両性の同意には同性婚を禁止する意図はない
2022年6月20日に、大阪地方裁判所は、同性同士の結婚が認められていないことは憲法に“違反しない”と判断した。
日本では、2021年3月のNHKによる世論調査で同性同士の結婚に賛成すると答えたのが57%、反対すると答えたのが37%となっており、多くの国民が同性同士の結婚に賛成しているにもかかわらず、同性同士の結婚の権利が認められていない。
同性同士の結婚についての議論になると、日本国憲法24条1項に書かれている「婚姻は両性の合意のみに基いて成立」という部分が問題となる。しかし、24条を起草した女性であるベアテ・シロタ・ゴードン氏は、5歳から15歳までの約10年を日本で過ごした経験を持つアメリカ人女性であり、草案を作成した際には“日本の女性に必要な権利”を考えていたという。
当時は結婚する際に戸主の同意も必要だったため、べアテさんが結婚は「両性の合意のみ」で出来るとしたのは女性の権利を守るため。1993年に婦人展望が掲載したべアテ氏の草案では、「婚姻と家庭とは、両性が法律的にも社会的にも平等であることは当然である。このような考えに基礎をおき、親の強制ではなく相互の合意に基づき、かつ男性の支配ではなく両性の協力に基づくべきことをここに定める」と書かれており、その意図は明白。
そのため、Marriage for All Japanは「両性」という言葉によって憲法が同性同士の結婚を禁止していると主張するのは強引だと指摘。また、憲法において明確に“同性同士の結婚を禁じる”とする文章はなく、つまり憲法は同性同士の結婚を禁止していない。24条1項は同性同士の結婚を「想定していない」というのが一般的な学説とされている。
ちなみに、ベアテ氏は1993年に応じたインタビューで、草案に子ども、母親、女性の問題は多く出てくるが、老人の問題は出てこないと指摘され、草案を考えた当時は22歳と若かったことがあると認めている。老人の問題を考えつかなかったのと同様に、草案が作成された1946年には、同性同士の結婚に賛成・反対以前に、その考えすらなかっただろうと予想される。実際に、過去にベアテ氏が同性愛者の存在を知らなかったという趣旨のことを話していたという証言もある。
結婚は何のため?
大阪地裁の判決では、「異性間の婚姻は、男女が生み育てる関係を社会が保護するという合理的な目的により歴史的、伝統的に完全に社会に定着した制度」という発言がされたことも、大きな議論を呼んでいる。
制度の歴史に関する議論にはここでは触れないが、今も昔も、子どもを持たない夫婦がいるのは明らか。そして、異性間であれば子どもを持たなくても結婚出来る。現代では、“結婚=子供を持つこと”と考えない人は多い。
とはいえ、“子どもがいない夫婦(女性)は半人前”“子どもを産まない夫婦(女性)はわがまま”といった異性間夫婦への悪口は、これまでも多く聞かれてきた。同性同士の結婚の権利の問題は、夫婦の形・在り方への倫理観を問われているとも言える。
「結婚の自由をすべての人に」弁護団は大阪地裁の判決を受けて、声明を発表。「婚姻の平等の実現に向けた闘いはまだまだこれからである。必ず婚姻の平等は実現する。尊厳を取り戻す日を諦めずにともに声を上げ続けよう」と呼びかけた。
(フロントロウ編集部)