2023年ゴールデン・グローブ賞に女性監督作品が皆無
昨年2021年に人種差別や性差別、接待など様々な問題が発覚し、俳優や業界関係者、企業から“組織体制を変えないかぎり一緒に仕事をしない”とボイコットされたゴールデン・グローブ賞。2022年1月に開催された第79回授賞式はテレビ放送もレッドカーペットもなしという事態になった。
2021年に主催者のハリウッド外国人記者協会(HFPA)は組織改革を行なうことを発表しており、6人の黒人ジャーナリストを含む21人の新会員を増やしたり、ダイバーシティ・アドバイザーを起用したりといった対策を進めた。
しかし、それだけではまだまだ足りないだろう。2023年ゴールデン・グローブ賞のノミネーションが発表されたが、監督賞候補に女性が1人もおらず、ドラマ部門とミュージカル/コメディ部門をあわせた作品賞候補の10作品に女性監督による作品が1作も入っていないことが批判されている。
When female directors miss out on major industry awards recognition, the bullshit excuse is usually “there weren’t any who were worthy enough in contention!” which is NEVER the case but ESPECIALLY so this year. https://t.co/N7zFAuihyK pic.twitter.com/pU0632W7wp
— Zoë Rose Bryant (@ZoeRoseBryant) December 12, 2022
とくに今年は、世界中にMeToo運動を起こした2人のジャーナリストの闘いを描き、高く評価されている『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』の公開もあった。2018年の第75回ゴールデン・グローブ賞授賞式で女性俳優たちが揃って黒いドレスで出席し、「Time's Up(もう終わり)」に賛同する意思を示したことは大きな話題になったが、『シー・セッド』は作品賞にもノミネートされず、マリア・シュラーダー監督の名前もない。本作からノミネートされたのは、助演女優賞のキャリー・マリガンのみ。
また、『アウェイ・フロム・ハー』のサラ・ポーリーが10年ぶりに監督として復帰した『Women Talking(原題)』、ジーナ・プリンス・バイスウッド監督が実在した黒人女性軍を描き、全米で大ヒットした『The Woman King(原題)』、シャーロット・ウェルズ監督による『Aftersun(原題)』、シノニエ・チュクウ監督による『Till(原題)』など、批評家からの評価が高い作品は多くある。
監督賞と作品賞、合わせて15もの枠で女性の名前や作品が1つもないのは、ただただ奇妙。
さらに映画界では、根本的な問題として、女性が監督としてキャリアを築きづらい社会や、女性の監督作品はそこまでプロモーションが行なわれていないのではないかという問題、そして審査員が女性監督の作品、女性がメインの作品、女性が直面する社会問題をテーマにした作品に興味がなく、見ることすらしていないため、候補を選ぶ時に選考にのぼらない可能性といった構造的な差別も指摘されている。(フロントロウ編集部)