俳優のマーゴット・ロビーが、映画『スキャンダル』に出演するまでセクハラの定義を「理解していなかった」と明かした。(フロントロウ編集部)

マーゴット・ロビー、セクハラ事件を題材にした映画出演で本質を知る

 映画『バビロン』や実写版『バービー』など話題作の公開を続々と控える俳優のマーゴット・ロビーが、実際に起きたセクハラ事件の裏側を描いた2021年公開の映画『スキャンダル』に出演するまで、“セクハラの定義”を理解していなかったと英国アカデミー賞(BAFTA)のトークイベントで語った。

全米を震撼させた実際のセクハラ事件

 2016年、アメリカのニュース放送局で視聴率ナンバーワンを誇るFOXニュースの看板ニュースキャスターの1人だったグレッチェン・カールソンが、米テレビ業界の帝王として君臨していたFOXニュースのCEO(※2016年当時)、ロジャー・エイルズをセクシャルハラスメントで提訴。

 当初、エイルズ氏とFOXニュースはまったくの事実無根として、グレッチェンの主張を否定していたが、その後、グレッチェンの同僚で同じく人気ニュースキャスターのメーガン・ケリーを筆頭に、20名以上の女性社員たちがエイルズ氏による性的嫌がらせを告発したことで、エイルズ氏は同年にFOXニュースのCEOの座から退いた。

画像: ロジャー・エイルズ元CEO(左)とグレッチェン・カールソン(右)。

ロジャー・エイルズ元CEO(左)とグレッチェン・カールソン(右)。

 グレッチェンによると、セクハラは日常的に行なわれていたそうで、エイルズ氏からの性的な誘いを断ったことを理由に、自分が担当する番組が視聴率の取れない時間帯に移動させられるなどの嫌がらせを受けたこともあったという。また、グレッチェンは裁判所に提出した書類のなかで、セクハラの件をエイルズ氏に直訴した際、「君とはもっと前に肉体関係を結んでおくべきだった。そのほうが君にとっても私にとってもベストなことだったと思う。(性的なつながりを持っていたほうが)問題があっても簡単に解決する」と言われたことを明かしている。

 FOXニュースの女性社員たちに対するエイルズ氏のセクハラが、いかに悪質なものであったかを物語るエピソードはこのほかにもたくさんあり、エイルズ氏のセクハラを告発した女性社員のなかには、性行為の模様を撮影した動画をエイルズ氏から送りつけられて、訴えを取り下げるよう圧力をかけられた者もいることが米TIMEの調べでわかっている。

 マーゴットは、『スキャンダル』で「メインを張りたい」と切望する新人キャスターのケイラ・ポスピシルを演じた。ケイラは主要なキャラクターのなかで唯一、FOXで働いていた2人の女性の実際の体験談を組み合わせた架空のキャラクターで、エイルズから現在進行形でセクハラを受けている対象として登場する。

 難しい題材を扱った作品ということもあり、「(カットがかかった瞬間)ケイラになることをやめました。終わったらすぐにでも(役から)抜け出したくなりました」と話すマーゴットは、この作品を通じて職場でのセクハラの本質を理解したという。

画像: 映画『スキャンダル』のワンシーン。

映画『スキャンダル』のワンシーン。

 『スキャンダル』では、マーゴットのほか、ニコール・キッドマンとシャーリーズ・セロン演じるベテランキャスターたちがそれぞれ異なる形で職場でのセクハラや不適切な行為に向き合っており、個々の事情が深堀りされる。マーゴットいわく、そんな作品に出演を決めたのは“セクハラ問題への理解を深めたい”という思いがあったからだそうで、「私は業界で地位を確立し、経済的にも精神的にも自立していますが、セクハラの定義を理解していないことに気づきました。それは、とてもショッキングなことでした」と言うと、自分のあまりの無知さに「ゾッとした」ことも明かした。

 続けて、『スキャンダル』を通じて、セクハラが各業界の「グレーゾーン(中間領域)で盛んに行われている」ことを知ったというマーゴットは、「ロジャー・エイルズもハーヴェイ・ワインスタインも、そのあたりをうまく利用しているんです。その状況も白黒をつけることは困難です」と、セクハラをする側は被疑者が簡単に声をあげられる状況ではないとわかっていてやっていることを指摘した。(フロントロウ編集部)

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