W杯を開催するカタールでの人権問題をめぐり国際的な批判
W杯の開幕を1週間後の日本時間11月21日に控えるなか、開催国のカタールでの人権問題をめぐる国際的な批判が強まっている。カタールでは、LGBTQ+の人々や女性の権利を迫害するような法律が問題になっているほか、移民労働者に対する非人道的な扱いも問題に。カタールではW杯開催が決定してから大規模な建設計画が進められ、他国から多くの出稼ぎ労働者が雇われたのだが、約10年のあいだで約6,500人の移民労働者が亡くなったと英Guardianが昨年報じた。
カタールでの人権問題をめぐっては、出場国からも批判の声があがっており、イングランドやドイツなどを含むヨーロッパ10カ国のサッカー協会は現地時間11月6日に連名で発表した公開書簡で、W杯を主催するFIFA(国際サッカー連盟)に対し、移民労働者に対する補償を明らかにするように要求。
また、オーストラリア代表は先月、カタールの人権問題に抗議する動画を公開。そのなかで、「カタールでのW杯開催を決定したことが、結果として私たちの仲間である数えきれない労働者たちを苦しめ、傷つけることに繋がってしまったことが分かりました」とジャクソン・アーヴァイン選手は語っているほか、「選手として、私たちはLGBTI+の人々の権利を全面的にサポートしていますが、カタールの人々には、自分が選んだ人を愛する自由がないのです」とデニス・ジェンロー選手はコメントしている。
A message from our @Socceroos on the @FIFAWorldCup #SupportingThePlayers pic.twitter.com/bUqW2pne1w
— Professional Footballers Australia (@thepfa) October 26, 2022
また、デンマーク代表は、カタールでの人権問題に抗議するために、現地には自分たちの家族を帯同させないことを表明。加えて、イングランド代表のキャプテンであるハリー・ケイン選手は先月、カタールW杯のピッチで差別反対を表明する「One Love」の腕章を着ける意向を表明している。
さらに、2014年にブラジルW杯でドイツが優勝した際にドイツ代表でキャプテンを務めていたフィリップ・ラーム氏は、独Die Zeitに寄せたコラムのなかで「カタールにW杯を与えたことは誤りでした。カタールには相応しくありません」とコメント。「同性愛は未だに犯罪扱いで、女性は男性と同じ権利を持たず、報道の自由や表現の自由は制限されているのです」と、同性愛が違法になっていることや、女性の権利が迫害されていることなどに触れて、カタールでW杯が開催されることに抗議した。
デュア・リパもカタールに抗議
カタールでの人権問題に抗議する声はエンターテイメント界からもあがっている。第61回グラミー賞で主要部門の最優秀新人賞を受賞したシンガーであるデュア・リパは、自身が開会式でパフォーマンスを行なうのではとする噂が広まったことを受けてインスタグラムストーリーズを更新。
「私はパフォーマンスする予定はありませんし、パフォーマンスへの参加についての交渉も持ったことがありません。離れたところからイングランドを応援する予定です」と、開会式でのパフォーマンスを否定した上で、「W杯の開催権を獲得した時にカタールが誓った、人権に関するすべての誓約が達成された時にカタールを訪問することを楽しみにしています」とコメント。カタールにおける人権問題が解決されるまで、同国を訪れるつもりはないとした。
カタールW杯は日本時間11月21日に開幕し、日本代表は日本時間11月23日にドイツ代表との初戦を迎える。(フロントロウ編集部)