地球環境の悪化による気候変動や温暖化は、年々深刻化することで多くの人の命や健康を脅かすと言われている。このままではどうなってしまうのか、データととも解説。(フロントロウ編集部)

気候変動が深刻化するとどうなるの?

 近年増えている異常気象や自然災害などの要因のひとつが、気候変動などの環境問題。

画像1: 気候変動が深刻化するとどうなるの?

 スイス再保険(Swiss Re)が昨年発表したデータによると、2021年の世界の自然災害総額はなんと2,500億ドル(約28兆5000億円)で前年比で24%も多いことが分かっている。また英NGOのクリスチャン・エイド(Christian Aid)は、自然災害のうち気候変動の影響が大きい気象災害額の上位10件の合計額が1,700億ドル(約19兆4400億円)を超え、前年比13%増だったと発表。その影響が加速していることが見て取れる。

 気候変動が深刻化することは、地球に生きる人間の命や健康も危険にさらされることになる。たとえばこの夏だけでも、日本では猛烈な暑さによる熱中症患者の多さが連日ニュースになり、世界のほかの国々では干ばつや豪雨が深刻な問題となった。

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 今はまだ日常生活のなかで命の危険までも実感する機会は少ないかもしれないけれど、すでに世界のさまざまな地域で環境の悪化による身体的な悪影響が始まっており、このままでは確実により深刻な問題になることが予想されている。

 決して他人ごとではない気候変動と健康の関係。具体的にどんな影響が生まれているのだろうかを紹介。

【現時点での健康・人命への影響】すでに世界各地で深刻に

 異常気象による干ばつや山火事、熱波、豪雨といった問題は、世界のさまざまな地域で頻発していて、それによって飢餓や貧困、水不足、感染症が深刻化する地域も。このような気候変動が要因となる事態で、すでに多くの人の健康や命が危険にさらされている。

画像: 【現時点での健康・人命への影響】すでに世界各地で深刻に

 WHOが2021年に発表したデータによると、毎年世界では1,300万人以上の人々が本来ならば避けられる環境要因によって亡くなっており、この死亡には気候変動による死亡も含まれているという。

 また気候変動と並んで深刻化する大気汚染も、健康に多大な悪影響を及ぼしている。WHOが2018年に行なった調査では、大気汚染が原因で早期に命を落とす人は、世界で年間700万人に上ることが分かっている。

【死者数の予測】このままでは死者数が毎年25万人ずつ増える

 気候変動によって起こる災害や感染症によって亡くなる人は、このままではどんどん増えてしまうという。

 WHOが発表したデータによると、気候変動による栄養失調、マラリア、下痢、熱ストレスなどで亡くなる人の数は、2030年から2050年にかけて毎年増えていくと予想されている。この予想では、前年に比べて毎年なんと25万人ずつ増えるペースになる見込みだという。

画像: 【死者数の予測】このままでは死者数が毎年25万人ずつ増える

 それだけでもかなり深刻なことが分かるけれど、この数字は控えめな予測だという指摘も多い。New England Journal of Medicineの分析では、年間25万人よりもはるかに多くの死亡者が出る可能性があることを示唆。気候変動に関連した食糧不足だけでも、世界では2050年までに52万人以上の成人が死亡する可能性があると報告している。

 同分析の共著者であり、ロンドン衛生熱帯医学学校の元所長であるアンドリュー・ヘインズ氏は、「人口移動や、食料生産や収穫量などのさまざまな追加要因、熱帯地域の農家の労働生産性を制限する暑さの増加などは影響を定量化するのは難しいと考えていますが、WHOが発表したデータではこれが考慮されていませんでした」とCNNで指摘。死亡につながる背景は複雑であるため分析が難しいが、このままではより多くの人が亡くなる可能性が高いと明かしている。

【メンタルヘルスへの影響】心の健康にも危険が及ぶ

 気候変動による人命や健康への悪影響でもうひとつ問題となっているのが、メンタルヘルスへの影響。海外ではZ世代などの若者を中心に、地球環境が危機的な状況に陥っていることに対して強い恐怖心を抱く「エコ不安症(Eco-anxiety)」に悩む人が増加。

画像: 【メンタルヘルスへの影響】心の健康にも危険が及ぶ

 英バース大などが世界10カ国の16~25歳の計1万人を対象に行なった調査では、75%が「(環境問題の影響で)未来が怖いと感じる」と回答。さらに「気候変動問題への不安が日常生活に否定的な影響を及ぼしている」と回答した人も、回答者の半数近くにあたる45%にのぼっていて、気候変動などの地球環境悪化についての過度な恐怖心によって、不安感や無力感、喪失感、絶望感、罪悪感、困惑感、怒りを強く感じる状態が続き、さらには不眠や集中力の低下、食欲の変化などを感じる若者が増えている。

 このメンタルヘルスへの悪影響も、今後さらに深刻化することが予想されている。

 気候変動などの環境問題が人の命や健康に与える影響。WHOの発表では、パリ協定が掲げる目標を達成できれば、大気汚染の削減だけで世界は2050年までに年間約100万人の命を救うことができるという。もはや環境を意識することは人命を意識すること。地球規模の課題だけに大きな変化が必要で、一人一人の意識が変わることは欠かせないもの。日々の生活や消費行動など、まだできることがないか今一度見直したい。(フロントロウ編集部)

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