ジョニー・デップが元妻のアンバー・ハードを名誉毀損で訴えた裁判がついに終わりを迎えた。長引く法廷闘争によって、イメージに大きく傷がついたジョニーとアンバーの今後のキャリアはどうなる?(フロントロウ編集部)

ジョニー・デップとアンバー・ハードの今後のキャリアはどうなる?

 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどの代表作で知られる俳優のジョニー・デップが元妻で同じく俳優のアンバー・ハードを名誉毀損で訴えた裁判で、現地時間6月1日、陪審員はアンバーが2018年に米Washington Postに寄稿した論説が名誉毀損にあたると判断し、アンバーに合計で1,500万ドル(約19.5億円)の賠償金をジョニーに支払うよう命じた。また、法的にはジョニーが勝訴したが、アンバーもジョニーへの反訴で200万ドル(約2.6億円)の賠償金を勝ち取った。

 裁判に勝訴し汚名をそそぐことに成功したジョニーと、裁判に敗訴したアンバーの今後のキャリアはどうなるのだろうか? 輝かしいキャリアを誇っていたジョニーは、個人的な問題が公になったことで、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの続編の話が立ち消えになったほか、2020年に別の名誉毀損裁判に敗訴したことで映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズの降板を余儀なくされた。一方のアンバーも、映画『アクアマン』でヒロインのメラという大役を手にしたものの、2023年公開の『アクアマン2(仮)』を除いて出演作が決まっていない。

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 ジョニーもアンバーも、この名誉毀損裁判によって自分の評判を回復することを望んでいた。しかし、法律家やエンターテインメントの専門家は、今回の裁判で明らかにされた醜聞の数々によって、両俳優の評判が傷つけられたと口をそろえる。

 かつて芸能関係を専門に扱っていた弁護士で、米Puck Newsでハリウッドのビジネスに関するコラムを執筆するマシュー・ベローニ氏は、AP通信の取材に対し、「この2人はまた活躍するでしょうが、大手スタジオが彼らに賭けるほど『安全』だと考えるようになるには、しばらく時間がかかると思います。この裁判で明らかになった個人的な問題は、スタジオとしてはあまり関わりたくないものでした」と語った。

 実際、ジョニーに関しては、長年、薬物やお酒の依存症に苦しんでいることや、遅刻やセリフを覚えられないといった、アンバーの告発とは無関係の問題を抱えていることが今回の裁判で次々と明かされた。AP通信のインタビューに応じた弁護士のブレッド・ワード氏は、法廷で自身が抱える問題を潔く認めたジョニーの姿勢を評価した一方で、「そもそもこの裁判は彼にとって価値があるものだったのでしょうか。彼がハリウッドの一流俳優として再起できたかどうかは、5年後にわかるでしょう。もし、再起できなかったら?彼はとんでもない間違いを犯したということです。それはつまり、人々が彼の優れたハリウッドでのキャリアよりも、この裁判を思い出すということです」と厳しい言葉を投げかけている。

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 また、クライシスマネジメント(危機管理)の専門家であるエリック・ローズ氏は、両者へのキャリアのダメージという点で今回の裁判は「無理心中」のようなものであり、「レピュテーション・マネジメントの観点から言うと、勝者はいません。彼らはお互いに血で血を洗うようなことをしました。映画スタジオにとってどちらの俳優を雇うことも難しくなっています。ジョニーとアンバーのどちらかを特定のプロジェクトに起用することで、その事実を好ましく思わない視聴者の多くを遠ざける可能性があります」と、今後浮上するであろう問題点を指摘した。 

ジョニーは「スターダムに返り咲く」と予想する専門家も

 しかし、ハリウッドは寛大な業界としても知られる。これまでにもプライベートな問題が露呈して、業界から敬遠されていた人物が華麗にカムバックを果たした例はいくつもある。とくに、ジョニーには俳優としてすでに十分な実績と知名度があることから、かつての名声を取り戻すのは時間の問題だという声もある。

 「彼はハリウッドのスターダムに返り咲くと思います」と話すのは、アトランタに拠点を置くStrategic Vision PR GroupのCEO、デヴィッド・E・ジョンソン氏。同氏は、今回の裁判でSNSを中心にジョニーを支持する声が高まったことを指摘し、「彼は世論という法廷に勝ったのです」と言うと、「数年前のように、ハリウッドが彼を致命的な存在とは見ていないことを、これから知ることになると思います。ハリウッドは彼を利益をもたらす存在として見るようになるでしょう」と米NBC Newsに述べた。

画像: ジョニーは「スターダムに返り咲く」と予想する専門家も

 英The Mirrorの取材に応じたIn House PRの代表で、20年以上にわたってアカデミー賞にノミネートされた俳優や作品と一緒に仕事してきたアレキサンドラ・ヴィラ氏も、ジョニーの未来は明るいと提唱するひとり。同氏は、「彼のキャリアは急上昇するでしょう。ジョニーは過去数十年にわたり、ハリウッドのスタジオに何十億ドルもの利益をもたらしてきました。それが、彼が約40年間にわたって、観客に愛される作品やプロジェクトに起用され続けている理由です。たとえば、彼がプロデュースするフレグランス『Sauvage』が記録的な売れ行きを見せていることは、その一例だと思います。そして、ここアメリカでは、テレビ局が再び『パイレーツ・オブ・カリビアン』の映画を次々と放映しています」と太鼓判を押している。

ジョニーよりもアンバーのほうが厳しい状態にある

 アンバーのほうはどうだろうか? 2020年にジョニーが英The Sunを相手取って行なった名誉毀損裁判で、The Sunがジョニーを“妻に暴力を振るう者”と呼んだことは「事実に反していない」と判断されたことで、実質、ジョニーとの闘いに勝利したアンバーだが、今回の裁判では法的に敗訴した。そんなアンバーの今後のキャリアはジョニーよりも厳しい状態にあるとの見方が多い。

 The Mirrorの記事でジョニーのキャリアの見通しについても考察したヴィラ氏は、「今回のことは、大手スタジオを怯えさせています。同様に小規模なプロダクションも、アンバーに資金を投入することに慎重になっているはずです。私の意見では、(裁判に敗訴したことで)世論の勢いが彼女に不利になったので、プロデューサーは彼女を採用するかどうか慎重に検討しなければならないでしょう。人々はハリウッドの映画スタジオがビジネスであるということを忘れがちです。利益をもたらすかどうかで、スターを雇うのです」と、多くのスタジオがアンバーの起用に及び腰になる可能性を指摘。

画像: ジョニーよりもアンバーのほうが厳しい状態にある

 ただし、ジョニーだけでなく、アンバーにもチャンスが与えられる可能性はゼロではないという。「ハリウッドが最も寛容な業界のひとつであることを忘れてはなりません。私たちは、何度も何度も、一見危機に瀕した人たちが悲惨な状況から立ち直る姿を見てきました。そして、ここの人たちはカムバックが大好きなんです」と、ヴィラ氏はアンバーを擁護している。(フロントロウ編集部)

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