「クオータ制」や「パリテ」…。政治の言葉としてよく耳にするようになったけど、一体どういう意味?(フロントロウ編集部)

クオータ制とは?

 じつは、政治分野における性別によるクオータ制は世界196の国と地域のうち、すでに「118」の国と地域で国政レベルで導入されているもの。100ヵ国以上がすでに導入しているとは、なかなか驚きでは?

 クオータ制とは、ポジティブ・アクション(※)の手法の1つで、性別や人種などを基準に一定の人々や比率を割り当てる制度のこと。日本では、性別を基準に女性又は両性の比率を割り当てるジェンダー・クオータのことを指す場合が多い。
 ※アファーマティブ・アクションとも呼ばれる。差別や不平等の現状を変えるために、差別を受けている集団の立場の改善を積極的に行なうもので、機会の平等や多様性の確保などが目的。

 女性議員が少ないということは、人口の半分を占める女性の身体的・精神的・社会的経験を身をもって経験して政治に繋げる人が少ないということ。もちろん、女性であれば他の女性を完全に理解できるというわけではないが、一定数の女性議員がいることは重要。そのバランスを取るためにクオータ制が有効とされており、導入する国が多いのだ。クオータ制には3つの種類があり、以下のようなものがある。

画像: クオータ制とは?

・議席割当制
議席のうち一定数を女性に割り当てることを、憲法または法律のいずれかにおいて定めているもの。

・法的候補者クオータ制
議員の候補者の一定割合を女性または男女に割り当てることを、憲法または法律のいずれかにおいて定めているもの。
 ※遵守を義務付けるか努力義務とするかは国にとって異なる。

・政党による自発的クオータ制
政党が党の規則等により、議員候補者の一定割合を女性または男女に割り当てることを定めるもの。

クオータ制はアンフェアじゃない?

画像1: クオータ制はアンフェアじゃない?

 「政治家は候補者の実力で決まっているから強制的に割り当てを決めるのはフェアではない」というような声が出ることがあるが、じつは多くの調査が、ジェンダーバイアスやジェンダーロールなどのせいで選挙は女性が不利であることを示している。

 日本で例を挙げるならば、女性地方議員を対象に女性議員が少ない理由を聞いた内閣府の調査では、59.1%が「政治は男性が行うものという固定的な考え方」と答えている。このようなジェンダーバイアスは女性の当選率を阻むだけでなく、立候補にあたり家族からの理解が得にくいうえ、そもそも政治家になろうと考える女性の数を減らす。また、男性の家事育児への参加率が世界ワースト3 に入る日本では、家事育児は女性の仕事というジェンダーロールが女性の政治参加を阻む

 それに加え、有権者が投票への見返りに女性候補者に様々なことを要求する「票ハラ」と呼ばれる嫌がらせや、議会内での男性議員からの性的嫌がらせなど、女性は立候補後・当選後も男性が経験しない障がいを経験しやすい。これもまた、女性が議員になること、続けることを難しくしている。

 クオータ制のようなポジティブ・アクションは、こういった不平等や差別を認識したうえで、不利な状況にいる集団の立場の改善を積極的に行なう行為で、機会の平等や多様性の確保などが目的。つまり、フェアではない環境をフェアにしようということ。

 クオータ制を取り入れれば、政党は“嫌でも”女性議員が増えるための環境づくりに取り組むしかない。クオータ制には、政治の世界にある不平等を直すようリーダーたちの背中を押すという利点もあるのだ。

画像2: クオータ制はアンフェアじゃない?

パリテとは?

 「同数、均等」を意味するフランス語。フランスでは1980年代にクオータ制に対して違憲判決が下されていたことから、1999年に憲法改正により「パリテ条項」を追加し、2000年にパリテ法が制定され、男女の政治参画への平等が促進された。

 内閣府男女共同参画局は、「この法律の名前から、“パリテ”を“議員の男女比率を同率にする”ことをはじめとして、意思決定の場での男女が同数になることを表す言葉として使われている」としている。

クオータ制を導入した国の現在は?

 現在の社会では男性議員が多いために、女性の権利に関することも男性が決定権を持ち、多くの場面で女性の権利や生き方が侵害されているのが現実。3、40年ほど前から、それぞれの国で女性の政治参加を拒まないように環境を整える努力がされてきた。その結果は、現在どのような数字となって表れているのだろうか?

 パリテ法が有名なフランスでは、下院議員選挙では男女の候補者の割合が50%から離れるほど政党助成金が減額され、比例代表制がとられている上院議員選挙では、候補者名簿に男女を交互に登載することとされている。

画像: クオータ制を導入した国の現在は?

 パリテ法以前の1997年の国民議会で女性が占める割合は10.9%とヨーロッパ最低レベルだったのだが、男女同数・平等な50%ずつの候補者擁立が義務づけられたことで、2021年には各省大臣の割合は女性が50%に達して世界9位。女性下院議員の割合は39.5%、女性上院議員の割合は34.8%で世界27位となった。列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union/IPU)が発表している。

 その他には、例えばスウェーデンでは、1993年に社会民主党が候補者名簿の登載順を男女交互とする仕組みを導入し、左翼党が候補者名簿の最低50%を女性とするクオータ制を導入。1997年に環境等が候補者名簿の女性数を全体の50%±1名の範囲内とするクオータ制を導入し、結果として、2021年には各省大臣の割合は女性が57.1%で世界2位、一院制である議会における女性議員の割合は47%で世界7位となった。

日本の現状は?

 内閣府男女共同参画局によると、衆議院における女性議員の割合は9.7% 、参議院における女性議員の割合は23% にとどまっている。列国議会同盟によると、日本の女性国会議員の割合は世界168位。

 日本では、「202030」という目標があった。社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待するという目標だったが、社会を見れば分かる通り、それから2年が経った今でも達成されていない。2020年に設定された新たな目標時期は、「2020年代の可能な限り早期に」という非常にあいまいなものとされた。

 そして2020年に、国政選挙の候補者を2025年までに35%とする目標が設定されたが、罰則のない努力義務となっていること、目標が半数ではなく35% とされたことなどに批判があがった。

 Business Insider Japanは先日、主要9政党にクオータ制について賛否を質問。自民党、日本維新の会、NHK等が反対した。また、公明党は賛成したものの、NHKによると女性候補者の比率は21%で、9政党のなかで最も低い数字となっている。

 女性候補者が最も多いのは日本共産党の55%で、次が立憲民主党の51%、そして社民党が42%と続いた。

 議員数ではなく、候補者の数すらも女性が半数に届いていない日本。女性がいない国政の影響は、国民1人1人に及んでいる。

(フロントロウ編集部)

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