カンバーバッチが「猫愛の沼」を作った天才画家を演じる
世界の“猫嫌い”を“猫愛”へと変えた猫画家ルイス・ウェイン。
今でこそ世界は猫の可愛いコンテンツであふれているが、1800年代後半のヨーロッパでは、猫はネズミを追いかける汚い動物として嫌われていた。しかしルイスはそんな猫たちをカラフルかつ陽気に描き、イメージアップに貢献。
人間のようにクリスマスやお茶会を楽しむルイスの猫は大流行し、1890年代初めのイギリスはルイスが描いた猫のイラストで溢れかえっていたそう。つまり、ルイスが描いた猫こそ世界初の猫のインフルエンサーだったのだ。当時、イギリス留学していた夏目漱石もそこでルイスの描いた猫を目にして、『吾輩は猫である』を書く前に影響を受けたのではと言われている。
映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』でそんな猫画家を演じるのが、風変わりな天才を魅力的に演じることでキャリアを積んできたと言っても過言ではないベネディクト・カンバーバッチ。
ルイスは自分が好きなことには子どものように夢中になる天才肌である一方、成人男性としての世渡りは苦手。そんな彼を、ベネディクトが高速で単語をまくしたてながらコミカルかつチャーミングに演じている。
予告編で鼻血ブー状態のルイスを新聞の編集者が「はみ出し者」と呼ぶように、天才は天才がゆえに社会のはみ出し者になることが多い。ベネディクトの俳優としての素晴らしさは、社会で認められなかったそんなエキセントリックで複雑なキャラクターに観客が共感してしまうような魅力を出すこと。世界に猫愛を広げたイラストレーターのユニークさや違いを祝福するのに、ベネディクトほど適任な俳優はいなかっただろう。
また、ベネディクトファンが必見なのが、イラストを描くシーンでのベネディクトの表情や動き。母も姉もアートの才能があり、自身も絵を情熱として挙げるベネディクトは、「ルイス・ウェインには強い繋がりを感じました。アーティストとして、私は絵を描くのが大好きです。彼の筆さばきやエネルギーをマネるうちに不思議と憑依してくるのです」と公式動画で語っており、撮影の合間にも絵を描いていたほどアーティストとしての役に夢中になっていたという。本作で、才能豊かなベネディクトがアートをたしなむ貴重な姿を目撃してもらいたい。
映画公開後にルイス・ウェインの墓に...! 温かい余韻が残る感涙映画
イギリスでは『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』の公開後、観客がルイス・ウェインの墓に足を運んで花や猫のイラストを残していっている。ルイスの墓はそれ以前は荒れていたようなので、今回の映画を観てルイスのストーリーに感動した観客が、彼が後世に残した功績を称えるために墓を訪れているよう。これは、映画を観たあとに残る温かい余韻を考えれば納得の動きだと言える。
社会の猫嫌いに立ち向かったルイスは、同時に、家族との複雑な関係や、最愛の妻(クレア・フォイ)との死別、晩年の病院住まいなど、多くの哀しみを経験した。本作は、人生において様々な障害に見舞われたルイスが力強く生き抜く姿に勇気をもらえる映画なのだ。映画の中のルイスは、瞬間瞬間を精一杯生きている。劇中ではルイスに、「(妻が余命宣告された)こんなに悲しい時期に、どうしてこんな楽し気な絵がかけるのか」という言葉が投げかけられるのだが、まさにそれがルイス・ウェインという男性だったのだ。
また、本作はアートや可愛いもの好きな観客の心も満たすはず。日本にルーツを持つイギリス人監督のウィル・シャープは、母国イギリスの美しい色彩や、イギリス文化のアイテムを実に上手く取り入れてチャーミングかつカラフルにルイスの人生のアップダウンを描いている。ドラマ『SHERLOCK/シャーロック』で俳優として共演した仲であるベネディクトは、「彼の魅力、彼の洗練さ。彼はこの作品にぴったりの存在です」と公式動画で監督を絶賛した。
猫愛の世界のはじまりが観られる映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』は12月1日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』
公式HP:louis-wain.jp
公式Twitter:@louis_wain_film
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー、トビー・ジョーンズ and オリヴィア・コールマン(ナレーション)
監督・脚本:ウィル・シャープ
原案・脚本:サイモン・スティーブンソン
原題:The Electrical Life of Louis Wain
©2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
(フロントロウ編集部)