フロントロウ編集部が映画・ドラマのシーンを専門家のコメントやデータをもとに超マジメに検証する連載企画『エンタメ検証部』。今回は、アクションシーンでよくある、首を高速でひねって敵を倒す“首ゴキシーン”について、顎顔面領域の専門家である高谷秀雄氏に話を聞いた。

脳の防衛反応が働き気絶...最悪の場合は死も待っている

 戦闘シーンでよく見かける、首をゴキッとひねって敵を倒すシーン。アクション映画に高い確率で登場する “あるある”なシーンだが、実際にやって敵を倒すことはできるのだろうか?

画像: 脳の防衛反応が働き気絶...最悪の場合は死も待っている

 結論、人の首をひねって気絶や死亡させることは理論上は可能だという。

 顎顔面領域の専門家である高谷秀雄歯科クリニックの高谷秀雄院長は、「首の限界を超えて捻るとまずは血流や呼吸が遮断されてしまいますが、神経系に過大なショックを与えると、脳の防衛反応としてシャットダウンして気絶します。首周辺でいえば、頸椎の骨が破壊されれば、その中の神経にダメージを確実に与えて、切断する可能性もあります。血管や気道も損傷されれば救命措置がほとんど不可能なのでそのまま死亡してしまうでしょう」とフロントロウ編集部に説明する。

 映画では首をゴキッとやられた敵はひざから崩れ落ちていくが、その人物のその後が描かれることはない。シーンに再び登場はしないので“死んでいる”設定のように見えるが、理論上は死んでいるのか? それとも気絶しているだけなのか?

 「首を捻って倒すシーンではそのまま床に倒して放置しているのがほとんどなので、いわゆる即死状態でしょう。命に別条なく首をひねって気絶だけさせる方法は想像できません」と高谷氏は話す。

 やはり、首ゴキは相当危険のよう。ただ、理論上は可能ではあるものの、現実世界で実際にやるとなるとどれだけ簡単なのか? 映画でよく描かれる“首ゴキ”シーンは、敵の頭を両手でつかんでグリッと高速でひねって瞬時に敵を倒すというもの。これは英語圏では“ninja neck break(直訳:忍者首折り)”とも呼ばれているのだが、総合格闘技のコーチや審判をしているラムゼイ・デューイは公式YouTubeチャンネルで、「映画で見るものはでたらめですよ。首を折るためにはああいうやり方はしない」と断言する。

 ninja neck breakのような動きはMMAでは禁じられてはいないと前置きしたデューイ氏は、実際に首からダメージを与える場合は「(映画で見るような)瞬時に首をツイストするやり方ではなく、どちらかというと、不格好なヘッドロックのような見た目になります」と解説。加えて言うならば、現実世界では相手は動いている人間。首ゴキされることに非協力的な相手に技を成功させるのは相当難しいそうで、格闘家ですらその動きで相手をタップアウトさせるには何年もの特訓が必要なため、「一般の人がやるのは非常に難しいでしょう」と続けた。

 つまり、映画『コマンドー』(1985年)でアーノルド・シュワルツェネッガー演じるジョン・メイトリックスが飛行機内でエンリケスを肘鉄で気絶させた後に首ゴキして殺したシーンや、映画『マン・オブ・スティール』(2013年)でスーパーマンが目からビームを出していたゾッド将軍を首ゴキして殺したシーンは、状況やパワーを考えるとあり得るのかもしれない。一方で、映画『リーサル・ウェポン4』(1998年)でジェット・リー演じるワン・シン・クーが片手で白髪男性を首ゴキしたシーンは現実的に考えて非常に難しいと思えるが、ここは、“ジェット・リーだから”として夢を壊さずにおきたい。

専門家 高谷秀雄氏
口腔外科医。口腔がん治療を中心とした治療に携わり、切開を伴う治療を多く経験。高谷秀雄歯科クリニック院長。
https://www.takatani-dental.jp/

(フロントロウ編集部)

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