結婚と離婚を経験したアデル、新曲「イージー・オン・ミー」で記録更新
2017年のグラミー賞主要3部門を総なめにしたのを最後にひっそりと音楽シーンから姿を消していたシンガーのアデルが、11月19日に約6年ぶりのアルバム『30』をリリースすることを、世界中に突如として出現させたビルボード広告で発表。
アルバムを作り始めた年齢をタイトルにすることで知られるアデルの4枚目のアルバム『30』は、アデルが実業家のサイモン・コネッキとの結婚と離婚を経験した30歳の時に作り始めたアルバム。
このアルバムはアデルとサイモンの離婚で苦しんだという息子アンジェロに対するアンサーレコードでもあるそうで、アデルは、「このレコードを通して、彼が20代、30代になったときに、私が何者であるか、なぜ私が自分の幸せを追求するために彼の人生全体を解体することを自ら選んだのかを説明したいと思った。(離婚は)彼を不幸にさせたこともあった。それは私の心に傷として残り、一生癒えないかもしれない」と英Vogueで語った。
リードシングルとして発表されたバラード曲「イージー・オン・ミー」は、SpotifyとAmazon Musicで1日の歴代最高ストリーミング数を更新。ここ4年ほど表舞台から去ってはいたが、今でも音楽界のトップから去ってはいないことを1曲目から証明した。
お手柔らかに ベイビー
私はまだほんの子どもで
機会もなく
自分を取り巻く世界に気づけなかった
時間がなくて
何をするか選べなかったの
だからお手柔らかに
(「Easy On Me」より歌詞和訳抜粋)
ビヨンセやリアーナも注目! 記録の女王アデルはどこまで行くか?
アデルが『30』でどのような記録を作るかには注目が集まっている。それは、記録の女王とも呼べるアデルのこれまでの経歴を見れば納得がいく。
ビリー・アイリッシュが史上最年少でグラミー賞主要4部門を制覇したとして話題になったが、それよりも先に女性として初めて主要4部門制覇を達成したのはアデル。2008年のデビューアルバム『19』でグラミー賞新人賞を受賞したことにはじまり、2011年の2ndアルバム『21』は21世紀に最も売れたアルバムの座を未だにキープしており、2015年の3rdアルバム『25』はアメリカでもイギリスでも最速で売れたアルバムとなりと、アルバムごとに脅威的な記録を作っている。
音楽界でもアデルファンは多く、2013年のグラミー賞授賞式では先輩であるビヨンセやリアーナなどそうそうたるアーティストがアデルの席までわざわざ行って挨拶する姿が目撃され会場をざわつかせた。
アデルが「成功」しか知らない4つの理由
音楽界では成功しか知らないアデルは、なぜここまで人々を惹きつけるのか?
1. タイムレスな「アデルの音」がある
アーティストはアルバムごとにテーマやジャンルを変えて音楽を進化させていくものだが、アデルはまさにその逆。再生ボタンを押すと、ミニマルにプロデュースされた音をバックにあのソウルフルな歌声が響くことが期待できる。そしてファンもそれを求める。これは、音が完成されているからこそ出来ることで、ファンは極上の音楽体験のために毎回再生ボタンを押す。とくにツアーではアデルの別格ぶりが明確。ツアーでは巨額をかけて豪華なセットやダンサーを用意するものだが、アデルはマイク1本を持ってステージに現れて1時間強歌って満員の会場を満足させて帰っていく。
2.すべての年代に響く音とメッセージ
アデルは現代において、もっとも多世代にアピールできるアーティストと言っても過言ではない。その理由のまず1つめは、曲のメッセージ。“失恋ソングの女王”と呼ばれるほどアイコニックなハートブレイクソングで有名なアデルは、10代から高齢者まで多世代が共感できるテーマを歌い続けている。
そして2つめが音。ソウルをベースにしているアデルだが、キャリア初の全米1位を獲得したシングル「ローリング・イン・ザ・ディープ」は、ロック、R&B、ラテンを含む12の米Billboardチャートにランクインし、当時までの25年で最もクロスオーバーした楽曲と認定された。つまりアデルには、多様なジャンルのリスナーにリーチできる音があるということ。
3. 上質な音楽と爽快な性格のギャップ
ファンに支持されるアデルの性格を表すエピソードがある。
アデルは『21』をリリースした2011年に、由緒あるロイヤル・アルバート・ホールでパフォーマンス。1曲目で「ホームタウン・グローリー」をしっとりと歌い上げると、感動のあまり泣き出す観客も。すると歌い終えたアデルが発した第一声が、「ロイヤル・アルバート・ファッキン・ホール!!!」というFワードを使った絶叫。「ここはそんな言葉遣いに適した場所じゃないのは分かってる。気をつけるよう頑張るよ。由緒ある場所なのは分かってるから。マジでワクワクしちゃっててさ、ハッハッハッハッ!」と豪快に笑いながら続けた。
このエピソードからも分かるとおり、アデルは楽曲と同じようにどんな時もアデル。いつも正直で率直で、だからこそ人の心に響き支持される。このキャラクターは、2017年のグラミー賞で『25』が主要3部門を制覇したときにも話題になった。
最優秀アルバム賞を受賞したアデルは、黒人コミュニティに大きな影響を与えたアルバム『レモネード』でノミネートされていたビヨンセが受賞するべきだったと訴え、ビヨンセの偉大さを泣きながら檀上で語り、プレスルームでも「ビヨンセが好きじゃない人は許せない。そういう人とは付き合えない」とバッサリ。歌うときでも話すときでもアデルの頭に“イメージを気にする”などの考えはなく、この正直さが多くの人に支持される彼女の強みになっている。
4. 手の届かない存在であるということ
2008年にデビューアルバム『19』をリリースしてから現在までの約13年間、基本的にアルバム発売時期以外は表舞台に出てこないスタイルを貫いているアデル。SNSもほぼ更新されず、パパラッチされることも少なく、情報過多な時代において彼女の露出の少なさは貴重。同じように情報が限られているビヨンセですらアルバム発売の間にブランド展開や広告出演をしているが、アデルはそれも一切なし。ファンにとってアデルとの繋がりは新しい音楽のみで、それが彼女の音楽や発言の価値をさらに押し上げている。
アルバム『30』は、「人生の最も大変な時期に私を支えてくれた友人」であり、「私は苦しみながらも自分の家と心を再建してきた。この作品はその物語を綴っている」とSNSで明かしたアデル。30代に突入したアデルの現在の真実が歌われるアルバム『30』は11月19日に発売される。
<作品情報>
アデル
アルバム「30」
<国内盤 >
発売日:2021年11月19日(金)
全形態:解説・歌詞・対訳付き
予約リンク
https://Adele.lnk.to/30ALJPFT
シングル「イージー・オン・ミー」
発売日:2021年10月15日(金)
再生・ダウンロード
https://Adele.lnk.to/EasyOnMeSGJPFT
Photos: Sony Music International、ゲッティイメージズ
(フロントロウ編集部)