好きなことは、音楽やダンスに、友だちと遊ぶこと、食べること、それから、Disney+ (ディズニープラス)を観ること。3月26日にニューEP『トゥー・ヤング・トゥー・ビー・サッド』をリリースした、2003年7月1日にカナダで生まれた現在17歳のテイト・マクレーの趣味は、どこにでもいるようなZ世代の子たちと変わらないけれど、音楽がダンスとなってテイトの身体に宿った瞬間に、歌詞が歌声となった瞬間に、テイトはZ世代を代表する、最も将来が楽しみなアーティストへと姿を変える。テイトが自分と同じ世代のファンを惹きつける理由はどこにあるのだろう? 本人へのインタビューを交えながら、テイトの魅力や、最新EPの収録曲をレビュー。(フロントロウ編集部)

Z世代の期待の17歳、テイト・マクレー

シンガーデビューは「試しに歌ってみた」がきっかけ

 2016年に放送された大人気ダンスオーディション番組『アメリカン・ダンスアイドル』シーズン13に出場し、第3位でフィニッシュした実力を持つダンサーだったテイト。同年には、ジャスティン・ビーバーのパーパス・ワールドツアーのカルガリー公演でバックダンサーに抜擢されるなど、全米屈指の期待の若手ダンサーとして活躍していたテイトが、シンガーとしてデビューすることになったきっかけは、とってもユニークなもの。

画像: シンガーデビューは「試しに歌ってみた」がきっかけ

 シンガーとしてのキャリアは、2017年にYouTubeにアップしたオリジナル曲「One Day」が注目を集めたところからスタートした。『アメリカン・ダンスアイドル』で注目を集めたテイトは出演後、ダンスや歌っている動画などを披露するために自身のYouTubeチャンネルで『Create With Tate』というシリーズをスタート。しかしながら、番組のスタートから4週目に、映像がすべてなくなってしまうというアクシデントが。その時、どうにかチャンネルにコンテンツをアップしようと考えたテイトが、たった20分で書いたのが、「ワン・デイ(One Day)」というピアノバラード

 「i wrote a song(意味:私は曲を書きました)」というタイトルでアップしたこの動画が、瞬く間に注目を集めることとなり、この動画がきっかけで、最終的にレコード契約まで至ることとなった。

 テイトはその後も毎週1曲のペースで新曲をアップ。YouTube出身のアーティストといえば、テイトがダンサーを務めたジャスティン・ビーバーもそうだし、2人と同じカナダ出身のショーン・メンデスは、6秒動画アプリ「Vine」でブレイクしたことがきっかけ。さらに、現在では、TikTokで注目を集めることがヒットに繋がることも多く、動画アプリからスターになるアーティストは少なくない。

 けれど、テイトのように、元々は別の動画をアップしていたティーンが、“コンテンツがないので試しに歌ってみた動画”で、アーティストとしての隠れた才能が発揮されるというのは、誰もが日常的にSNSに動画をアップすることがノーマルなことになった、初めて買い与えられる携帯がスマートフォンということが多いZ世代ならではと言える。

スマホ世代として

 そんな、オンラインがきっかけでデビューしたテイト自身も、多感なティーンの時期からオンラインで人々と繋がることが当たり前となっている自分たちの世代が、オンラインのネガティブな側面も見なければいけないということを理解しているよう。「私たちはオンラインで、ほかの全ての人たちと自分を比較しながら育つことを余儀なくされる。12歳とか13歳とか14歳とか15歳の子にとって、そういったことと向き合うのは途方もなくハードなんだよね」と、テイトはフロントロウ編集部とのインタビューで話してくれた。

画像1: スマホ世代として

「だって私たち自身、自分が何者なのかまだ理解できていない。なのにオンラインで、めちゃくちゃキレイなボディや完璧な人々の姿を見せつけられたりするんだから、ものすごくプレッシャーを感じてしまう。つまり、のびのびと何も気にしないで暮らす、というような成長過程って、今ではもう完全に失われてしまったの。みんな、あまりにもたくさんの基準を押し付けられているから。それってムカつくことだし、だから私はSNSには出来る限り近付かないようにしているんだ」

 誰もが自由に、SNSのアカウントを通じて自分の意見を発信できるようになった今の時代。自分はまだまだ勉強が必要と謙虚なテイトは、自らの意見を発信することに慎重になっているという。

 「だって私はまだ17歳で、色んなことを学んでいる最中で、世界で起きている様々なことに関する自分の意見を練っている最中だもの。もちろん何かしら発言するべき時には、できるだけ自分の言葉で意思表示をしているんだけど、まだまだ知識を蓄えて学んでいる段階だから、そういう私が重要な事柄について語るのは早過ぎると思う」とテイト。

画像2: スマホ世代として

 「だって考えてみてよ、世の中には私より適任な人がいくらでもいるでしょ?(笑)まだまだ自分の立ち位置が定まっていない私が、不用意にあれこれ意見を言うべきじゃないと思ってる」と続け、誰もが自由に意見を発信できることの恐ろしさを知っているからこそ、自分の発言には細心の注意を払っていると明かした。

 とはいえ、テイトは良い目的のためなら、自分が持っているプラットフォームを積極的に利用することも。新型コロナウイルスのためのチャリティ・ライブ配信を、定期的にYouTubeで行なっている。

デビュー曲はビリー&フィニアスが制作

 テイトがZ世代で最も期待されているアーティストであることを、最も象徴的に示すエピソードがある。それは、レコード会社11社による争奪戦の末、RCAレコードと契約を結んだことを発表した2019年8月28日にリリースしたメジャーデビュー曲「tear myself apart」を、Z世代を代表するスーパースター、ビリー・アイリッシュ(19)と、その兄でシンガーソングライターのフィニアス・オコネル(23)が手がけたということ。

画像1: デビュー曲はビリー&フィニアスが制作

 「tear myself apart」は、これまでリリースした楽曲のなかで唯一、テイト本人がソングライティングに参加しなかった楽曲となっているのだけれど、テイトはこの楽曲をレコーディングすることになった経緯について、オフィシャルインタビューで次のように明かしている。「ビリーとフィニアスが書いた曲があるというオファーを受けたの。それで、言うまでもなく、私はビリーとフィニアスの大大ファンだから、あの曲を歌えて本当に光栄だった。レコーディングも、ふたりがいつも組んでいるエンジニアと一緒にやったし、その後ビリーのコンサートを観に行った時に彼女と対面して、最高にクールな体験だった」

 自分自身はソングライティングに関わっていないものの、同世代のビリーが書いたということで、とても共感できる部分があったそう。テイトは、「私としては基本的に、自分が書いた曲しか歌いたくないっていう気持ちがあるんだけど(笑)。やっぱり自分で書いた曲が一番誠実だし、感情移入するのもイージーだし、自分で書いた曲を歌うのが、私は単純に好きなの」と明かしつつ、「でも、もし自分以外の人に曲を書いてもらうんだとしたら、近い年齢の人に書いてもらいたい。私のメンタリティを理解してくれる人にね」と、2歳年上の2001年生まれのビリーが書いた曲には共感できたと語った。

EP『トゥー・ヤング・トゥー・ビー・サッド』の収録曲を紹介

画像2: デビュー曲はビリー&フィニアスが制作

1. 「バッド・ワンズ(bad ones)」

「私はいつも悪い人と恋に落ちてしまう
私を悲しくさせる人ばかり
自分を保とうと頑張るけど
いつだって私を締めつけるの」

 EPの1曲目に収録されている「バッド・ワンズ(bad ones)」は、自分を不安にさせるような相手と恋に落ちてしまう恋心を歌った1曲。テイトは、EPに『トゥー・ヤング・トゥー・ビー・サッド(意味:悲しくなるにはまだ若過ぎる)』というタイトルをつけた理由について、オフィシャルインタビューで次のように語っている。

 「このEPの収録曲はどれも、すごくドラマティックなラヴソング、もしくはブレイクアップ・ソングで、私が実際に感じたこと、書きたいと思って選んだ題材を扱っているんだけど、完成したEPを通して聴き直した時に、『そうだ、EPの内容と完全に矛盾したタイトルにしよう!』っていうアイデアを思い付いたの(笑)。完全に否定するようなタイトルを考えようって。だから、そういうフレーズを選んだつもり。EPの内容とは全然関係ないフレーズをね」

画像: 1. 「バッド・ワンズ(bad ones)」

 けれど、テイトは人前で常に悲しんでいるようなタイプのティーンエイジャーではない。「私って基本的に明るくて、いつも冗談を言っている人間なの」と話すように、明るいテイトの姿は、テイトが定期的にYouTubeにアップしている動画からも見ることができる。「いつも、その場にいる人たち全員が楽しくてハッピーでいられるようにと、みんなに平等に光る機会が与えられるようにと、すごく気を配っている。そういう気配りに忙しくて、自分のことをすっかり忘れちゃったりするほどで。自分の主張を控えることで、ほかの人たちを立てるっていうか、そういう人間なの」とテイト。

 「でもそれを続けていると、自分をひどく抑圧する結果になって、感情をどんどん内に溜め込んでしまっているという自覚がある。だからこそ曲作りは、そういう感情を吐き出すセラピーとして私には欠かせないものなのになっている」と続けて語り、内に秘めている自分の感情を表に出す手段がソングライティングだと語っている。

2 「ラバーバンド(rubberband)」

「手首につけた輪ゴムを
あなたの唇を思うたびにパチンと弾く
手首につけた輪ゴムは
忘れようともがくたび切れてしまいそうになる」

 数ヶ月にわたって恋をした相手を、輪ゴムを弾く痛みで忘れようとする気持ちを表現した「ラバーバンド(rubberband)」。ミュージックビデオでは、ダンサーでもあるテイトがキレッキレの振り付けを披露しているのだけれど、シンガーとしてデビューするまでは他の人の楽曲で踊ってきたテイトにとって、自分の楽曲に合わせて踊るのは少し抵抗があったそう。

 「最初はものすごーくヘンテコな気分だった(笑)。『あー、これってちょっとどうなの?』みたいな感じで踊っていたんだよ。だって歌詞の内容はものすごくパーソナルで、究極的には日記みたいなものなのに、それに合わせていかにも楽しそうに踊らなくちゃいけないんだから!」とテイトはオフィシャルインタビューで振り返っている。

 今では自分の曲で踊ることにも慣れてきたようで、「でも今はすっかり慣れたし、楽しむようになったんじゃないかな。ふたつを融合させてパフォーマンスをすることの面白さに、目覚めた気がする」と続けている。

3. 「スロウワー(slower)」

「時間をかけてもいいよ
もっと年をとってからでも
でも、その時には別人になっていて
誰だか分からないかもよ」

 テイトが14歳の時に書いた、13歳で経験した片思いについて綴った「スロウワー(slower)」。この曲では、恋をしている相手に向けて、好きになるのに「時間をかけてもいいよ」と歌いながらも、“明日の自分がどうなっているかは分からないから、早めに自分を好きになったほうがいい”と、素直な気持ちを打ち明けている。

画像: 3. 「スロウワー(slower)」

 一方で、2017年までダンサーとして世界を目指していたテイトを取り巻く環境は、YouTubeに自作ソングをアップした瞬間から、“時間をかけることなく”ガラリと一変することとなった。「ひと言で表すと、すごく不思議な気分」と、テイトはこの急速な変化についてオフィシャルインタビューで振り返っている。

 「なぜって私は、元をただせばダンスからスタートして、6歳の時から活動していて、プロのダンサーを目指して全力でトレーニングを積んできた。そしてここにきてがらっと方向転換して、音楽業界に飛び込んだわけだけど、レーベルの人たちはみんな『ダンサー業も続けるべき』という意見で(笑)。今もまさに両方続けることができているの。ふたつを両立させるのは私にとってすごくエキサイティングなプロセスで、だから究極的に何が変わったのかと言えば、以前より遥かに忙しくなったってこと。全部やろうとするからしょうがないんだけど、とにかく忙しくなったよね(笑)」と続けた。

4. 「アー・ユー・オーケイ(r u ok)」

「どうしたの?
一人になりたいって言ったのはあなたでしょ
ようやく元気になれたのに
私の泣き顔を見る方がマシだなんて
どうしたの?」

 距離を置きたいと言ってきながら、忘れた頃にもう一度連絡してきた相手に向け、“大丈夫?”と問いかける、ちょっぴり攻撃的な「アー・ユー・オーケイ(r u ok)」。これまで、楽曲ではどちらかとうと後ろ向きな感情を歌ってきたテイトにとって、この挑発的なアプローチは新しいものになっているのだけれど、「この曲はとにかく、書いていて楽しかった。確かにすごく強気な曲だし、私には強気な面があることを(ファンの)みんなは知っている」とテイトはオフィシャルインタビューで話す。

 「だからといってイジワルな人間じゃないし、意図的に誰かを傷付けたりは絶対にしないんだけど(笑)、ここでは相手をおちょくっているの。私たちは時と場合によって、人間関係の主導権を握って、勇気を持って自分からはっきりと『ノー』という意思表示をしなくちゃいけないと思うから」と続け、この曲では、時には自分の意思をハッキリと主張することの必要性を訴えたかったと説明した。

5. 「ユー・ブローク・ミー・ファースト( you broke me first)」

「今さらヨリを戻したいだなんて
教えて、どうしてそんな気になったの?
二人で過ごした時間が懐かしいんでしょうけど
どんなに辛かろうが どうでもいい
あなたが先に私を傷つけたんだから」

 テイトを一躍スターダムに押し上げた「ユー・ブローク・ミー・ファースト( you broke me first)」。自分を傷つけたにもかかわらず、ヨリを戻したいと迫ってくる恋人に「ノー」を突きつけるという歌詞を歌ったこの曲は、2020年4月にリリースした直後にTikTokでバイラルに。現在、全世界でおよそ7,000万回再生を記録しているほか、テイトにとって、初めて米Billboardの全米シングルチャートのTop20にランクインした楽曲にもなった。

画像: 5. 「ユー・ブローク・ミー・ファースト( you broke me first)」

 とはいえ、テイト自身、「ユー・ブローク・ミー・ファースト」を書き上げた当時、この楽曲が自身の運命を変えるような特別な楽曲に仕上がったとは思っていなかったという。「全然そういう(特別な)感じじゃなかった。あの曲のセッションはものすごくスピーディーに進んで、『めっちゃ速かったね。お疲れさま!』みたいな感じでさらっと終わったの。特にほかのセッションと変わったところはなかったし」とテイトはオフィシャルインタビューでソングライティングのセッションについて振り返っている。

 「なのに、それから1カ月後に完成した曲を聴かされて、プロデューサーがあんな美しい作品に仕上げてくれていたの。それで、じゃあリリースして様子を見ましょうかっていう話になったんだけど、そうしたらあんな大反響を得た。だから本当にクールだった」

6. 「ウィッシュ・アイ・ラヴド・ユー・イン・ザ・90s(wish i loved you in the 90s)」

「傷つくこともなかったはず
90年代にあなたを好きになっていたら
人生がぼんやりとしていなかった時代」

 2003年生まれのテイトにとって、1990年代は経験したことのない時代。「そもそも私の両親が、子どもの頃からいつも90年代の話をしていた。90年代に青春時代を過ごして大人になることとか、90年代の恋愛事情とか、色んな体験談を聞かせてくれたせいで、私は長年90年代に憧れを抱いていた」とテイトはオフィシャルインタビューで明かしている。

 “90年代に出会ったいたら、あなたうまくいっていたかも”という気持ちが歌われる 「ウィッシュ・アイ・ラヴド・ユー・イン・ザ・90s」は、テイトがいかに自分たちの世代を客観視できているかを象徴する楽曲になっていると言える。

 「ケータイを持っていなくて、SNSも存在しなかった時代に恋愛をするには、今よりずっとたくさんの労力が必要だっただろうし、自分が交際しているひとりの人間を時間をかけてじっくり知っていくという、昔ながらのプロセスを踏まなくちゃならなかった。今みたいに簡単にコミュニケーションを取ることはできなかったわけだから」とテイトは2021年までのおよそ30年間でもたらされた変化について語る。「だって考えてもみてよ、今なら一度に70人くらいの人にメッセージを送れてしまう。そのせいで、人間関係を築くという行為の意味合いが薄れちゃった気がする。それって悲しいことだと思う」

画像1: 6. 「ウィッシュ・アイ・ラヴド・ユー・イン・ザ・90s(wish i loved you in the 90s)」

 デビュー直後に新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われ、まだ思うように直接オーディエンスの前でパフォーマンスをする機会が実現していないテイト。そんなテイトに、“もし自分についての紹介記事を書くとしたら、どんなタイトルになると思うか”と訊いてみると、次のように返ってきた。「『ダンサー兼シンガーがベッドルームで曲を書く』とか? 分かんない。それとも、『家にこもってクリエイトする』かな?」

 ダンサーも、シンガーも、オーディエンスに囲まれたステージの上でパフォーマンスしてこそ、その本領が発揮される職業。テイトは、これまで目にしてきた自身についての印象的な記事の1つについて、「『テイト・マクレーがパンデミックの最中に大ブレイク』みたいなヤツがあって(笑)、それが一番クールだと思った見出しのひとつ。めちゃくちゃクールだよね。だってそんなの前代未聞でしょ?意味不明だし(笑)」と振り返る。

 オフィシャルインタビューのなかで、「このあと1~2カ月の間にはアルバムに向けて曲作りに着手する予定で、すごく楽しみにしてる」と、テイトは間もなくファーストアルバムの制作にも取り掛かる予定だとも明かしている。ベッドルームで誕生し、同世代のファンの心を掴んでいる楽曲の数々が、ステージの上でテイトのキレッキレのダンスと、ハスキーで唯一無二の歌声とミックスしてパフォーマンスされた時、果たしてどんな化学反応が起きるのだろう? デビューアルバムの完成を待ちつつ、日本でテイトのパフォーマンスが観られる日を楽しみにしていよう。

 テイトは、日本のファンに向けて次のようにメッセージを寄せている。

「まずはみんなにアイ・ラヴ・ユーって伝えたい。そして、いつかそっちに行ってみんなと会いたい。日本に行ってパフォーマンスを行なうことは、本当にずっと前からの私の夢なの。だから実現することを願っているし、いつも応援してくれてありがとう!」

画像2: 6. 「ウィッシュ・アイ・ラヴド・ユー・イン・ザ・90s(wish i loved you in the 90s)」

Tate McRae/テイト・マクレー
『トゥー・ヤング・トゥー・ビー・サッド|TOO YOUNG TO BE SAD』
再生・購入はこちらから。

(フロントロウ編集部)

Photo:ゲッティイメージズ,@tatemcrae/Instagram

This article is a sponsored article by
''.