イギリスの中学校の校長が全校集会でゲイであることをカミングアウトし、イギリスの公立中学校で史上初めてゲイであることをオープンにしている校長となった。(フロントロウ編集部)

全校集会で生徒たちに夫を紹介

 英ノース・ヨークシャーにあるRisedale Secondary Schoolの全校集会で、コリン・スコット校長が生徒たちにスピーチを行なった。

 イギリスでは2022年は、国内で初のプライドパレードが開催されてから50周年。造幣局がレインボーカラーの50p硬貨を製造するなど、例年以上に盛大に、LGBTQ+コミュニティの歴史や権利運動にスポットライトを当てるプライド月間が祝われている。そしてRisedale Secondary Schoolでも、プライド月間を祝した集会が行なわれた。

 その集会で54歳のスコット校長がある人物を紹介した。それが、14年来の夫であるドリュー・ダルトン。そう、スコット校長は愛する夫と幸せに暮らすゲイの男性なのだ。同僚の教師や学校の理事会にはカミングアウトしていたものの、生徒とそのことについて話したことはなかったという校長。そもそも校長が結婚していることすら知らなかった生徒たちは最初は驚いた顔をしていたが、校長がカミングアウトしているのだと分かると、全校生徒から大きな拍手と歓声があがったという。

^右から2番目が校長。

 校長は集会で、同性愛者として自身が経験した壁や葛藤を正直に生徒たちに告白。英海軍に所属していた80年代は同性愛者であることが軍の規律で禁止されていて(※2000年にルール改定)、新人教師だった90年代には「同性愛の促進」を禁止する法案(※2003年まで施行)が作られと、若い頃は“同性愛=悪”という社会規範の中で生きたため、本当の自分を隠すことが防衛本能として根付いていたと明かした校長。

 以下は、校長が公開したコメント。

「私はいつも、本当の自分が見えてしまうのを防ぐために、自分のまわりに壁を築いていました。(自分を見せる)代わりに、社会が当時教師に期待していたものの「つくりもの」または「クローン」を見せてきました。この「壁」は何年もそびえ立ちました。昇進を目指すたびに、ゲイであることがキャリアを縮めることになりかねませんでした。実際に私は未だに、教師がゲイであることを公表すれば、上級レベルの役職にはなれず、決して校長にはなれないと信じています。特に中等教育機関では。

しかし、今は、校長として責任を持つ若者たちに対して畏敬の念と賞賛の念を抱いています。彼らが仲間それぞれの文化、宗教、性別、人種、性的指向など、個々のアイデンティティを受け入れているのを目の当たりにしています。私は、『なぜ私は、多くの若者が今自信をもって受け入れているように、オープンであることができなかったのだろう』と自問しています。

確かに偏見はまだ存在し、イジメはどの学校でも起こっています。でも、54歳の大の大人が、自分が自分であることに怯え、自分自身が作り上げた架空のレンガの壁の後ろに隠れているのです。一方で、今の若者たちは世界に挑戦し、自分が何者であるかということを恐れていないのです。

偏見は、影響力の持つ人たちがあらゆる形で挑戦しなければ、常に存在し続けるのです。私には、彼らの人生が私のものよりずっと良いことを伝え、『なりたい自分』になれるんだというお手本となるために立ち上がる能力がないのでしょうか。

だから(そうするために)私はここにいます」

 集会後に英Guardianの取材で子どもたちの反応について「ちょっと涙ぐんでしまいました」と語った校長は、カミングアウト後も生徒たちの態度は変わらないと明かし、「みんな今も私を嫌なヤツだと思っていますよ」とジョークを飛ばした。(フロントロウ編集部)※アイキャッチ写真はイメージです

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