映画『最後の決闘裁判』とは
リドリー・スコット監督の映画『最後の決闘裁判』のモデルになっているのは、14世紀に実際に行なわれたフランス最後の決闘裁判。フランス国王シャルル7世から国中の貴族、さらには数千人のパリ市民が観衆として参加したこの決闘裁判は、600年以上経った今でも歴史家たちの間では有名な事件。
『最後の決闘裁判』の決闘裁判の中心人物は、騎士のカルージュ(マット・デイモン)と、彼の旧友である従騎士ル・グリ(アダム・ドライバー)と、カルージュの妻マルグリット(ジョディ・カマー)。ある日マルグリットがル・グリに乱暴されると訴えるが、彼は無実を主張し、真実の行方はかルージュとル・グリが生死をかけて戦い勝った方が正しいと判断される決闘裁判に委ねられる。もしも夫が負ければ、マルグリットまでもが偽証の罪で火あぶりの刑となる裁判の行方は?
本作は一つの事象を登場人物それぞれの視点で描いた映画『羅生門』に影響を受けており、そのために、マット・デイモンとベン・アフレックが24年ぶりにタッグを組み、さらに女性視点を担当するためにニコール・ホロフセナーが共同脚本にとして参加。女性が今よりも声を上げることが難しかった時代に、裁判で闘うことを決断した勇気ある女性・マルグリットと、その夫である騎士・カルージュ、そして、疑いをかけられながら無実を主張したル・グリそれぞれの視点で物語を展開する、3部構成が採用されている。
リドリー・スコット監督が語る特別映像
3部構成で3人のメインキャストそれぞれの視点から同じ物語を描くという脚本に惹かれたというリドリー・スコット監督は、視覚的な映像表現に対する優れた才能を称賛される監督の筆頭格。複数のカメラを使用して360度全方向を撮影する手法で知られているため、ダイナミックな映像が撮れることに加え、俳優たちも一瞬も気を抜けない現場であることで有名。
『最後の決闘裁判』メイキング映像内では監督が、「監督として、すべてのシーンに意味を持たせる。優劣はない」と強いこだわりを語り、「ダイナミックさが肝心。馬が速く走る時も、落ちる時も、感情の変化も、予想外の展開でも…ダイナミックさを際立たせると静寂になる。静寂は強さだ」と、鬼気迫る映像を撮る極意を明かしている。本作でも、生々しくも鮮烈なアクションと、見落とすことのできない繊細な映像表現で、息遣いや息を呑む声、響き合う甲冑の音、緊迫感に包まれた空気そのものを感じとれる、リアリティある映像を作り上げた。
さらに映像内では、マットとアダムの決闘裁判のシーンでリドリー・スコット監督からマットに向けて「そこは憎しみを持つ瞬間だぞ」と演出を指示する貴重なシーンも映し出されている。
1386年、百年戦争さなかに実際に執り行なわれたフランス史上最後の決闘裁判を軸に、ある勇気ある女性の真実が語られる映画『最後の決闘裁判』は10月15日(金)より全国公開。(フロントロウ編集部)