インティマシー・コーディネーターがいる環境
コリン・ファースの出演も有名なドラマ『高慢と偏見』で主人公のエリザベスを演じ、映画『コンテイジョン』や『英国王のスピーチ』などでも知られるジェニファー・イーリーは、2023年に日本公開の『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』でも存在感を放つ。
性暴力をこれ以上許さないという姿勢が世界的に共有されることになった国際的運動のMeTooが起こったきっかけであるニューヨークタイムズ紙の報道。ハリウッドの超大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインの数十年にわたる性犯罪を告発するもので、巨大な敵に立ち向かった2人のジャーナリストの闘いを追ったのが『SHE SAID/シー・セッド』だ。
ジェニファーは本作で、ハーヴェイの性暴力被害者であり、実名で声を上げたローラを演じた。そんな彼女が若い頃の自分に教えてあげたい1番の変化は、MeTooによって起こったことだと話す。それは、インティマシー・コーディネーターの存在。
映画やドラマ、演劇における性的なシーンで俳優を守るために、現場スタッフや俳優たち全員とコミュニケーションを取り、撮影環境から振りつけまでを考えインティマシー・コーディネーターは、MeTooによって注目が集まり、2018年には米HBOがすべての性的シーンの撮影でインティマシー・コーディネーターを配置すると発表。この職のパイオニアであるイタ・オブライエンはフロントロウのインタビューで、2014年から研究を始めていたと語っている。
イタもインタビューで話していたとおり、インティマシー・コーディネーターに反発する監督はおり、最近でもショーン・ビーンが否定的な発言をして物議を醸したが、多くの俳優は彼女たちの存在に感謝するコメントを残している。ジェニファーもコーディネーターの存在に助けられているそうで、米Colliderでこう話した。
「(若かりし頃の自分に教えてあげたいのは)インティマシー・コーディネーター達の存在です。彼女たちがいたら、私の90年代は非常に大きく変わっていたでしょう。今では、私たちの持つ全米映画俳優組合のカードには、何かをシェアする必要があると感じた時にかけられる電話番号が載っています。コミュニケーション、セリフ、人生のすべての歩みでどれだけ深く入り込んでいるかという感覚、この問題がどれだけ根深いものなのか、暴力をふるう人々の脆弱さにおける力の不均衡がある時にはいつでも。それに関する国際的な認識は巨大だと思います」
インティマシー・コーディネーターの登場によって、全米映画俳優組合のカードに相談先の連絡番号が増えたという画期的な出来事が起こっていたことを明かしたジェニファー。コーディネーターの存在は、彼女たちがいる現場だけでなく、業界全体を変えていた。
ジェニファーは現在50代で、90年代から活動してきたため、その時代を知る女性としては、インティマシー・コーディネーターの存在の重要さを身を持って理解する部分もあるのだろう。
『SHE SAID/シー・セッド』で主演を務めるキャリー・マリガンは、ニューヨークタイムズ紙のジャーナリスト2人は自分たちの記事が社会を変えるとは思っていなかっただろうと話していた。しかし、そんななかでも信念を持って連帯してきた女性たちの行動が、着実に社会を変えている。
(フロントロウ編集部)