『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』でMeToo運動を起こしたジャーナリストを演じたキャリー・マリガンが、ムーブメントが起こる前と起こった後について、思いを語った。(フロントロウ編集部)

MeTooが起こったのは必然“ではない”、キャリー・マリガンの思い

 世界が変わるきっかけとなった、性暴力にNOを突きつけるMeToo運動。それは、2017年にニューヨーク・タイムズ紙のジャーナリストであるミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターが発表した、ハリウッドの超大物プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインによる数々の性暴力の告発記事がきっかけだった。

 そんなジャーナリスト2人の闘いを描く映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』で、ミーガンをキャリー・マリガンが、ジョディをゾーイ・カザンが演じた。米EWによると、2人は撮影開始前にジャーナリストたちと会う機会があり、彼女たちや、ジャーナリストという仕事への理解を深めたそう。

 それぞれ子どもがいながら仕事をしていたり、産後うつを経験していたりしたことから、4人の間ではシスターフッドが生まれたという。一方でゾーイは、ジャーナリストの記事制作というものが、どれだけ証拠と調査結果に補強されていて、法的文書を作るような厳格さであるかを理解して驚いたそう。そしてキャリーは、今では起こることは必然だったように思えるMeToo運動が、そうではなかったことに気がつき、驚いたと語った。

画像: キャリー・マリガン(左)、ゾーイ・カザン(右)。

キャリー・マリガン(左)、ゾーイ・カザン(右)。

 「私が驚いたのは、2022年から振り返ると、MeTooが起こるのは必然のことだったように見えます。彼には責任があり、この素晴らしいムーブメントはそれによって推進されると。しかし必然であった物事は何もないのです。それはまったくもって知られていなかった。ゾーイは(2017年に)あの記事を読んだ時に、『これが何かを変えることはあるのかな』と考えていたそうです。これらのすべてに、必然さはまったくないのです。2人(ジョディとミーガン)は、記事を公開した時にすらそう感じていたと思います。彼女たちの予想は本当に謙虚で、それが持つ影響力が1分でも頭をよぎったことはないと思います。なので、異なる世界だった2017年に自分自身をおいてみるのは興味深いことです。記事によって多くのことが起こりました。そして2人は、それが起こるとは思ってもいなかったんです」

 “人類の歴史を通して、多くの女性が性暴力被害に遭ってきた。2010年代になってもその状況が変わらず、被害に遭うだけでなく、加害者が罪に問われないという状況であれば、人口の半分である女性が黙っているわけがない。” MeToo運動から5年が経った今ではそう思えるが、それが起こるまではそうではなかった。また、今よりもより一層、性暴力を告発する女性のほうが誹謗中傷されていた当時では、ジャーナリストの2人はスクープを取ったという高揚感があったわけでもなく、ただただ女性たちが性暴力に遭い、口を閉ざせられている状況を報道しようと闘ったのだろう。

 何も変わらないかもしれないと感じながら、闘い続けることは簡単なことではない。その事実を考えると、ミーガンとジョディ、そして2人をサポートした組織の強さが感じられる。そしてMeTooが起こったのは、2人が熱心な取材を続け、記事を公開したからだけではない。それによって多くの女性が連帯し、声をあげ、行動したから。ニューヨーク・タイムズ以外のメディアの姿勢も変化したことも大きい。

 2人が発生のきっかけとなったMeToo運動は、まさしくシスターフッドが現実の形になったものだ。そしてムーブメントが起こる前に、2人が続けた取材中にも女性たちの連帯があった。ムーブメントだけでなく、それも同じくらい価値のあること。

 連帯と闘い。『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』では、その点に注目したい。

(フロントロウ編集部)

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