ジョー・ローガンへの対応を受けてアーティストたちがスポティファイを離脱
スポティファイで2021年に“世界で最も人気があるポッドキャスト”となり、スポティファイが約110億円(1億ドル)の独占契約を締結したとされるジョー・ローガンが司会を務める大人気ポッドキャスト『The Joe Rogan Experience(原題)』をめぐり、同番組が新型コロナウイルスのワクチンに関する誤った情報を拡散しているとして問題視されている。
大御所アーティストであるニール・ヤングは先日、これに抗議し、「どうか今日すぐに行動を起こし、その(今後の計画についての)スケジュールを私に共有してください」と、スポティファイに対してすぐに行動を起こすよう請願。「私が今日、スポティファイに伝えたいのは、彼らのプラットフォームから私の音楽をすべて取り下げてほしいということです。彼らが残せるのは、(ジョー・)ローガンかヤングです。両方ではありません」として、結果的に、現在はジョーのポッドキャストはそのまま配信されている一方で、ニールの音源はほとんどすべてがスポティファイから取り下げられている。
ニールの行動は大きな反響を呼ぶこととなり、ニールに賛同して、どちらもロックの殿堂入りを果たしている大物ミュージシャンであるジョニ・ミッチェルやニルス・ロフグレンもスポティファイから音源を取り下げることを表明した。
スポティファイCEOのダニエル・エク氏がコメント
そうしたなか、今回、スポティファイでCEOを務めるダニエル・エク氏がこの件について正式にコメントを発表。スポティファイの公式ホームページに掲載した声明で、「ほぼすべての議題において、正反対の意見を見つけることができます。個人的には、スポティファイにアップされている個人や見解について、私が力強く反対するものも多くあります」と、自分自身が反対している意見も含め、スポティファイとしてはあらゆる意見をリスナーに届けることが大切だと強調した。
ただ、人の“意見”と科学的なデータを基にした“事実”は異なる。意見はそれぞれ自由に持つ権利があるが、それぞれが自由に科学的な事実を決めることはできない。事実に沿わない発言はただの嘘/誤情報となり、今回の問題はそこにあるため、スポティファイのCEOの発言に対しては、“問題の本質を理解していない”とさらなる反発があがっている。
そしてエク氏は、今回問題視されているような新型コロナウイルスに関連した情報については、「Covid-19についての議論を含むすべてのエピソードに、コンテンツについての勧告を記載できるよう取り組んでいます」とコメント。「世界中の科学者や医師、学者、公衆衛生当局によって共有された、データに基づいた最新情報を提供」し、「新たな取り組みとして、今後、世界中の国々の誤情報と闘っていく」とした。
ジョー・ローガンも動画でコメントを発表
また、問題視されているポッドキャストで司会を務めるジョー・ローガン本人も、SNSにアップした動画を通じてコメントを発表。
ジョーは動画の中で、「私は誤った情報を促進するつもりもなければ、議論を呼ぼうとしているつもりもありません」とした上で、「私はこのポッドキャストにおいて、人々と話をすること以外のことをしようとしたことはありません」と強調。
「私は必ずしもいつも正しくできるわけではありません」と前置きしつつ、「より良い視点を見つけられるよう、どちらかというと議論を呼ぶような視点と、他の方々の視点のバランスを取れるように最善を尽くします」と語り、様々な意見をバランスよく提示していくことが重要だと語ったエク氏と同様、今後はバランスに注意しながら様々な情報を提供するようにしていくとした。
加えて、ジョーはニールやジョニらが自身のポッドキャストがきっかけでスポティファイから離脱したことについても言及。「彼らがそのように感じてしまったことは非常に残念に思います。もちろん、そんなことは望んでいないので。私はニール・ヤングのファンです。いつだってニール・ヤングのファンでしたから」として、ニールらが音源を引き下げたことを残念に思うと語った。
ニールとジョニに加え、先日、スポティファイと契約を結んでいるヘンリー王子とメーガン妃からも懸念を表明するコメントがあったこの問題。前述のとおり、スポティファイCEOとジョーの声明には、 “事実”と“意見”を取り違えているという批判が多くあがっているが、声明が騒動の鎮火につながるかどうかは今後を見守ってみないとわからない。(フロントロウ編集部)