※この記事には、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれます。
“3人”が揃った『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
トム・ホランドによる『スパイダーマン』3部作の最終章となる『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、出演者の圧倒的豪華さと、彼らを使った胸アツなストーリーラインでファンを大熱狂の渦に巻き込んだ。
トビー・マグワイアによる『スパイダーマン』シリーズ、アンドリュー・ガーフィールドによる『スパイダーマン』シリーズから、ヴィランだけでなく、トビーとアンドリューも登場したことで歴代スパイダーマンの3名が揃って画面に姿を現し、しかもそれがスパイダーマンスーツを着た姿ともなれば、気分の高まりから涙が出てしまったファンもいるだろう。
そんなスパイダーマンたちの共演だが、ある意味“同じキャラクター”が揃ったことで、その差異を明確にするためには実際の衣装の違いだけでなく、VFXチームの努力が大きな役割を担った。
過去のスパイダーマンたちを現代に呼び戻す
ビジュアルエフェクトのスタジオであり、これまでの『スパイダーマン』シリーズの制作にも携わってきたImageworksのクリス・ワーグナーは、豪Before and Aftersのインタビューで、「この映画で初めてスパイダーマンとしてのトム・ホランドを見る子供たちもいれば、最初にトビー・マグワイアのスパイダーマンをスクリーンで見た、あるいは数年後にアンドリュー・ガーフィールドが演じる別の作品を見たという年上のコミックファンたちもいるはずです。私たちにとって、このフランチャイズの正義を通すことは非常に重要なことでした」と話す。
過去のスパイダーマンもデザインしてきたImageworksには、それに関する資料も多かったが、当時から比べればビジュアルエフェクトの技術の進化は著しい。そのため、新しいスパイダーマンたちを再構築しなければならなかったそう。
そしてもちろん、俳優自身の変化もあった。クリスは、「新たなスパイダーマンたちを構築する上で重要な判断となったのが、俳優の年齢による体型の変化です。幸いなことに、スタジオにはトビーとアンドリューのオリジナルのスーツがどのようなものかという詳細な写真記録が残されており、それをもとに製作を進めました」と話した。
トム・ホランドの衣装にも課題はあった
一方で、トムのスパイダーマンを表現するためにも、新たな課題はあったそう。トムのスパイダーマンは本作で、“ハイブリッド・スパイダーマンスーツ”と呼ばれるスーツを着ることになったそうで、そのためにデジタル技術による置き換えが行なわれたという。
「私たちは、カメラの前でトムが着ていた実際のスーツを、新たにデザインされたデジタルスーツに置き換えたのです。新しいデジタルスーツは、メタリックなインレイとオーバーレイによって織られた生地で構成されています。
すべてのショットでトムのスーツを取り替えるのは骨の折れる作業で、最終的な見た目が厳しい審査に耐えられるように、多くの部署を巻き込み、さまざまな社内技術が駆使されました。この新しいデジタルなハイブリッド・スパイダーマンスーツが、トム・ホランドの微妙な筋肉の動きや痙攣、そして俳優たちの肉体的な相互作用を正確に模倣することは、制作陣にとって非常に重要なことでした」
完成映像はもちろん、実際に俳優たちがカメラの前で演技をした映像をベースにしている。それをデジタルに置き換えることについて、クリスは、「俳優を撮影する時には、こうした微妙なディテールはすべてカメラに収められますが、俳優の体をデジタルに置き換えると、すべての微妙なニュアンスを複製して撮影に反映させる必要があるのです」と説明した。
3人のスパイダーマンの違いを明確にするには?
クリスによると、それぞれのスパイダーマンのデザインにも課題はあったが、3人が揃うことで発生した課題もあったという。
観客が、3人のスパイダーマンはそれぞれ誰なのかを視覚的に理解できることは重要だが、一方でスパイダーマンスーツが似ているのは仕方がない。そして、そのシーンが夜であれば、さらに見分けがつきづらくなってしまう。
しかしクリスによると、ライティングを始めたことで解決策が見えたそうで、「ライティングを始めると、何をすべきかは一目瞭然でした。私たちは、それぞれのスパイダーマンたちの身体的な個性、もしくは個々のスパイダー・スタイル、つまり彼らがどう揺れるか、どう糸を出すか、象徴的なポーズをとったときの身体的なプロポーション、といったことを前面に押し出すことに力を注ぎました」と振り返った。
スパイダーマンたちのスタイルの見直しにはアニメーションチームの協力があったそうで、本作がどれだけ多くのチーム、そしてスキルによって完成したのかが理解できる。
その奥深さこそが、『スパイダーマン』シリーズやマーベル作品などが多くの人を楽しませている理由の1つだろう。
(フロントロウ編集部)