女性の権利は人権、ウィメンズ・マーチが開催
2017年より毎年数万人の人々が参加しているウィメンズ・マーチが、2021年は10月2日に開催された。
ここ数年、アメリカでは女性の中絶を違法とする法案を可決する州が増加しており、今年のウィメンズ・マーチでは女性の中絶の権利を認めるように呼びかけるメッセージが大半を占めることに。SNSでは「RallyForAbortionJustice(中絶の権利のためのラリー)」というハッシュタグが使われた。
また、テキサス州では9月より強姦や近親相姦による妊娠にも適用される、妊娠6週目以降の中絶を禁止する州法が施行された。テキサス州法は、中絶を求める女性や中絶を行なった医師、さらに当事者の家族や病院の関係者を、まったく関係のない“一般市民”が訴える権利「私的訴権」を認めていることも大きな問題となり、連邦最高裁に差し止めが求められていたが、請求は退けられる事態に。
これにより、法だけでなく、保守派の判事が多数を占める最高裁への批判が高まり、首都ワシントンD.C.のウィメンズ・マーチは最高裁判所へ向かうマーチとなった。
プラカードに書かれた様々な思い
そんな2021年のウィメンズ・マーチでは、Abort(中絶する/中止する)べきは法を決定した者のほうだとし、テキサス州知事の「グレッグ・アボットを中止しろ」、「最高裁を中止しろ」といったメッセージが目撃された。
また、アメリカでは、テキサス州で始まった中絶の権利をめぐるロー対ウェイド裁判において、最高裁が中絶の権利を認めたのが1973年。それから約50年の年月が経った今、多くの女性たちは、「私たちは戻らない」「私たちの世代は前のように戻りはしない」といった思いを表明している。
そんなウィメンズ・マーチのなかでも、とくに多くの参加者が掲げた言葉が、「My Body My Choice(私の体、私の選択)」「Bans Off My Body(私の体を規制するな)」というもの。これらは中絶禁止へ反対するスローガンの1つとなっており、今回も多くの女性たちが言葉を掲げた。
中絶へのアクセスを制限することは、基本的人権の1つであり、人が外部からの影響や強制を受けることなく、自分の身体に起こることを管理・決定する権利であるボディ・オートノミー(からだの自己決定権)を侵害している。
望まれない妊娠を無くすために子供を持つ準備が出来るまで男性にパイプカットを強制することはボディ・オートノミーを侵害する人権侵害であるように、女性が中絶を選ぶ権利を法律で妨害するのも人権侵害。
そして、女性の権利が保障されない問題が起こっている背景には、法整備に携わっている人物の多くが男性であることは、無視できない。
2019年にアラバマ州で中絶を禁止する法案が可決された時には、「Men shouldn't be making laws about women's bodies(女性の身体に関する法律を男が作るべきではない)」という言葉が拡散されたが、今回のウィメンズ・マーチでは、「もし男が妊娠するとしたら、中絶は即座に受けられる」「もし男が妊娠するとしたら、すべての中絶は無料になる」といったメッセージが発信された。
元プロレスラーであり、MCU俳優としても有名なデイヴ・バウティスタは、女性の権利は議論してから認められるべきようなものではなく、議論せずとも認められるべきものだとし、「Her Body Her Choice(彼女の体、彼女の選択)」と書かれたTシャツを着て、女性たちをサポートした。
There are very few things in this world that I’m not open to discussion about. This is one of them. If you disagree, I don’t give AF��♂️#HerBodyHerChoice #WomensRights pic.twitter.com/RcbcOmFnsZ
— Vaxxed AF! #TeamPfizer Poor Kid Chasing Dreams. (@DaveBautista) October 2, 2021
「女性を巻き込んだ戦争を終わらせろ」「女性の体は拳銃よりも規制されている」と書かれたプラカードを持つ人も。
Denton, TX had a really big turnout for a small town! #RallyForAbortionJustice pic.twitter.com/iUAV6t5c4S
— Suzy Solomon (@snow_lynx) October 2, 2021
また、中絶を禁止したからといって、女性たちが出産することを選んだり、子供を育てることを選んだりするとは限らない。過去に中絶が禁止されていた時代には、安全でない方法で中絶が行なわれていたり、女性が流産するように自ら体を痛めつけたりしてきた歴史がある。そのような背景もあり、「中絶はヘルスケアだ」とし、安全で必要であればアクセスしやすい中絶を求める声も多くのプラカードに記されていた。
そして、「選んでママになった」「選んで親になった」と書いた看板を掲げ、女性たちの選択の権利を守ろうとする母親たちの姿も多い。
中絶禁止が広まるなかで、過去に中絶をした経験があることを明かす決断をした著名人は多く、俳優のユマ・サーマンやミラ・ジョヴォヴィッチ、ジャミーラ・ジャミルなどが自身の経験を語っている。
アメリカのピュー研究所による調査では、アメリカの成人の59%、無宗教者の人の82%が、中絶はすべてのケース・もしくはほとんどのケースで合法であるべきだと答えたという。
それにもかかわらず、制限されてきている女性の権利。女性の権利は、つまり人権。アメリカのジョー・バイデン大統領は、テキサス州法は「憲法上の権利に明らかに違反する」とし、中絶の権利を「保護し、防衛する」としている。今後、状況が好転することが切に求められている。
(フロントロウ編集部)