一人の人間として生きる道を選んだダイアナ、決意の3日間
1997年8月31日、ダイアナ元皇太子妃が交通事故で亡くなったというニュースは世界中に衝撃を与えた。スペンサー伯爵家の令嬢として誕生し、20歳でチャールズ皇太子と結婚すると瞬く間に人気者となったダイアナ。世界中で「ダイアナ・フィーバー」を巻き起こし、2人の息子を育て、死の直前まで人道支援活動に心を注いだ「愛の人」。36歳という短い生涯を駆け抜けた彼女の生き様は世界中の人々に希望と共感を与え今なお愛され続けている。
『スペンサー ダイアナの決意』は、そんなダイアナ妃とチャールズ皇太子の夫婦関係が冷え切っていた1991年のクリスマスを舞台に、ダイアナ妃が今後の人生を決める一大決心をした3日間が描かれる。ダイアナを演じるのは、 『トワイライト』シリーズや『チャーリーズ・エンジェル』で知られるクリステン・スチュワート。キャリア史上最高の演技と称された渾身の演技で、アカデミー賞主演女優賞にキャリア初ノミネートを果たした。監督を務めるのは、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』でジャクリーン・ケネディの知られざる姿を描き、主演のナタリー・ポートマンをアカデミー賞ノミネートに導いたパブロ・ラライン。鋭い洞察力と確かな手腕でダイアナの孤独と苦しみを静かに浮き彫りにする。タイトルにある「スペンサー」はダイアナの旧姓。プリンセスの肩書に隠れてしまった自己を呼び覚ますとき、彼女は再びこの名を名乗ることになる…。
着たい服を着られない…プリンセスの苦しみが見られる本編映像解禁
夫の不倫、マスコミの異常な執着、王室の古いしきたりに縛られ、自由を失ったダイアナの苦しみが寓話として描かれる本作だが、映画で描かれるものすべてに「これは本当?それともフィクション?」と疑問を持ちながら見るのも楽しい本作。この度、知られざる王室のしきたりが切り取られた本編映像が到着した。
クリスマスイブの晩餐会の準備をするダイアナは衣装係のマギーを呼び出す。突然呼び出されたマギーはダイアナの様子を見て「なにが緊急事態?」と尋ねるが、ダイアナは「合わない。サイズじゃなくて気分と合わないの。黒がいいわ」と口早に話し別の衣装を探し始める。サンドリンガムハウスで過ごすクリスマスの習慣に幸せを見いだせないダイアナは、黒のドレスを体にあてながら、最愛の夫の死後、喪服を着続けたことで有名なビクトリア女王の例えを出し、話を続けるが、マギーは「誰も死んでない。黒いドレスは不要よ」と優しく話しかけ彼女をなだめようとする。
ロイヤルファミリーの面々には専属の衣装係がついているのは真実だが、本人の意思が反映されるか否かは定かではない。本作で衣装を担当したのは、『アンナ・カレーニナ』、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でアカデミー賞を2度獲得しているジャクリーン・デュラン。ジャクリーンは「王室にいたころから彼女のファッションは常に話題となっていましたが、離婚後はファッションをより自由に楽しんでいるように見受けられたので、プリンセスの頃はやはりいくらかの制限があったのかもしれません」と分析している。しかしその制限の中でもダイアナはファッションで自己を表していたのではないかと考える彼女は、「王室の女性は公の場で見られることが多いため、明るい色を着なければならないという義務感があると言われています。そうであったとしてもダイアナのセンスは素晴らしく、義務を果たしながら非常に巧妙に、さらに一段上のレベルをいっていました」とダイアナのファッションセンスを絶賛している。
本シーンで登場する衣装係のマギーに扮するのは、『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンス。ダイアナが唯一心を開いている王室の中の人物であり、観客もダイアナと同様に彼女がスクリーンに映ると安心感を抱き、ダイアナの苦しみが描かれる劇中の癒しの役割を担っている。控えめながら印象的な演技で表現したサリー・ホーキンスの名演も注目。疲れ切ったダイアナの心に優しく寄り添うマギーとのシスターフッドな関係も見逃せない。
映画『スペンサー ダイアナの決意』』は10月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー。劇場では、ダイアナ妃初の劇場版ドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』も上映中。(フロントロウ編集部)