ジェンダー・バイアスとは?
「ジェンダー・バイアス(ジェンダーに対する偏見)」は、“男は外で仕事、女は家で家事”、“男の子だから車が好き、女の子なのに活発”といったジェンダーに対する固定観念・偏った考えのこと。ちなみにジェンダーとは、生物学上の性(SEX)に対して、“男性らしさ・女性らしさ”のような社会的・文化的に作り上げられた性別のこと。
バイアスの中には、上記のような意識的(コンシャス)なものと、無意識に蓄積されていくアンコンシャス・バイアスがあり、とくに後者はすべての人の中に存在していると言われている。ジェンダー・バイアスは女性・男性・その他すべての人にとってネガティブな影響を与えると言われているため、全員がバイアスの存在を認めて、バイアスに屈しないためのアクションを取ることが大事。
ジェンダー・バイアスへの理解が深まるおすすめ書籍6選
今回フロントロウ編集部では、エディターたちが読んでいる「ジェンダー・バイアス」への理解が深まる書籍を厳選してご紹介。
『問題だらけの女性たち』
ジャッキー・フレミング(著)、松田青子(翻訳)
ユーモアと皮肉炸裂で描くイギリス発のジェンダー絵本。19世紀ヴィクトリア朝時代にまことしやかに語られていた、「女の脳は小さい」、「女が考えると生殖器がダメになる」といった驚きの固定概念を垣間見ることができる。さらに、ルソーやショーペンハウアーといった知識人による女性への強烈な偏見も掲載。長年積み上げられてきた男尊女卑の実態だが、それを「過去のもの」として笑えない現実が現代社会にも確実に存在している。
『ジェンダーと脳―性別を超える脳の多様性』
ダフナ・ジョエル(著/文)、ルバ・ヴィハンスキ(著/文)、鍛原 多惠子(翻訳)
よく“女性は感情的、男性は理性的”などと言われているが、じつは脳のつくり自体に性別はなく、どちらの性にも女性的・男性的な部分が両方あり、それがまるでモザイクのようになっていると説明する本書。感情的、または理性的なのは「性差」ではなく「個体差」という、従来の性別とジェンダーに対する固定観念を科学的な観点から解説している。
『女パンクの逆襲──フェミニスト音楽史』
ヴィヴィエン・ゴールドマン(著)、野中モモ(訳)
「アイデンティティ」、「金」、「愛」、「プロテスト」という4つのテーマに分けながら、パンクが女性にとっていかに解放的な芸術形態であるのかを探り、歴史をひとつひとつ解き明かしていく一冊。人種やジェンダーの問題にも切り込んでおり、音楽に変革をもたらしてきた女性たちのアツい歴史を知ることができる。
『差別はたいてい悪意のない人がする』
キム・ジヘ(著)、尹怡景(翻訳)
ジェンダー・バイアスをはじめ、様々な「差別」は日常に存在しており、「いい人・悪い人」に限らず差別をしてしまう。最近では、「細かいことで差別だという人がいて疲れる」や、「差別だという人がむしろ差別している」といった声も高まってきているが、本著ではそんな「バイアス」に関する根本的な問題に気づきを与えてくれる。
『科学の女性差別とたたかう 脳科学から人類の進化史まで』
アンジェラ・サイニー(著)、東郷えりか(翻訳)
研究者に男性が多い時点で、すでに研究結果に様々なジェンダー・バイアスがかかっているのではないかと指摘する、鋭い目線から書かれた一冊。「“女脳”は論理的ではなく感情的」「子育ては母親の仕事」「人類の繁栄は男のおかげ」という、旧来の「科学」がもたらしてきた偏見に真っ向から挑む。
※ちなみにScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・もの作り)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)からなる「STEAM」は、社会的・文化的なジェンダー・バイアスのせいで世界的に女性の進出が遅れていると言われている分野。なかでも日本は世界に大きく遅れを取っていると言われており、高等教育におけるSTEM分野での女性の入学者割合を調べた世界36か国での調査では、日本は「自然科学・数学・統計学」で27%と世界最低(世界平均52%)、「工学・製造・建築」で16%と世界最低(世界平均26%)。
『For theLove of Men: From Toxic to a More Mindful Masculinity(フォー・ザ・ラブ・オブ・メン:フロム・トキシック・トゥ・ア・モア・マインドフル・マスキュリニティ)』
リズ・プランク(著)
女性目線で書かれたトキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)に関する日本未上陸の洋書。タイトルを訳すと、『男性の愛のために:有毒なものより、心のこもった男らしさへ』という意味。女性に対する不平等や不都合だけに目を向けるのではなく、男性たちが知らず知らずのうちに社会から受けているジェンダー・バイアスによるプレッシャーやストレスについても知ろうと訴えている。俳優のブレイク・ライブリーも絶賛。
(フロントロウ編集部)