ハーヴェイ・ワインスタインの数十年にわたる犯行
2017年にハリウッドを震撼させた、大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインに関する過去30年にわたる数えきれないほどの性暴力告発。これをきっかけに、多くの女性たちが団結して声をあげる「MeToo運動」が発生。ハーヴェイは2020年3月に、ニューヨーク州裁判所で禁固23年の実刑判決を受けた。またこれとは別に、カリフォルニア州ロサンゼルスの裁判所でも罪に問われている。
当然ながら、ハーヴェイは完全犯罪のようにすべての性暴力を隠れて行なってきたわけではなく、ハーヴェイの行為は多くの関係者に広く知られていたことだった。ハーヴェイの犯行そのものも問題だが、数えきれない人々が見て見ぬふりをしていたという事実は、社会における女性に対する性暴力が軽視されたり、“よくあること”とされていたりする問題を浮き彫りにした。
クエンティン・タランティーノ、行動を起こさなかったことを後悔
映画『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』などで知られるクエンティン・タランティーノ監督は、ハーヴェイが告発された時から、彼の行なっていたことを知っていたと認めた。そして、先日出演した米ポッドキャスト『The Joe Rogan Experience』のなかでもふたたび、ハーヴェイの行動は「みんなが知っていた」と話し、ハーヴェイを「腐った父親のよう」と表現。続けて、自分が何も行動を起こさなかったことに後悔を見せた。
「僕がもっと何かをできていたら。あの男と話しをしていたら。彼を座らせ、話しづらい会話をしていたら。レイプなどについて知らなかったが、彼が…、分かるだろう。でも僕は、上司の社内セクハラとみなしていた。彼は求められていないのに言い寄っていたという風に、僕はこの件を見ていた。彼と話すべきだった。彼を座らせ、『ハーヴェイ。君はこれはできない。すべてを台無しにするぞ』と言うべきだった。彼とそれについて話したことがある人はいないと思う。そして問題なのは、彼の周囲にいた人は全員がそれについて知っていたということ。多分、レイプについて知らなかったかもしれない。しかし、そういったことについて聞いたことはあった」
男性が自分自身の行動を見返し、反省し、それを公に発信することはとても意味がある。
一方でタランティーノ監督は「すべてを台無しにするぞ」と伝えるべきだったと話しており、ハーヴェイの性暴力の被害者でなく、ハーヴェイの身を案じている。また、レイプでなく社内セクハラだと思っていたという点も、社内セクハラも性暴力であるにも関わらず、よくあることだとみなしている。それらは批判されるべき点であり、性暴力において被害者の身が案じられることが少ない事実への根深い問題を感じさせる。
2017年にMeToo運動が起こってから、4年が経つ。社会における女性への性暴力は依然として多い。女性の性被害は“女性の問題“とされることが多いが、加害者の多くは男性であるため、“男性の問題“でもある。そして、社会は女性と男性によって作られている。この問題に対し、女性だけでなく男性も取り組むことが不可欠となっている。
(フロントロウ編集部)