トニー賞が復活!ミュージカル界に活気が戻ってきた
米ミュージカル界の最高峰を決めるトニー賞が約2年ぶりに開催された。74回目の開催となる本祭典は、新型コロナウイルスの感染拡大のため、本来であれば2020年6月7日に開催される予定だったところを、約1年3ヶ月延期。米時間2021年9月26日の夜に、2019年から2020年の間のミュージカル作品の功績が祝われた。
アメリカのミュージカル界を代表するブロードウェイは、新型コロナウイルスの影響で2020年3月〜2021年9月頃の約1年半の間、閉鎖を強いられてきた。そんな苦境の末に開催された今回のトニー賞。会場には、トム・ヒドルストンやジェイク・ギレンホール、リン=マニュエル・ミランダなどのセレブも登場した。
ミュージカル部門は2001年に公開されたニコール・キッドマン&ユアン・マクレガー主演の同名映画に着想を得て2019年に上演された『ムーラン・ルージュ』が作品賞など10部門、演劇部門は1980年代のエイズ流行後にニューヨークで暮らす同性愛者たちの姿を描いた『ザ・インヘリタンス』が作品賞など4部門を受賞した。
ウイルス感染対策がとられながら行なわれた本アワードでは、観客はマスク着用やワクチン接種証明の提出を義務付けられ、一度にステージに上がれるのは2名のみという制約が設けられた。
注目の受賞者は…
演劇部門の主演女優賞を受賞したのは、90歳の俳優ロイス・スミス。1955年公開の映画『エデンの東』や1970年公開の『ファイブ・イージー・ピーセス』などに出演し、映画界の生き証人ともいえる彼女は、『ザ・インヘリタンス』で初めてトニー賞を受賞し、史上最年長のトニー賞保持者の座についた。
そしてミュージカル部門の主演男優賞は『ムーラン・ルージュ』のアーロン・トヴェイト。なんと、今回主演男優賞にノミネートされたのはアーロン1人のみだったため、そのまま受賞にこぎつけた。
演劇部門の主演女優賞に輝いたのは、ティナ・ターナーの人生をミュージカル化した話題作『Tina – The Tina Turner Musical』のエイドリアン・ウォーレン。彼女は同作でイギリスの演劇界の最高峰、ローレンス・オリヴィエ賞も受賞している実力派。歴史ドラマ『Women of the Movement』にも出演し、今後様々なメディアでの活躍も期待される。
ブラック&ホワイトにドレスアップして登場したローレン・パッテンは『Jagged Little Pill(ジャグド・リトル・ピル)』でミュージカル部門の助演女優賞を受賞。スピーチで彼女が演じたキャラクター、ジョーを取り巻くセクシュアリティに関する論争について触れ、「私は、私のキャラクターであるジョーについて、一緒に真剣に会話をしてくれたトランスやノンバイナリーの友人や同僚に感謝したいと思う」と語り、「私は、ブロードウェイで見るべき変化のための未来は、正直さと共感、そして私たちが共有する人間性への敬意に満ちた、この種の会話から生まれると信じている。そして、そこから生まれる反応が私たちの未来をどこへ導くのか、この国の演劇人としてとても楽しみにしている」と続けた。
『Jagged Little Pill(ジャグド・リトル・ピル)』は、シンガーのアラニス・モリセットの同名アルバム『ジャグド・リトル・ピル』をもとにしたミュージカル。アメリカの中流家庭に起きる出来事を通して鎮痛薬への依存症、人種差別やLGBTQ+への偏見、性的暴力やネットいじめなどを描いている。
今回のトニー賞はブロードウェイの再開後すぐの開催だったため、残念ながら今回受賞した作品は現在は上映されていない。しかし、このコロナ禍において長らく止まっていたブロードウェイが動き出し、多くの演劇関係者は喜びに沸いている。(フロントロウ編集部)