「リーダー的役割」のビジュアルは女性が男性の半分
厚生労働省が公表した 2021 年の労働力人口に関する調査結果によると、労働力人口総数は 6,860 万人で、そのうち女性の割合は 44.6%と、およそ半数が女性で占められている。医療や福祉、小売業など様々な職種での女性の活躍が見受けられる一方で、内閣府男女共同参画局が公表した調査結果によると、企業における女性管理職の割合をみると 13.7%(2022 年)にとどまっている。
リーダー的役割に女性が少ない。1億6,400万点以上のコンテンツを提供する世界最大級のストックフォトサイト「iStock」の中から選ばれている人気のビジュアルにもその傾向が見受けられるそうで、「人々のリーダー的な役割が描かれているビジュアルのうち、女性が描かれているものは男性が描かれているもののわずか半分という結果が出ています」と、iStockを運営するゲッティイメージズ ジャパン株式会社は明かした。
「反対に、“主婦”や“親”といった家庭的な役割が描かれているビジュアルでは、女性が描かれているものは男性が描かれているものの 2 倍多いことが分かっています」と同社はしており、男女ともに社会で活躍しているにもかかわらず、「家庭的役割=女性」というステレオタイプがいまだに根強く、さらに、「リーダー的役割=男性」というイメージがビジュアルを通して拡散され続けているのが現状。
少子化の背景にジェンダーギャップ、その背景にジェンダーロール
国連のジェンダーギャップ報告書では、日本では政治家や企業の役員など指導的立場にある女性が少なく、146カ国中116位、主要先進国の中で最低のジェンダーギャップとなっている。日本で管理職に就く女性の割合が低い理由の背景には、“家庭のことは女性、仕事のことは男性”というジェンダーロールのステレオタイプが未だに根強く、それが、育児休暇やリモートワークといった福利厚生の整備・普及のハードルになっていることが理由のひとつとして挙げられている。
例えば、日本の育児休暇制度は制度としては世界でもトップクラスと言われているが、厚生労働省によると、男性の育児休暇取得率は上昇傾向にあるものの1割程度(2021 年年度)にとどまっている。つまり、子どもが生まれると育児は女性に一任されることが多く、それが女性の仕事やキャリアアップの機会を阻む。そしてそういったハードルが、子どもを作らないという選択肢につながり、少子化が悪化する。子どもを持つ持たないは個人の自由だが、本格的に少子化対策に取り組むためには、根本にあるバイアスを取り除くことも必要なのだ。
企業やメディアはジェンダーギャップを考慮したビジュアル選択を
では、ジェンダーギャップの悪化に貢献しないビジュアル選択とはどのようなものなのか? ゲッティイメージズでは、女性をビジュアルで描く際に以下のようなチェックポイントを公開している。
・あらゆるジェンダーアイデンティティの女性を検討したか。
・あらゆるボディサイズの女性を活き活きと表現できているか。
・男性と女性を描く際に、それぞれの役割に偏見がないか。
・障害のある女性が社会で活躍している様子を表現できているか。
・40 歳以上の女性を活き活きと表現できているか。
・デジタル加工をしていないリアルなビジュアルかどうか。
企業やメディアでは、ジェンダーギャップを解消するための取り組みや会話は近年増えている。今回のデータは、その取り組みは文字やメッセージや商品だけでなく、ビジュアルコミュニケーションを通してもできることだと分からせてくれる。(フロントロウ編集部)