世界を震撼させたリトビネンコ事件がITVXの目玉作品として誕生
2006年に起きたリトビネンコ事件は、ロシアから家族で亡命してイギリス国籍を取得した元FSB(ロシア連邦保安局)工作員のアレクサンドル・リトビネンコが、放射性物質ポロニウム210を飲まされて暗殺された事件。記録されているうちでポロニウム210を使った暗殺は世界初だったこと、ロンドンのあちこちが汚染されたこと、そして、ロシアが秘密裏に一般人さえも暗殺していることが分かったことなどから、世界的な注目を浴びた。

リトビネンコ氏の実際の写真。放射性毒物のせいで髪がすべて抜け落ちた写真は世界に衝撃を与えた。©ゲッティイメージズ
犯人たちが日本食レストランやホテルのバスルーム、バーと、放射性汚染を残しながらロンドン市内を移動していたことは騒ぎとなり、犯人が放射性物質を拭いたとされるホテルのタオルは“史上最も汚染されたタオル” と呼ばれた。また、“ポロニウム レストラン”という検索が激増したため無関係のレストラン“ポロニウム”に人が集まるという奇妙な動きもあった。

犯人たちが立ち寄って汚染が確認された日本食レストランのitsu(イツ)。当時、店舗前には警察官が立っていた。©ゲッティイメージズ
イギリスのスパイ小説家たちも“現実は小説よりも奇なり”という言葉をそのままいく出来事だと目を丸くしたこの事件。リトビネンコ氏の死から数か月後には、ワーナー・ブラザースがジョニー・デップ主演で、コロンビア・ピクチャーズがマイケル・マン監督で、そしてブラウン・エンターテイメント・グループの3社が映画化の計画を同時進行するという、ハリウッドでも映像化バトルが起きて話題に。そして今年で事件から16年が経ったが、今回、イギリスの民放ITVが新配信サービスITVXの目玉ドラマとしてこの事件を題材にしていることに加え、HBOではベネディクト・カンバーバッチ主演で制作計画が挙がっており、未だにこの事件の注目度の高さがうかがえる。
事件の主要人物たちが制作に全面協力! 全4話のドラマ『リトビネンコ暗殺』
ITVが制作したドラマ『リトビネンコ暗殺』の特徴は大きく2つある。

ドラマ『リトビネンコ暗殺』より。デヴィッド・テナントがリトビネンコ氏を演じた。
1点目は、リトビネンコ氏の遺族、事件を担当した捜査官、裁判を担当した弁護士ら、事件の主要人物たちが全員制作に協力している点。リトビネンコ氏の家族は、事件直後に映画製作計画が乱立したときには「話を矮小化し、エンターテイメントに変えてしまうだけ」だと声明で批判していたが、本作では、ジョージ・ケイ(『Lupin/ルパン』の脚本家)とパトリック・スペンス(『ピーキー・ブライダーズ』のプロデューサー)が提案した描き方に納得して協力。当事者たちの協力があったからこそ、細かな事実だけでなく、当事者たちの当時の心境までもを知ることができ、それがドラマ内の貴重なシーンの数々へとつながっている。

登場人物たちの相関図
www.star-ch.jpそして2点目は、当事者のあいだで渡されたバトンがきちんと描かれていること。まずリトビネンコ氏が“自分を殺したのはプーチンだ”と自分自身の暗殺事件を解き、それを受けてイギリス警察たちが“ロシアが言い逃れできない”証拠探しに走り、妻のマリーナがプーチン大統領と闘うことを決意して裁判に進む。『リトビネンコ暗殺』は4話というミニシリーズのなかで、冒頭、中盤、締めに上記の3組の主役をうまく配置した描き方をしている。

ロシアの危険性を告発したリトビネンコ氏。

ロシア流のやり方に痛い目を見ることもあった捜査官たち。

プーチン大統領の宣戦布告して、約10年もの執念の闘いを挑んだマリーナ。
マリーナは本作のスクリーニングイベントで、本作は単なる政治的な物語ではなく、ヒューマンストーリーであり希望の物語だと言ったと英Radio Timesは報じたが、実際にそうだと言える。
死の直前までイギリス警察に情報提供を続けたリトビネンコ氏、ロシアからの心理戦に翻弄されながら非常に難しい捜査をしたイギリス警察、10年以上も暗殺の恐怖と生きながら闘うことをやめなかった妻マリーナ。全員のあいだに共通したのは、“正義が必ず勝つ”という希望。ドラマ『リトビネンコ暗殺』ではそこをしっかり描いている。
そんなドラマがリトビネンコ氏の眠るハイゲート墓地で撮影を行なった2021年9月、欧州人権裁判所がリトビネンコ氏殺害の責任はロシアにあるという判決を下し、ロシア政府に対して、妻マリーナへの損害賠償金の支払いを命じた。ロシアはすべてを否定して支払いを拒否している。

リトビネンコ氏の実際の墓地。©ゲッティイメージズ
「この事件をテレビで放送する必要性がどんどん高まっている」
本作の制作がスタートしたのは、2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事進行する前。今でこそテレビではロシア政府の嘘が報じられて各国がロシアを批判しているが、リトビネンコ暗殺事件が起きた2006年は、イギリス政府もロシアと政治的な親交を深めようとしていた時代。リトビネンコ事件はロシア政府の危険な側面を初めて国際的に見せた事件であり、現代の国際情勢に深くリンクする事件なのだ。
現代においてはウクライナのゼレンスキー大統領がプーチン大統領に立ち向かっているが、約16年前は同じ立場にマリーナがいた。『リトビネンコ暗殺』の脚本家ジョージ・ケイは、ウクライナ戦争によって、「この事件をテレビで放送する必要性がどんどん高まっているように感じられた」と英Metroに語った。
今知りたいリトビネンコ事件を全4話でドラマ化した『リトビネンコ暗殺』はスターチャンネルEXにて12月22日(木)より日本独占で配信中。2月6日(月)23時からはBS10 スターチャンネルにてテレビ初放送される。
<『リトビネンコ暗殺』配信および放送情報>
作品公式ページ
人物相関図
【配信】「スターチャンネルEX」
<字幕版>配信中 ※毎週1話ずつ更新 ※第1話は無料
<吹替版>1月19日(木)より配信開始 ※毎週1話ずつ更新
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【放送】「BS10 スターチャンネル」
<STAR1 字幕版>2月6日(月)より毎週月曜23時ほか ※2月5日(日)吹替版 第1話 無料放送
<STAR3 吹替版>2月8日(水)より毎週水曜22時ほか
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(フロントロウ編集部)