性的なシーンが多いことで知られるドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』。しかしその描写やシーンの撮影環境に対しては、多くの批判も。マンス・レイダーを演じたキアラン・ハインズのほか、デナーリス役のエミリア・クラークや、カール・ドロゴを演じたジェイソン・モモアなどの意見も振り返る。(フロントロウ編集部)

キアラン・ハインズ、『GoT』のセックスはビジネス

 2011年から2019年にかけて放送され、世界的大ヒットを記録したドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』。多くのキャラクターたちが登場する群像劇で、様々な女性像が描かれたことは評価される一方で、物語の進行には不必要なヌード/セックスシーンや、その撮影環境の悪さは批判された。そんなシリーズで、シーズン3からシーズン5にかけてマンス・レイダーを演じたキアラン・ハインズが、英The Independentのインタビューで同作の性的描写について振り返った。

画像: キアラン・ハインズ、『GoT』のセックスはビジネス

 「性的なことの多さにはうんざりしていました。なぜならそれによって、ストーリーの政治的な部分から焦点を奪ってしまうからです。しかし製作陣の視点からすれば、あれはビジネスだったんでしょう」

 個人的には性的なシーンの多さにうんざりしていたが、それは視聴数というビジネス的視点から撮られていたのだろうと指摘したキアラン。つまり本作において、ビジネスのために女性の体が使われていたと言えると考えているよう。

 しかしその後、本作を制作したHBOは、すべての性的なシーンの撮影において俳優を守る専門家インティマシー・コーディネーターを起用することを決定した。キアランはインティマシー・コーディネーターについて理解できないとしたが、彼の娘であり、ドラマ『ノーマル・ピープル』や『デリー・ガールズ』などに出演してきた俳優のイーファ・ハインズに意見を聞いているそうで、若い世代に学ぶ姿勢も見せた。

 「私とってそれ(インティマシー・コーディネーター)は奇妙なことに見えるので、娘に聞きました。私はその世代ではないので。性的なシーンのように一緒に作り上げるシーンでは、私たちはただ話し合いながら作ってきました。私たちがどう物語を伝えるかということですから、突然インティマシー・コーディネーターがどこにでもいることは理解できませんでした。俳優としては、自分の魂を自分が行なっていることに捧げるだけです。しかしイーファは、『ノー。それ(インティマシー・コーディネーターがいること)は素晴らしいことだよ。なぜなら自分の感情的文脈はひとまず置いておけて、バレエのようにはならないけど、性欲によるものにもならない』と話していました」

デナーリス・ターガリエン役エミリア・クラークの思い

 キアランは『ゲーム・オブ・スローンズ』の性的なシーンは「ビジネスだった」とした。つまりそれはストーリーを語るうえで必要なのではなく、女性の裸やセックスシーンなどを見たがる人を呼び寄せるために撮られたということ。事実、その搾取の思考はあったと見られる。

 デナーリス・ターガリエンを演じたエミリア・クラークは2019年に、裸になりたくないという思いからトイレで泣いていたと明かしており、制作陣に撮影について自分の要望を伝えた時には、「『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンをがっかりさせたくないだろう?」と言われたことを告白している。

画像: デナーリス・ターガリエン役エミリア・クラークの思い

 しかし最初は泣いて我慢していたエミリアも、キャリアが出来上がってきた頃からは「ファック・ユー」と言い返せるようになったという。

 一方で彼女は2017年に、ヌード/セックスシーンがなんでもすべて批判されることについては苦言を呈していた。しかし、ストーリーを語るうえで必要なヌードシーンにもかかわらず、ストーリーではなく自分の体についてコメントされることには嫌気が指すとも話した。

カール・ドロゴ役ジェイソン・モモアの後悔

 エミリアが演じたデナーリスの夫カール・ドロゴを演じたジェイソン・モモアは、現場でできるだけエミリアに負担がかからないように配慮し、スタッフに指示を出すこともしてくれていたそうで、エミリアは「ジェイソンは優しくて、気を使ってくれて、私を人間として心配してくれた」と語っていた。

 一方で、原作では合意ありのセックスだった彼とデナーリスのセックスシーンが、ドラマでは合意なし、つまりレイプシーンに変更された。このシーンについてジェイソンは、「もう二度としない」としたうえで、「俺たち(俳優)にはどうすることもできない。プロデューサーがいて、脚本家がいて、監督がいて、『これは今の時代にはふさわしくないし、政治的な状況にも合わないからやらない』なんてことはできない。それはありえないことなんだ」と説明し、後悔をにじませた

画像: カール・ドロゴ役ジェイソン・モモアの後悔

ラムジー・ボルトン役イワン・リオンの苦悩

 レイプシーンに後悔がある俳優はほかにもおり、シリーズきってのサイコパスと言われるラムジー・ボルトンを演じたイワン・リオンは、ソフィー・ターナーが演じた妻サンサ・スタークをレイプするシーンについて、「現実に起こりえる状況のシーンにいるのは、対処するのが本当に難しい。あれは本当に、本当に酷い日だった」と話す。

 「あれは酷かった。誰もあそこにいたくなかった。誰もあれをやりたくなかった。でも、それがストーリーを語るものであれば、正直に語らなければいけない」という考えから耐え、演技をしたが、「僕のキャリアの中で最悪の日だった」コメントしている。

画像: ラムジー・ボルトン役イワン・リオンの苦悩

ミッサンデイ役ナタリー・エマニュエルの記憶

 裸にならずとも、露出が多い衣装だったミッサンデイ役のナタリー・エマニュエルは、撮影現場において、「1人のエキストラがそれについてコメントしてくるという出来事がありました。典型的なやつをね」明かしている。しかし、そんな彼女と同じ苦悩を経験していたエミリアが、「すぐに私の味方になってくれて、対処してくれた」という。

画像: ミッサンデイ役ナタリー・エマニュエルの記憶

 問題は多かった『ゲーム・オブ・スローンズ』だが、そのスピンオフドラマである『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、『ゲーム・オブ・スローンズ』の反省をきちんと次に生かした作品になっているとして評価されている

(フロントロウ編集部)

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