リリックに差別的な表現が使われているという指摘を受けて楽曲リリース後に歌詞を変更するケースが続いている。ストリーミング時代だからこそ起きている一連の動きを紹介。(フロントロウ編集部)

ビヨンセが『ルネッサンス』収録曲「HEATED」の歌詞を変更

 7月29日に6年ぶり通算7作目となる待望のニューアルバム『Renaissance(ルネッサンス)』をリリースしたシンガーのビヨンセが、歌詞に差別的な表現が含まれていると指摘されたことを受けて、同作に収録されている楽曲「HEATED」の歌詞を変更した。

画像: ビヨンセが『ルネッサンス』収録曲「HEATED」の歌詞を変更

 差別的な表現だとして指摘されることになったのは、ラッパーのドレイクと共に共作した同曲の歌詞。問題とされている単語はしばしば、「興奮する」や「クレイジーになる」という意味で使われる単語だが、元々は、痙攣性麻痺を抱える人々を侮辱する意味とされる表現から来ている。

 「Heated」にこの単語が使用されていることを受けてビヨンセのもとには批判の声が寄せられることになり、ビヨンセの代理人は米現地時間8月1日に「傷つけるような形で使用する意図はありませんでしたが、当該の単語は変更されることになります」と米CNNにコメント。その後、当該の箇所は「blastin' on that ass, blast on that ass」という表現に変更された。

 「Heated」は歌詞を変更して再リリースされている。再リリースされた「Heated」のリリックビデオはこちら。

リゾも同様の指摘を受けて『スペシャル』収録曲「Grrrls」の歌詞を変更

 ここ最近、差別表現にあたるとして歌詞を変更することになったのはビヨンセだけではなく、シングル「About Damn Time」が最新の全米シングルチャートで1位にランクインしているリゾも先日、7月15日にリリースした最新アルバム『Special(スペシャル)』に収録されている「Grrrls」の歌詞を変更した。

画像: リゾも同様の指摘を受けて『スペシャル』収録曲「Grrrls」の歌詞を変更

 リゾは、アルバムのリリースに先立ってシングルとして発表していた「Grrrls」のなかで、ビヨンセとが問題視されたのと同じ単語を使用していたのだが、差別的表現だとする指摘を受けてすぐに当該の箇所を変更。

 「『 Grrrls』という私の新曲のなかで、ある有害な単語を使用していることを知ることになりました。1つハッキリさせてください。私は軽蔑的な言葉をプロモーションするつもりは決してありません」とリゾは声明に綴っている。「アメリカにいるふくよかな黒人女性として、自分は多くの有害な言葉を向けられてきましたし、(それが意図的であれ、私の今回のケースのように意図しない形であれ)言葉が持ちうる力を理解しています」。

 「この決断は私が耳を傾け、行動を起こした結果です。影響力を持つアーティストとして、私は自分自身が世の中に対して待っていた変化の一部になるために邁進します」と続けて、影響力を持つ1人として自らが学び、変化を起こすことの重要性を訴えた。

 「Grrrls」はその後、歌詞を変更したバージョンがアルバムに収録された。歌詞が変更された後の「Grrrls」の音源はこちら。

 リリース後にすぐさま歌詞を変更して再リリースできるのはストリーミングサービス全盛期ならでは。私たちが普段から使っている言葉には、実は差別的な背景や意味が隠れているものが存在する。今回の件のように、その事実を指摘されて後から歌詞を変更するという動きはこれからも起こるだろう。なかには、この動きはアーティストの表現の自由を奪うという声もあるが、ビヨンセとリゾの件から見る限りは、何かが制限されたというよりも、より多くの人にインクルーシブ(包括的)な作品になったのではないだろうか。(フロントロウ編集部)

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