンブル(によって成り立っている)作品だと見なしたためなのではないか」と分析している。
ラキースとダニエルがそろってノミネートを果たした助演男優賞には、『シカゴ7裁判』のサシャ・バロン・コーエン、『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』のポール・レイシー、『あの夜、マイアミで』のレスリー・オドム・Jr.がノミネートしているが、果たして栄冠は誰の手に?
『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』は、作品賞、撮影賞、歌曲賞(H.E.R.「Fight for You」)にもノミネートされている。(フロントロウ編集部)