セレブやインフルエンサーなど、おしゃれに敏感な人こそもうシフトしている「エシカルファッション」。よりサステナブル&ギルトフリーにおしゃれを楽しむ方法を特集! (フロントロウ編集部)

エシカルファッションとは?

 トレンドのアイテムが安い値段で手軽に手に入ることから、世界中が大不況に陥った2008年のリーマンショック以降に急成長を遂げたファストファッション。

 しかし、薄利多売のその裏で、地球環境への悪影響や生産ラインで働く人々の労働条件の劣悪さなどが露呈し、近年ではデメリットが問題視されるように。

 非営利団体テキスタイル・エクスチェンジのレポートによると、地球上の二酸化炭素排出量の約10%、ごみ埋め立て地の占拠率約5%、水質汚染の20%がファッション界に起因しているという。

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 そんななか普及しているのが、ファストファッションとは真逆の「流行に左右されず、良質なものを長く大切に着続ける」というスローファッションの考え方。

さらに、そこからもう一歩踏み込んで、環境はもちろん人権や社会の在り方にも配慮した「エシカルファッション」が注目を集めるようになった。

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 小学生からSDGsについて学ぶようになった昨今、「サステナブル(Sustainable)」と並んで使われることが多い「エシカル(Ethical)」という言葉。

 この2つの言葉は混同されがちだけど、少しだけ意味が違う。「持続可能な」という意味を持ち、おもに地球環境の未来を見据えた配慮を表現する時に使われる「サステナブル」に対し、「倫理的な」「道徳的な」という意味を持つ「エシカル」は、環境だけでなく、人権の保護や社会への貢献、動物愛護など、“地球上のすべての存在がより良くあること”を目指す活動に対して包括的に使われる。

 「エシカルファッション」とは、つまり、環境問題のみではなく、労働問題や社会問題にも配慮したうえで、素材選びから生産・販売、消費までを行なう“地球と人に優しい”ファッションのサイクルのこと。


ファッショニスタはもう「エシカルファッション」にシフトしている

 「流行り廃りが早く、着用サイクルが短い」「消費者はシーズンが終わったら廃棄(大量生産・大量廃棄)」、「環境や生産者、消費者の健康に害を及ぼす恐れがある化学繊維が使用されていることも」といった懸念材料が多いファストファッションに別れを告げて、すでにエシカルファッションに移行しているセレブやインフルエンサーはたくさん。

 エシカルファッションを取り入れるセレブの代表格として知られる俳優のエマ・ワトソンは、リサイクル素材や洋服を生産する過程で余った生地を使ったドレスでレッドカーペットに登場したり、フェアトレードを推進しているブランドとコラボしたことも。

画像: 2016年のメットガラにはペットボトルをリサイクルした素材でできたカルバン・クライン(Calvin Klein)のドレスで出席。

2016年のメットガラにはペットボトルをリサイクルした素材でできたカルバン・クライン(Calvin Klein)のドレスで出席。

 発展途上国の子供たちがファストファッション・ブランドの現地工場で低賃金・不当な労働条件で酷使されていることが明るみに出た2014年には、人道団体フリーダム・フォー・オールが発足した「ホワイトシャツ・プロジェクト」と呼ばれるチャリティに賛同。エシカルブランドが発表した白シャツを着用してイベントに出席し、キャンペーンの認知度アップを後押しした。

 流行に左右されないミニマルな着こなしが評判の俳優のアンジェリーナ・ジョリーは、プライベートでもレッドカーペットでも、生産過程で動物が傷つけられていないか、人道的に問題のない製法で作られたアイテムかどうかを確認したうえで洋服やバッグ、靴、ジュエリーなどを選んでいることで知られる。近年では、子供たちがアンジェリーナが過去にアワードなどで着用した“お古”のドレスをリメイクしたものを着て映画のプレミアに登場したことでも話題になった。

画像1: ファッショニスタはもう「エシカルファッション」にシフトしている
画像2: ファッショニスタはもう「エシカルファッション」にシフトしている

 型にはまらない自由なファッションセンスが光る俳優のティモシー・シャラメもエシカルファッション・アイコンの1人。毛皮フリーのパイオニア的ブランドであるステラ・マッカートニー(Stella McCartney)や、廃棄された漁網や廃プラスチックをリサイクルした再生ナイロンのプラダ(Prada)のスーツをばっちりと着こなしてエシカルファッションの魅力を体現している。

画像: プラダの再生ナイロン製スーツを着てアカデミー賞に参加。

プラダの再生ナイロン製スーツを着てアカデミー賞に参加。

 ヴィンテージの洋服を愛用したり、トレンドのシルエットにお直しして着るセレブも増えている。シンガーのリアーナは、シャネル(CHANNEL)やディオール(Dior)のヴィンテージアイテムを近年頻繁に愛用しているほか、古着のジャージやシルクスカーフなどをリメイクしたロンドン発のブランド、コナー・アイヴズ(Conner Ives)もお気に入り。

画像: 左:シャネルの1996年コレクションのチェックコートを着用、右:ヴィンテージのスカーフをリメイクしたコナー・アイヴズのキャミソールにダメージデニムを合わせて。

左:シャネルの1996年コレクションのチェックコートを着用、右:ヴィンテージのスカーフをリメイクしたコナー・アイヴズのキャミソールにダメージデニムを合わせて。

 モデルのベラ・ハディッドは、ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)、コム・デ・ギャルソン(COMME des GARÇONS)、クロエ(Chloé)といったハイファッションブランドのヴィンテージアイテムのほか、Y2Kトレンドで再び脚光を浴びるアバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)やフィオルッチ(Fiorucci)といった懐かしのブランドの古着を私服に取り入れている。

画像: フィオルッチのブラトップをヘビロテするベラ。

フィオルッチのブラトップをヘビロテするベラ。

エシカル・ファッションは難しくない!今日から取り入れられる7つの工夫

 セレブたちが取り入れていると聞くと、「敷居が高い」、「コストがかかりそう」と何だか腰が引けてしまう人もいるかもしれない。

 でも、エシカル・ファッションの本質を理解すれば、じつはリーズナブルで、地球や社会だけでなく、自分の健康やお財布にだってやさしいことがわかるはず。

 エシカル・ファッションにシフトするために今日からできる7つの工夫を紹介!

1:スローファッションを心がける

 ただシーズンごとの流行を追うだけでなく、「自分にとって本当に必要で似合うアイテムを上手に選び、愛着を持って長く大切に着る」というスローファッションの極意を知ろう。

画像: 1:スローファッションを心がける

 素材や品質にこだわって丁寧に作られたアイテムは、多少値が張るかもしれないが、ずっと使えるものが多く、長い目で見ればちゃんと元が取れる。

 毎シーズンのトレンドに合わせて新しく買い替えるという習慣から、すでに持っているお気に入りのアイテムに小物使いや配色で変化をつけてコーディネートを楽しむというマインドセットに切り替えて。

2:素材を意識する

 洋服や小物がどんな素材でできているかに注目。例えば、合成繊維であるポリエステルは廃棄後に土に返るまでに何十年もの年月がかかるのに対し、サステナブルな方法で育てられた竹からできた生地は化学物質や化学肥料を必要とせず、製作工程における汚水の排出量もごく微量。

 オーガニックコットン、リサイクルコットン、麻、テンセル、リヨセルといった環境負荷の小さい素材でできた服を選ぼう。肌や体のためにも、化学繊維を避けるのは好ましい。

画像: 2:素材を意識する

 近年では、リサイクル素材を使用するブランドも増加。エコ先進国であるスウェーデン発のハイストリートブランド、H&Mのコンシャス・コレクションは、使用済みの繊維くずから再生されたコットンなどのリサイクル素材を製品の20~50%以上に採用している。


3:エシカル・ブランドを知る

 デザイナー自身も熱心な環境保護支援活動家として知られるイギリス発のブランド、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)のポリシーは「Buy less, choose well, make it last(本当に必要なものだけを買い、よく選び、長く使おう)」。

 2011年にはエシカル・ファッション・アフリカと銘打ったプロジェクトを始動した同ブランドは、フェアトレードの実施や途上国の労働者支援といった人権への配慮だけではなく、熱帯雨林保護活動などにも注力。2022年秋冬コレクションでは、環境への影響が少なくクルーエルティフリー(商品や活動が動物を傷つけたり殺したりしていない)素材を71%使用。実際に店舗で販売する商品に関しては、その割合を95%まで引き上げることを目指している。

画像: 2022年春夏コレクションのランウェイに登場したデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド(中央右)と夫でクリエイティブディレクターのアンドレアス・クロンターラー。

2022年春夏コレクションのランウェイに登場したデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド(中央右)と夫でクリエイティブディレクターのアンドレアス・クロンターラー。

 ブランドのエシカルな取り組みを知るうえで便利なのが、前述のエマ・ワトソンも賛同しているアプリ「Good On You(グッド・オン・ユー)」。

 オーストラリアの慈善団体エシカル・コンシューマーズ・オーストラリアが2016年にローンチしたこのアプリでは、ブランド名やアイテムを入力するだけで、世界中の2500を超えるブランドの“エシカル度”が簡単にチェックできる。

画像: ©Good On You

©Good On You


4:古着の素晴らしさを見直す

 私たちが店頭で手に取る洋服や小物、靴などの製造プロセスではCO2(二酸化炭素)が排出される。さらに原料となる植物の栽培や染色には大量の水が使われ、生産過程で余った生地などの廃棄物も出る。服1着を作るには、多くの資源が必要となり、大量に衣服が生産されればされるほど環境への負荷は大きくなる。

 新たな1着を作り出すよりも、すでに今世の中に存在している古着をコーディネートに活用するほうが、何倍もエコでサステナブルだというのは容易に想像できること。

画像1: 4:古着の素晴らしさを見直す

 ファストファッションが台頭する以前の時代、素材や縫製にこだわって作られた洋服は良質で長く使えるものが多い。レトロなシルエットやプリントも今となっては新鮮で、人とは違う個性を表現するのにはぴったり。街の古着屋やヴィンテージショップ、地域のフリーマーケットに足しげく通って名品をハントするのもよし、フリマアプリでお気に入りの一着を探すのもよし! 

画像2: 4:古着の素晴らしさを見直す

5:レンタルサービスを活用

 結婚式やパーティー、子供の卒業式などのためにフォーマルウェアを購入した経験がある人は多いはず。そういった洋服は普段はまったく着る機会がなく、一度着たきりクローゼットの奥で眠ったまま…というケースがほとんど。

 最近では、手頃な価格でおしゃれな洋服を借りられるファッションレンタルサービスが続々登場。プロのスタイリストが選んだコーディネートを届けてくれるサービスや、一度レンタルしてみて、もしも気に入ったらそのままアイテムを購入できる制度があるサービスなどもあるので、フォーマルのみならず、普段着にも活用できる。

画像: 5:レンタルサービスを活用

6:使わなくなったアイテムはリユース or リサイクル

 着なくなった服を手放す手段は大きく分けて3つ。1つ目はリサイクルショップやフリマアプリを通じて売却すること、2つ目は資源として古着回収サービスなどで回収してもらうこと、そして現状最も割合が高い3つ目は、可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄するという方法。

画像1: 6:使わなくなったアイテムはリユース or リサイクル

 服がごみとして出された場合、再資源化される割合はわずか5%程度。95%は焼却・埋め立て処理される。その量は年間で約48トン(※)で、大型トラック約130台分を毎日焼却・埋め立てしていることになる。

※環境省のレポートより

 破棄された大量の衣服を処理するためにも環境負荷が生じているということを忘れてはいけない。消費者と生産者が協力して、できるだけ衣類をリユースまたはリサイクルする「循環型モデル」を構築することが、今後のファッションの未来を左右する大きな課題の1つとなっている。

画像2: 6:使わなくなったアイテムはリユース or リサイクル

7:迷ったら買わない

 環境省の調べによると、日本人1人あたりの年間平均衣服消費・利用状況は、購入枚数約18着に対し、手放す服の数は約12着。そして、1年間一度も着用されないまま、“タンスの肥やし”になっている服の数は約25着だそう。

 この明らかなムダを無くすには、服を買う時点で、「本当にこれは必要?」「持っている服とコーディネートできる?」「着回し力は?」と自分に問いかけてみるといい。もし悩むなら、買わないほうがベター。


 エシカルファッションは、見た目ではなくマインドセットをチェンジすることから始まる。ひとときの流行に流されてやみくもに大量消費するよりも、地球や人、動物への思いやりをもって無駄を省き、本当に好きなものや納得できるものだけを身にまとって暮らすほうが、ずっとおしゃれな生き方なのかもしれない。(フロントロウ編集部)

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