「黄色いキャップ」のコカ・コーラ
売上高、ブランド価値ともに世界トップのソーダ飲料の座に君臨するコカ・コーラ。世代を越えて愛されるコカ・コーラのペットボトルといえば、最も一般的なのは赤いキャップがついたものだけど、アメリカやカナダなどの欧米の国々では、春になると「黄色いキャップ」がついたものも店頭に登場する。
何かのキャンペーンかと思いきや、じつはこの黄色いキャップは使用されている材料の違いを表す目印。とくにユダヤ教の人々に向けて示されているもので、黄色いキャップがついたコカ・コーラには、異性化糖(※)の代わりに、テンサイやサトウキビなどから得られるスクロースが使われている。
※おもにブドウ糖から成るコーンシロップ(トウモロコシ)を、酵素かアルカリによって異性化した果糖とブドウ糖を主成分とする糖。
ユダヤ教のお祭りと深い関係が
ユダヤ教では、太陽暦で4月5日から13日の間のいずれかの日に「過越(すぎこし)」と呼ばれる、イスラエル人が隷属から解放されてエジプトを脱出したことを祝う祭りが行なわれるのだが、その間はユダヤの戒律・慣習に従った食事を口にする決まりとなっている。
そのなかには、酵母を使った食品を口にしてはいけないという制限も。現在販売されているコカ・コーラに使用される異性化糖は、酵素を使って異性化したコーンシロップを含んでいるため、過越の最中に飲むのは適さない。
コカ・コーラはもともとスクロースを使って作られており、「コーシャー(Kosher)」と呼ばれるユダヤの戒律に反しない飲み物だったが、長い歴史の中で異性化糖を使用するようになった。
しかし、1935年以降、コカ・コーラ社は、アトランタの著名なラビ(ユダヤ教指導者)と協力し、過越の期間中でもユダヤ教の人々にコカ・コーラを楽しんでもらおうと、期間限定で以前のようにスクロースを使ったレシピで製造したコカ・コーラを販売することに。その目印として採用されたのが黄色いキャップだったというわけ。
このキャップには、コーシャーであることを証明する正統派ユダヤ教信徒協会連合の「O-U-P」という文字も書かれている。
"Coca-Cola produces a modified version of Coke that switches out high fructose corn syrup for sucrose so that it's kosher for Passover. In addition to being labeled as such, the bottles are topped with a yellow cap for easy identification."
— Grimly Optimistic (@RDGStout) March 29, 2021
—Mental Floss pic.twitter.com/gKwcqFEjGm
日本ではお目にかかることはないけれど、もしもいつか4月に海外に旅行し、スーパーやコンビニを訪れた際には、黄色いキャップのコカ・コーラを探してみて。異性化糖を使った現代人にお馴染みの味とスクロースを使った元来のコカ・コーラの味を飲み比べてみると楽しいかもしれない。(フロントロウ編集部)