ミュージカルアニメーション映画『アナ雪』
2013年に公開され、世界的メガヒットを記録したディズニーによる映画『アナと雪の女王』。アナとエルサという姉妹の愛の物語だが、自分を愛することの大切さを描く作品でもある。
とくに、エルサが歌う劇中歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は、それが歌われるシーンや歌詞から、批評家からも非常に高い評価を受けており、フェミニストやLGBTQ+コミュニティからもエンパワメントな楽曲として支持されている。
しかし「レット・イット・ゴー」の功績は、それだけではない。じつはこの曲がなかったら、『アナと雪の女王』は誕生していないとも言えるのだ。
「レット・イット・ゴー」の功績
本楽曲はクリステン・アンダーソン=ロペスとロバート・ロペスによって制作されたが、クリステンは制作を始める時に、「感情的なところから考えていった」と米The New York Timesに語っている。
そして出来上がった「レット・イット・ゴー」は、非常にポジティブな姿勢を持つものに仕上がった。しかしここで問題が発生。
じつは、当初はエルサは本作の“悪役”として描かれる予定で、この明るく強い音楽は悪役には合わない!
悪役としてのエルサは、キャラクターデザインのイラストも大幅に違ったうえ、アナの声を演じたクリステン・ベルとエルサ役のイディナ・メンゼルは、エルサが悪役という設定の脚本で収録も始めていた。
脚本もすでにあり、収録も始まっている。その時点から作品へ大幅な変更を加えるのは、かなりのリスクが伴う。しかし、公開された『アナと雪の女王』では、エルサは悪役として描かれていない。そう、つまり、制作陣は「レット・イット・ゴー」を聞いたあと、ストーリーを1から書き直した!
監督で脚本も担当したジェニファー・リーは、「初めてあの曲を聞いて、その数分後には、映画全体を書き直さなくてはいけないと分かっていました」と話している。
音楽に合わせて、出来上がっていた映画のストーリーを1から変える。制作陣にこの決定をさせた「レット・イット・ゴー」、そしてクリステンの才能には鳥肌が立つ。そして「レット・イット・ゴー」にインスパイアされ、新たな物語を構築した制作陣の判断もさすがだといえる。
ちなみに、エルサは悪役という設定の時には、オラフはエルサの手下だったそう。しかしストーリーの変更にともない、アナの仲間になったという。
(フロントロウ編集部)