俳優とキャラクターは別の人格
ピアース・ブロスナンがジェームズ・ボンドを初めて演じた1995年の映画『ゴールデンアイ 007』では、イザベラ・スコルプコが正統なボンドガールだったが、ファムケ・ヤンセンが演じた敵のゼニア・オナトップも人気が高く、第2のボンドガール的な存在として認識されている。
ファムケはその後も、『X-メン』シリーズや『96時間』シリーズといった人気作に出演してきたが、プライベートについては明かさないタイプ。俳優としてそのスタンスになったのには、『ゴールデンアイ』へ出演した後の環境の変化があったよう。英Independentのインタビューで、彼女はまず、自分は誤解されているという心の内を吐露した。
「時々誤解されていると感じます。見えているものと、内面の違いですね。それはボンド映画でクレイジーな暗殺者を演じたことも要因になっていました。友達や家族は私がお調子者であり繊細で、自分とはまったく異なるキャラクターを演じていることを知っています。他の人達は、私が演じている役は私そのものだと思っているでしょう」
自分のために有名になることを止めた
彼女が演じたボンドガールの描かれ方は長年問題になってきた。最近では、ボンドガールという呼び方が女の子という言葉を使っていて、女性を対等には見ていないという問題から、ボンドウーマンという呼び方になってきていたりするが、まだまだ課題は多い。
俳優と、その人物が演じているキャラクターが同じ性格をしているわけはないのだが、性的なキャラクターを演じる俳優が性的だと思われる、性格が悪いキャラクターを演じる俳優の性格が悪いと思われるといったことは多く、実生活でセクハラを受けたり、キャラクターの性格を理由にした誹謗中傷を受けたりしてきた俳優は少なくない。
架空の生活が実生活に影響することは、ファムケにとって良いことではない。さらに彼女は、「ボンド映画は私とメディアの関係にも大きく影響しました」として、日々の過ごし方で気をつけていることを明かした。
「正直に言って、『ゴールデンアイ』の後には、狼の中に放り出された気分でした。良くも悪くも、注目されるという猛攻撃に遭った。世界中のすべての俳優は、自分がメディアをコントロールできると思っているけども、最終的にはメディアが勝つということに気がつきました。だったら私は、それほど有名にはならずに、自分で好きなことをするほうが良いと決心したんです。つまり、私は他の人よりもお金を稼いでいないということを意味します。有名な人とはデートしない。SNSも使わない…。有名になることには代償がある。そしてそれは、私が払いたいと思えるものではなかった」
現代ではスマホの普及によって昔とは異なる苦労があるが、女性たちが90年代のタブロイドから向けられる視線は今よりもさらにひどく、性的であることも多かった。Independentによると、当時はタブロイド紙の「News of the World がセレブリティの下着をあさるような、非常に侵害的な時代」だったという。
そんな苦労を経験した彼女は、お金よりも安全を取った。とはいえ、上手くバランスが取れているのか、彼女はここ数年で批評家からの評価が高いドラマ『殺人を無罪にする方法』や『THE BLACKLIST/ブラックリスト』、『ボクらを見る目』などに出演してきている。
(フロントロウ編集部)