ナイキ重役が過去の殺人を告白
ナイキ ジョーダンブランドのラリー・ミラー社長が、来年の初めに出版予定の著書『Jump: My Secret Journey From the Streets to the Boardroom(原題)』に先立って、16歳のときに殺人の罪で逮捕され服役していたことを米Sports Illustratedのインタビューで公表した。
今から約56年前の1965年、ギャングの一員だったミラー氏は、対立するギャングのメンバーで当時18歳だったエドワード・ホワイトを射殺した。被害者とミラー氏に面識はなかったが、殺された友人の報復として、道でたまたま最初に見かけた被害者を狙ったという。
「(犯罪歴を公表することは)私にとって本当に難しい決断でした。なぜなら、私は40年間、この事実から逃げ続けてきたからです。そのことを隠し、人々に知られないようにしようとしたのです」。こう切り出したミラー氏は、「(自分も仲間も)みんな酔っ払っていて、意識が朦朧としていました。自分が何をしたのかわからなくなってしまったのです。自分がやったことの重大さを理解するのに何年もかかりました」、「あのようなことが起こる正当な理由は何もなかったのです。それは私が最も苦しんでいることであり、毎日考えていることでもあります。『誰かにあんなことをしてしまった…。そんなことをする理由はなかった』。そのことが私を悩ませています」と続けた。
その後も何度か別の罪で逮捕され、30歳まで少年院や刑務所で過ごしたミラー氏は、収容されているあいだに猛勉強をして、出所とほぼ同時にテンプル大学で会計学の学位を取得。最初に面接を受けた会社で前科があることがバレて採用を取り消されたミラー氏は、そのときに自分の過去を封印することを誓った。
次に受けたキャンベルスープの応募書類に、「過去5年間に有罪判決を受けたことがあるか」とだけ書かれていたのを見て安心したと話すミラー氏は、そこからビジネスの才能を開花させ、ナイキ バスケットボールの副社長とジョーダンブランドの社長を経て、NBAのポートランド・トレイルブレイザーズに転職し、2012年にジョーダンブランドの社長に復帰した。
ちなみに、ミラー氏は、バスケットボール界のレジェンドであるマイケル・ジョーダンや、NBAの第5代コミッショナーのアダム・シルバー氏にもずっと過去の犯罪歴を秘密にしていたそうで、ほんの数ヵ月前にようやく打ち明けたという。
幸い両者ともミラー氏へのサポートを表明しており、ミラー氏と長い付き合いがあるナイキの最高責任者であるジョン・ドナホー氏も、「彼の物語は、人間の精神の回復力、忍耐力、そして強さの一例です。彼の経験が、人々やコミュニティを妨げている差別や偏見を取り除くことで、刑事司法改革についての健全な議論を生み出すことを願っています」と、Sports Illustratedにコメントを寄せていいる。(フロントロウ編集部)