アメリカでステルシングに対する法整備
アメリカのカリフォルニア州で、「ステルシング」を違法にするための法案が可決され、ギャビン・ニューサム州知事が署名するだけとなっている。
この法案のために活動してきたクリスティーナ・ガルシア下院議員は、プレスリリースのなかで、「ステルシングを擁護し、推奨し、パートナーの同意なしにコンドームを外す方法をアドバイスするオンライン上のコミュニティがあるにもかかわらず、法律において、これが犯罪だと明記するものがないことには吐き気がします」とコメントした。
この法案では、言葉の同意なしにコンドームを外すことを違法とする。
ステルシング(stealthing)とは?
性行為中に、相手の同意なしにコンドームを勝手に外して性行為を続けることを「ステルシング」と呼ぶ。その被害者には女性や同性愛者の男性などがおり、被害者は精神的苦痛に加え、妊娠や性感染症のリスクにさらされる。
豪ABC Australiaの取材を受けた女性は、10年ほど前にステルシングを受けた時のショックをいまだに覚えていると語った。
2018年にオーストラリアのモナシュ大学が発表した調査では、男性と性行為をした女性の3人に1人が、男性では5人に1人が、ステルシング被害を経験していると推定されている。
しかし、性暴力被害においては警察への通報のハードルが高く、届け出数が実際の被害よりも非常に少ないことは、各国で指摘されている。そして前述の調査の回答者のなかでも、ステルシングの被害で警察へ足を運んだのは、たったの1パーセントだった。
ステルシングは重大な犯罪、認識は広がりつつある
一方で、2020年には、フランスの男性外交官がステルシングを行なったとして、パリ検察が捜査をしていると報じられたことは記憶に新しい。オーストラリアでは2018年に、ある男性がステルシングによってレイプおよび性的暴行の罪に問われた。
RMIT大学で犯罪学と社会正義を教えるブリアナ・チェッサー博士は、すでにニュージーランドやスイス、スウェーデンでは、ステルシングが犯罪だと定義された事件もあると指摘する。
また、ステルシングに対する法整備は、セックスワーカーの権利を保護することに役立つ。米ESPLERは、カリフォルニア州の法案は、顧客に勝手にコンドームを外されたセックスワーカーが、顧客を訴えることができるようになるとし、法案を支持している。
2020年にイギリスのBBCとアメリカのHBOによって制作され、批評家から軒並み高い評価が湧き上がった性暴力被害を題材にしたドラマ『I May Destroy You(原題)』でも、ステルシングの問題は描かれ、社会問題であるステルシングという犯罪に一石を投じた。
被害者に多大な苦痛とリスクを与えるステルシング。日本を含む各国で、早急な法整備が求められる。