『ザ・ファースト・テイク』で「コンプリケイテッド」をアカペラ披露
一発撮りで知られるYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に、ポップパンクのプリンセス、アヴリル・ラヴィーンが初参戦。欧米アーティストとしては6月に出演したハリー・スタイルズに次ぎ2人目となる出演で、アヴリルは、名曲揃いのファースト・アルバム『Let Go』のなかでもとくにアイコニックなデビュー曲「Complicated」を選曲。
ピンクの鋲ジャン×ブラックのレザーパンツという定番のポップパンク・ルックでカメラの前に現れたアヴリルは、「こんにちは、ハロー。もしもし」と言うと、少し恥ずかしそうな表情。しかし一度歌いはじめると、アヴリル・ラヴィーンというスーパースターの圧倒的な歌唱力、表現力、存在感が画面いっぱいに広がった。
さらに、やはり「Complicated」という曲。洋楽を聴く人にとっての登竜門的な名盤である「Complicated」は没入感が強く、“やっぱりアヴリルと言えばこの曲!”と歓喜してしまうほど至福な体験だった。
アヴリルが『Let Go』でデビューした2002年はどんな時代だった?
「Complicated」がリリースされた2002年は、ちょうど90年代のボーイバンド・ブームが落ち着き、アッシャーやアシャンティ、ジャ・ルールなどがチャート上位を占めていた、R&B/HIP-HOP全盛期。そして、近年のY2-Kブームの再来からも見て取れるように、当時の女性のファッションは俗に言う“女の子らしい”ものが台頭した時代でもあった。
そんな時代に、しかもパンクという完全に男性優位なジャンルに現れたアヴリルは、“女性ティーンシンガー”の概念をひっくり返す存在だった。
アルバムのリードシングル「Complicated」のミュージックビデオで、ぶかぶかのズボンを履いてギターをかき鳴らしながら男子バンドをリードするスケーターガールに、グッドガールなティーンシンガーに慣れていた消費者は衝撃を受け、若い女性は父親のクローゼットからネクタイを借りてアヴリルのパンクロックなファッションをマネることに夢中になった。そして親世代の中には、MVでゲリラライブを開いたり、ショッピングセンターで騒ぎを起こしたりするアヴリルに眉をひそめる者もいたものの、「Complicated」がBillboardのAdult Top 40で16週も1位に君臨したことからも、アヴリルの楽曲にハマったのは若い世代だけではないことが分かる。
当時は、前年にiPod第一世代が発売されて、インターネットの普及が拡大し始めていたものの、まだまだミュージックビデオはMTVで見る時代。アヴリルはそんな新旧のカルチャーが共存していた2002年にテレビでもウェブでも話題の存在だった。Googleが毎年発表している年間の検索データで、2002年には最も検索率が増えた人物のひとりとなり、2003年には最も検索された女性のひとりとして認定された。2002年のMTV VMAではプレショーの目玉パフォーマーとして「Complicated」とセカンドシングル「Sk8er Boi」を披露し、新人賞を受賞。デビューアルバム『Let Go』からはほかにも、サードシングル「I'm with You」とフォースシングル「Losing Grip」がそれぞれグラミー賞にノミネートされ、『Let Go』は時代を代表する名盤となった。
アヴリル・ラヴィーンの影響は何世代も続いている
そんなアヴリルの成功は、その後何世代にもわたり音楽界に影響を与え続けている。
まず、アヴリルがデビューした数年後の2005年にオフィシャルデビューしたロックバンド“パラモア”のヘイリー・ウィリアムズは、アヴリルの成功がなければパラモアのようなバンドがメジャーデビューすることはなかっただろうと頻繁に話している。“男性のもの”というバイアスが強かったジャンルで、アヴリルは女性たちのために扉を蹴り開けたのだ。
「アヴリル・ラヴィーンのキャリアがなければ、きっとレーベルはパラモアに興味を抱かなかったはずだと思っている。アヴリルはバブルガム・ポップ以外の音楽にも興味を持つ女の子たちのために道を切り開いたの」―ヘイリー・ウィリアムズ、英BBCに語って
アヴリルの影響はパンク/ロック界の外にもおよび、R&Bアーティストのリアーナが「Cheers (Drink to That)」で「I’m With You」をサンプリングしたり、ラッパーのニプシー・ハッスルが「Dreamin’」の歌詞でアヴリルに触れたりしていることからも、30代であるこの世代にとってアヴリルの存在がどれだけアイコニックだったかが見てとれる。
そしてその影響は、『Let Go』がリリースされた頃に生まれた世代にまで続いている。ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴ、ウィロウ、アシュニコなどのZ世代はアヴリルの存在や楽曲が自分たちや女性アーティストに与えた影響の偉大さを認めており、そんな“アヴリル・チルドレン”の手で2020年代にパンク/ロックがメインストリームで人気を再熱させている。
アヴリル・ラヴィーンへの支持の原動力は?
「Complicated」や「Sk8ter Boi」といった楽曲がTikTokで数百万回の視聴数を獲得していることからも、アヴリルの楽曲は一般のZ世代にも浸透していることが分かるが、では、アヴリルの音楽はなぜ今でもここまでの求心力を持っているのか?
すぐに脳内リピートしてしまう中毒性の高いチューンやパフォーマンス力といった音楽的才能もそうなのだが、絶対的な理由は、アヴリルの楽曲が持つ、権威に屈せず、自由を渇望し、誰のためにも変わることなく、不満をストレートにぶつけるというメッセージにある。2002年にデビューした当時、生放送中にあぐらをかきながら有名司会者からの質問に物怖じすることなく答える17歳のアヴリルの自由な姿は多くの若者に刺激を与えたが、彼女のそんなポップパンクの精神は時代を超えても若者に共感されて刺激を与えているのだ。
さらに言うと、アヴリルはデビューから20年経った今でも変わっていないからすごい。10代のころは世間で「行儀が悪い」と言われたあとにカメラに向かって蹴りを入れるようなアーティストだったが、今は、「40歳近いのにまだそんな音楽を歌って」と言う人々に中指を立てるかのように、最新アルバム『Love Sux』でもポップパンクの音に乗せて、人生や恋愛に対する喜びや、怒り、悲しみを歌い続けている。しかも『Love Sux』は音楽批評サイトMetacriticでキャリア最高の批評家評価を受けている。“ぶれずに進化”しているポップパンクのプリンセスは、今も最高にアイコニックなのだ。
そんなアヴリルと言えば2022年11月に8年ぶりの来日公演を行なうが、それを記念して、『レット・ゴー』のデビュー20周年記念盤が日本限定カラーの2枚組アナログとしてリリースされるほか、ベスト盤と呼んでも過言では無いほどのヒット曲が網羅されたアルバム『ラヴ・サックス』の来日記念盤が発売される。『THE FIRST TAKE』でアヴリルのパフォーマンスに心動かされた人は、今の時代にも通じる不動のポップパンク・プリンセスの名盤をぜひこの機会に手に取って。
『レット・ゴー(20th アニバーサリー・エディション)』
2022年11月2日(水)発売
■仕様:完全生産限定盤 2枚組アナログLP(日本プレス 日本限定 ホワイト・カラーヴァイナル)
■解説・歌詞・対訳・帯付き
■価格:6500円(税込み)
■品番:SIJP-1071~72
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ファースト・アルバム『Let Go』にボーナス・トラックを加えたデラックス盤。日本盤は日本プレスされ、日本限定となる白のカラー・ヴァイナルとなる。
『ラヴ・サックス・ジャパン・ツアー・エディション』
■国内盤
2022年11月2日(水)発売
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仕様:三方背ケース、解説・歌詞・対訳付き、高音質ブルースペックCD2(Blu-spec CD2)
特典封入予定
完全生産限定盤/CD2枚組+GOODS(SICX-30154~30155)
価格: 3500円(税込)
DISC 1は『ラヴ・サックス』の内容をそのままに、DISC 2では現在行われている<バイト・ミー・ツアー>のセットリストからの楽曲をセレクト。ファースト・アルバム『レット・ゴー』からの名曲「コンプリケイテッド」や「スケーター・ボーイ」から、超ヒット曲の「ガールフレンド」に始まり「ワット・ザ・ヘル」、「スマイル」など代表曲ばかりが網羅された、もはやベスト盤と呼ぶしかない内容
来日日公演スケジュール
2022.11.07(月)パシフィコ横浜 国立大ホール
2022.11.09(水)東京ガーデンシアター
2022.11.10(木)東京ガーデンシアター
2022.11.12(土)Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場) Aホール
2022.11.14(月)インテックス大阪6号館
チケット情報:クリエイティブマン公演サイト
Photos: ゲッティイメージズ、インスタグラム
(フロントロウ編集部)