30代で大ブレイクのヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世
20年ぶりに“仮想現実”が世界を襲う…。1999年に公開され、世界に衝撃を与えた『マトリックス』。2003年に2作目と3作目が公開され、今年2021年には、最新作となる『マトリックス レザレクションズ』が公開となる。
12月17日より劇場で見られる本作には、主演のキアヌ・リーブスといった3部作からのキャストがカムバック。一方で、次世代にバトンを渡したキャラクターもおり、ローレンス・フィッシュバーンが演じたモーフィアスは、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じる。
モーフィアスは人気の高いキャラクターだったため、ローレンスでなくなることに不安を感じるファンもいるが、一方で、そのバトンを受け取ったのがヤーヤであることで期待のまなざしを向けるファンも多い。
最近では、映画『キャンディマン』を全米で大ヒットさせたヤーヤという俳優は、一体どんな人?
名門大学出身のシティプランナーから俳優へ
1986年生まれで、今年35歳となったヤーヤは、じつは俳優以外の仕事に就いていたことがある。その職業は、シティプランナー。
アメリカの最難関大学の1つであるカリフォルニア大学バークレー校で建築を専攻したヤーヤは、卒業後に、サンフランシスコでシティプランナーとして仕事を得た。
しかし彼が大学を卒業したのは、2008年のこと。そう、リーマンショックが起こった年。その影響もあり、彼はリストラにあってしまう。しかも彼は、この前年の2007年に最愛の父親をがんで亡くしている。
しかし、バークレー校在学中から演劇のクラスも取っていたヤーヤは、シティプランナーとして働いていた時にも夜間の演劇クラスを履修していたそうで、これをきっかけに本気で演技を学ぶことに。彼はニューヨーク大学、ハーバード大学、イエール大学という超名門大学にすべて合格し、最終的にイエール大学を選んだ。
「当時は怖い時期だったけども、仕事を失ったことは自分にとって最高の出来事だった」と米W magazineのインタビューで話すヤーヤからは、暗い状況でも前向きに歩みを進める彼の性格が感じられる。
困難を自分の力に
そんな性格は、彼の幼少期の経験から培われたものなのかもしれない。
6人きょうだいの末っ子として生まれたヤーヤ。家族は引っ越しが多かったそうで、10代になるまでに彼が通った学校の数は、なんと13校! 生活拠点が変わることはアドベンチャーのように捉えていたという。
そんな彼は、イエール大学で学び始めた1年目に、困難にぶつかったそう。スティーブン・アドリー・ギアギスによる『The Motherfucker with the Hat(原題)』で彼が演じたキャラクターが理解できなかったため、そのキャラクターを分析するために一晩を明かしたという。その経験は、他の人の考えや生活などを理解し、共感するうえで、人として、俳優として、自分を変える経験になったと、米New York Timesで振り返っていた。
ヒット作に立て続けに出演
2016年にドラマ『ゲットダウン』に出演したヤーヤは、その後順調に、勢いよくキャリアを伸ばしてきた。2017年に映画『グレイテスト・ショーマン』でゼンデイヤが演じたアンの兄W・D・ウィーラーを演じ、2018年には映画『アクアマン』でアクアマンの宿敵デイビッド・ケイン/ブラックマンタ役に抜擢。
2019年はドラマ『ウォッチメン』や映画『アス』に出演し、2020年の映画『シカゴ7裁判』では、ブラックパンサー党を結成したボビー・シールを演じ、観客のなかに強烈な印象を残した。
そして、アメリカで2021年8月に公開された映画『キャンディマン』では主演に抜擢。本作は公開された週末に全米週末興行成績ランキング1位となり、メガホンを取った女性監督のニア・ダコスタの手腕とともに、ヤーヤの演技も評価された。
『マトリックス レザレクションズ』についての感想がさすが
作品や登場人物を深く理解し、演技で表現するヤーヤ。しかし彼の鋭い感性は、作品への感想にも表れる。『マトリックス レザレクションズ』について意見を求められた彼は、こう話した。
「ラナ(・ウォシャウスキー監督)が取り入れたテクノロジーや映画制作の方法、見たこともないカメラリグ。とても野心的な作品だ。世界がこれほどまでに歪んでいて、現実も歪んでいるような時代に『マトリックス4』を作ったのは、とても興味深いことだった。気を許せば、少しずつ(その歪みが)忍び寄ってくるかもしれない」
モーフィアスを演じた彼にこんなことを言われれば、『マトリックス レザレクションズ』を見ないわけにはいかない。
様々なジャンルの作品を通してメッセージを訴えるヤーヤの演技からは、これからも目が離せない。
(フロントロウ編集部)