インティマシー・コーディネーターのパイオニアであるイタ・オブライエンに、フロントロウ編集部がインタビュー。全3回で掲載しているインタビューの第2回目では、コーディネーターという職をどう構築してきたのかについてトーク。そして、日本の映像業界へのメッセージもお届け。(フロントロウ編集部)

MeToo運動よりも前から…、パイオニアとしてのイタ・オブライエン

 ドラマや映画、演劇における親密なシーンで俳優を守るために動く専門職のインティマシー・コーディネーター。2017年に世界で大規模発生した性暴力に反対するMeToo運動をきっかけに、インティマシー・コーディネーターを起用する制作現場は非常に多くなっている。

 そして、それが可能だったのは、インティマシー・コーディネーターのパイオニアであるイタ・オブライエンが、2014年からその理論や実践を構築してきていたから。彼女はどのようなきっかけで、どうやってそれを可能にしてきたのか? フロントロウのインタビューで話してくれた。

イタ・オブライエンが始めていた土台作り

画像1: イタ・オブライエンが始めていた土台作り

 「被害者と加害者の力関係について考えていて、その点を探求したいと思いました。そして、もし俳優たちに被害者と加害者を演じさせる場合は、どうすればそれを安全にやらせられるかと考えました。俳優たちが主体的に参加でき、中心にいて、自分を持っていて、お互いのためにいられるための、本当に良い実践の場を持つには、リハーサルにおいてどのような実践と基準が必要なのか?それが私がとくにこだわったところでした。

 そこで、2014年に初めの研究と開発を行ないました。2回目はロンドンにあるバービカンピッツですることになりました。そして当時、(演劇学校の)Mountviewでムーブメント(※)のトップを務める仕事仲間と話していたら、『あなたが構築していることを教えに来て。親密なシーンの指導をしなければいけなくて。生徒たちがみんな劇で親密なシーンをやるよう求められているそうなんだけど、生徒たちにはそれをやるために参考とする骨組みがない。だからあなたがやっていることを教えにきて』と言われました。2015年4月のことです。
 ※制作現場で俳優の動きをアレンジする役割。

 私は、自分自身を失わずに振り付けを考慮するための考え方や方法を教え始めました。そして徐々に、その後の3年間で、俳優やミュージカル俳優、ミュージカルの劇場、修士や学士の授業などで教えました。そして2017年の初めに生徒たちが、これは素晴らしいと言い、業界ではあれ(MeToo運動)が起こった。そこで私は業界の上層部と話し、初めて一緒に仕事をしました。

 PMAと呼ばれる、パーソナル・マネージャーズ・アソシエーションというエージェントの団体に私の理論と実践を説明したんです。2017年6月に、『親密なシーンでどうやったらプロフェッショナルに撮影することができるかという理論を説明します』と話したところ、団体はすぐに、『これは素晴らしい。これが必要です』となり、私はまた上層部と話しました。そしてワインスタインの件が2017年10月に起こりました。そこで私は、『業界がより良く行動したいのであれば、敬意をもってプロフェッショナルに働き、親密なシーンにおいて全ての人が各々の技術をフル活用して働けるようにするためのガイドラインがここにあります』と話しました」

画像2: イタ・オブライエンが始めていた土台作り

ディレクターという肩書きを譲らない監督たち

 彼女の話からは、インティマシー・コーディネーターという職務は、理論の理解と実践のうえに成り立つものであることが分かる。また、インティマシー・コーディネーターという肩書きがどうやって誕生したのかについても、イタは教えてくれた。

 「非常におもしろい経験がありました。私はもともとムーブメント・ディレクター(ムーブメント監督)として働いていたので、同じくこの役割を“インティマシー・ディレクター”と呼び始めたんですね。しかし監督(ディレクター)たちが、『ディレクターは自分だ!』と嫌がったのです。この職種を(肩書から)明確に理解してもらう必要があったのですが、私としてはスタント・コーディネーターと非常に似ていると思ったため、そこでインティマシー・コーディネーターと呼ぶことにしたんです」

イタ・オブライエンから日本の映像業界へメッセージ

 予定時間が過ぎ、インタビューを終えようとしたところ、イタのほうから日本の映像業界について思いがあるとして、メッセージをあずかった。彼女が日本の映像業界について語ってくれたこととは?

画像: イタ・オブライエンから日本の映像業界へメッセージ

 「もう1つ話させてもらいたいことがあります。日本でも監督がインティマシー・コーディネーターをよく扱わないという話がありましたね。日本でも女性の俳優が悪い経験をしたことを明かし、インティマシー・コーディネーターを求めているそうですね。それは本当に良いことです。

 しかし気をつけなければいけないのが、制作現場には、よくトレーニングされたコーディネーターがいなければいけないということです。この職種は複雑で、重要なのはオープンなコミュニケーションです。インティマシー・コーディネーターという仕事について聞いて、(理解したつもりで)現場でそれをやろうとする人がいるかもしれませんが、この仕事は非常に複雑で、きちんと訓練された人が必要です。最低でも2 年のトレーニングが必要です。

 日本の制作現場でインティマシー・コーディネーターという役割を信頼してもらうためにも、正しく訓練されたコーディネーターたちがレベルの高い仕事をこなすことが重要だと思っています。これは私にもできそうだとして、現場に介入していく人がいるかもしれませんが、実際には私には知識があるのです。日本の業界がインティマシー・コーディネーターという役割を正しく理解し、この仕事がどのように現場で有効的に使われるのかを知ってもらえるためにも、今回日本のメディアとお話できたことは嬉しく思います。

 機会をもらえれば、日本に行って、日本のコーディネーターたちと情報や知識の共有も行ないたいですね。私でもいいですし、アメリカやオーストラリアやニュージーランドにも訓練されたコーディネーターたちがいますから、きちんと訓練されたコーディネーターを日本に少しずつ増やすことに繋がるようなサポートを検討できたら嬉しく思います」

 インティマシー・コーディネーターは決して簡単な仕事ではない。彼女の言葉からは、それを発展させてきたパイオニアとしての熱い思いが感じ取れた。

 「もし日本の業界がワークショップを必要とするなら、私はやりますよ」と話してくれたイタ。ぜひとも、どうにか実現してほしいもの。そして彼女は、現時点では焦らずに物事を進めていくことが重要だと語ってくれた。

 「インティマシー・コーディネーターを求める声が世界中で上がっているのは素晴らしいことです。しかし現状は、私たちはトレーニングを進める必要があります。そうすれば骨組みのあるきちんとしたトレーニングが進み、高いレベルでの実践ができるでしょう。何をやっているか分かっていない人がただ現場に介入するよりね」

 イタの言葉をお届けするインタビューの最後となる第3回では、彼女が経験した監督との衝突や、女性の性的快感を描くうえで重要なポイントへの分析をお届け! 彼女がLGBTQ+作品における表現について語ってくれた第1回目のインタビューはこちらから

(フロントロウ編集部)

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