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1740年に生まれて以来、多くのファンに愛されてきた『美女と野獣』。実は、原作となった小説には悲しい裏話があった。(フロントロウ編集部)

実写やアニメで大ヒット!『美女と野獣』

 『美女と野獣』は、アニメや映画、ドラマや舞台といった様々な派生作品で長年親しまれている作品。2017年には、1991年に制作された大ヒットディズニーアニメの映画版が公開され、エマ・ワトソンを主演に迎えて大ヒットした。

画像: 実写やアニメで大ヒット!『美女と野獣』

 原作は、1740年にフランスの女性作家ガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴによって書かれた同名小説。その後1756年に、同じくフランスの作家ジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモンによってガブリエル版の小説の短縮版が書かれ大ブレイクし、現在でも知られるようなストーリーになった。

 そんな『美女と野獣』のオリジナルバージョンには、現在のバージョンでは見られない悲しい裏話があったことをご存じだろうか。

『美女と野獣』オリジナル版の「野獣」

 現在知られている『美女と野獣』は、美しく聡明な町娘のベルが野獣と出会い、紆余曲折を経ながらも最終的に思いが通じ合うと、野獣の呪いが解けて王子の姿に戻るという王道のロマンス。この作品には、他者を外見ではなく内面を見て評価すべきであるという教訓が込められている。

 しかし、1740年に書かれた『美女と野獣』はもっと深い社会問題への追及がある内容だった。

画像: 『美女と野獣』オリジナル版の「野獣」

 1740年当時のフランスでは女性たちの権利は法的に守られていなかった。結婚は親が決めたお見合い結婚が一般的で、女性に財産を管理する権利はなく、13~15歳の幼い少女たちは数十歳年上の男性と結婚させられていた。そして妻としての役割を果たせなかった少女は、精神病院に収監される危険もあったという。

 そして当時の『美女と野獣』は、少女たちが意思に反して結婚させられるそんな実状に対する批判を込めて書かれたものだった。「野獣」は、自分が結婚する相手は自分を虐待するか? ひどい存在か? といった、少女たちの将来の結婚に対する不安を表しているといわれている。

強制結婚への批判と男性読者へのメッセージ

 本編の中で野獣に礼儀作法や優しさを教えるのはベルの役割だった。このことから、オリジナルバージョンの作者であるガブリエルは男性読者に対し、「優しく、我慢強く、暴力的にならないで欲しい」というメッセージを伝えたかったのではないかと言われている。

画像: 強制結婚への批判と男性読者へのメッセージ

 ガブリエルが少女の見合い結婚に批判的であったことを裏付ける主な要素は、物語内で「愛と尊敬」を強調していること。ガブリエルは、人々には愛をもって結婚する自由があるべきで、女性も自分の運命を選ぶことができるという考えを提唱していたのだ。

 ちなみに本作が書かれた後、1791年にフランスの劇作家でフェミニズム運動の先駆けとなったオリンプ・ド・グージュは、「フランス人権宣言」の中には「女性」は含まれていないと訴え『女権宣言』を書き、“より平等な結婚制度を提案した”ためにギロチンにかけられ、死刑に処された。平等な結婚制度を求めただけで極刑になってしまうという時代の中で書かれた『美女と野獣』には、様々な思惑が隠されていたのだった。(フロントロウ編集部)

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