『NOPE/ノープ』にある『AKIRA』オマージュ
映画『ゲット・アウト』や『アス』で、独創的な手法で社会問題を取り上げ、映画作品にしてきたジョーダン・ピール監督が手掛ける最新作には…、UFOが出る!?
『NOPE/ノープ』の舞台は、ある田舎町。主人公のOJと父親が会話をしていたら、突然空から何かが降り注いだ。そしてそれが止んだ時、父は息絶えていた。OJと妹のエメラルドは、父親の死の直前に空に浮かんでいた雲に覆われた飛行物体を撮影しようと試みるが…。
ホラーな雰囲気が強かった前2作品に比べると、SFな雰囲気が強く感じられる本作。しかし、もちろんピール監督がシンプルなSF作品を撮ることはなく、予告編からはよく分からない恐怖が襲ってくる作品であることだけは分かる。
そんな本作には、アニメ好きにはたまらないオマージュがある。それが向けられたのは、大友克洋による漫画を原作とした映画『AKIRA』で、金田がバイクをスライドさせるあまりにも有名なシーン。しかし本作でそのオマージュが印象的なのは、キキ・パーマー演じるエメラルドがバイクをぶっ飛ばすから! 監督は撮影について、米ReelBlendのインタビューでこう振り返った。
They got Keke Palmer doin the Akira Slide in Nope pic.twitter.com/JOBmq5SoJD
— Bacchus (@Ejnorman97) July 16, 2022
「『AKIRA』は僕にとってとても意味のあるもので、本作のなかに有名なバイクの、金田のバイクのスライドシーンがあります。アニメは全般的に大きな影響を与えてくれたのですが、本当にコアなオマージュをするというのは大変なことでもあります。なんだか合わなくて、ただ自分の映画を撮ることにもなり得るのでね。しかし、(あのシーンは)とても良かった。
あのシーンはこれまでにアニメで多くのオマージュをされてきたものですが、こんな感じでされているのは見たことがなかった。黒人女性が白いバイクに乗って、警察のテープを破って、AKIRAのスライドをして…。『なぁ、ジョーダン。このまま行けよ』って感じだったんです」
黒人女性による金田風バイクシーンは、確かに新鮮。本作のSF感は『AKIRA』と繋がるところがあり、さらにそのなかで新しい視点のオマージュがあり、フィットしているというのは、さすがピール監督だと言うところ。
じつは監督は、『AKIRA』の実写映画でメガホンを取るオファーが出されていたことがある。それを断った理由については2017年にブラムハウスのインタビューで、「『AKIRA』はお気に入りの映画の1つですし、あのストーリーは、夢に見たような大きな予算額を要求できるでしょう。でも、僕にとって重要な質問は、すでに存在している物語をやりたいか、オリジナルをやりたいかということなんです。結局、僕はオリジナルのものをやりたいんです」と明かしていた。
彼のオリジナル性は、他に類を見ない。『NOPE/ノープ』はどのように観客に息をのませるのだろうか。
(フロントロウ編集部)