日本では出産一時金が増額するが、グローバル基準では?
日本での出産費用は、2020年は平均46.7万円(室料差額等を除いた)。現行の出産一時金が42万円のため、約5万円足りない計算となるとして、2023年4月より出産一時金の額が50万円に引き上げられる。しかし、一時金増額に合わせた産院の値上げも報じられていることに加えて、厚生労働省は出産費用について「年間平均1%程度で上昇している」としており、子どもを産む人々の負担を減らす方法が求められている。
では、世界ではどのような額や制度になっているのだろうか? G7加入国で調べてみた。
世界の出産費用において随分前から世界最高額なのがアメリカ。他国と違って有給での育業が法律で保障されていないことも問題になっているアメリカでは、出産費用は普通分娩で18,865ドル(約250万円)に達している。アメリカは公的健康保険制度がないため、個人で保険に入っていればそこで賄える可能性がある。一方、アメリカのお隣カナダでは60万円前後。ただカナダには公的健康保険制度があるため、自己負担額は0円が基本だという。
イギリスはNHS(国民保健サービス)があるため、私立クリニックを選ばない限り出産費用は無料。イタリアでも出産費用は税金でまかなっているため、私立のクリニックを選ばない限り自己負担額は0円。イタリアへの亡命希望者や難民に情報提供しているRefugee.infoは、「滞在許可証がなくても、すべての女性にはイタリア人女性が妊娠・出産時に受けるのと同じ治療と医療を受ける権利があります。妊娠・出産時に受ける治療はすべて無料です」としている。
ヨーロッパで言うと、世界的に出生率が高いフランスでは病院での出産には公的健康保険が適用され、病院で過ごす最初の12日間の費用はそこで賄えるため、出産費用は結果的に無料となる。私立クリニックなど保険が適用されない場合は約70万円がかかるという。ビスマルクの疾病保険法(1883年)において世界で最初に社会保険を制度化したドイツでは、公的保険制度に入っていれば基本的に自己負担額無しで出産ができるという。
G7諸国では、州ごとに支援制度に少し違いがあったり、個室料金など追加のケアにはお金がかかったりと違いはあるが、アメリカを除きどの国も、出産費用は自己負担額をゼロにするために国レベルで動いている。日本は出産一時金の額が50万円になれば2020年の平均46.7万円を上回るが、東京都の平均53万6,884円より下回ってしまうという問題もあり、産院の値上げ問題などと合わせて、果たして現実的に50万円で足りるのだろうか?
※参考資料:Peterson-Kaiser FamilyFoundation Health System Tracker “Health costs associated with pregnancy, childbirth, and postpartum care”, Remitbee “The Cost of Having a Baby in Canada”, InterNations “Health Insurance and Healthcare in France Explained”, Lindoga “Giving birth in Germany as a foreigner: Everything you need to know”, 厚生労働省 "出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について"
(フロントロウ編集部)