サステナブルなコスメを評価する「サステナブルコスメアワード」を知っている?サステナブルなコスメを選ぶヒントにもなるそのアワードについて、審査員長を務める岸紅子さんにインタビュー。(フロントロウ編集部)

サステナブルコスメアワードとは?

 近年コスメを選ぶ指標としてよく耳にするコスメアワード。ベストコスメを意味する“ベスコス”という言葉は今や当たり前となっている。そんなコスメアワードでありながら、環境や人に配慮したサステナブルな製品のみを対象に審査するのが「サステナブルコスメアワード」。

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 「サステナブルコスメアワード」は、国内初であり唯一のSDGs視点での評価審査基準を制定したアワードとして2019年に発足。わずか数年で、サステナブルコスメ業界の中では“アカデミー賞”と称されるほど憧れの称号となってきている。
※化粧品及びファイントイレタリー分野における

 そんな「サステナブルコスメアワード」について、審査員長を務めるウェルネスプロデューサーの岸紅子さんにインタビュー。発足の経緯や審査、現状の課題について聞いてみました。

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サステナブルコスメアワード誕生のきっかけ

 「サステナブルコスメアワード」誕生のきっかけは、環境省の森里川海アンバサダーを務める岸さんが毎月参加しているというアンバサダー会議。

 岸さんは、「SDGsが重要なのは多くの人が分かっているけれど、あまりに項目が多すぎて難しく、身近に感じにくいと思っていて。そこで会議の議論の中で、消費財で分かりやすく示せる基準があればいいんじゃないかと発案したのが最初のきっかけでした」と説明。

画像: サステナブルコスメアワード誕生のきっかけ

 その後基準づくりをするべく話を進めるなかで気づいたというのが、環境への配慮を証明する認証の多くが、エアコンや冷蔵庫、PC、はたまた住宅などの10年以上もしくは一生に1度しか購入しないような大きなものについての基準であること。岸さんは、「(大きな買い物なので)購入するときは意識するかもしれないけれど、日々生活の中で見かけることはないですよね」と話し、毎日触れるものや見かけるものの中で何か基準づくりができればと考えるようになったという。

 そして日々生活の中で目にするコスメであれば、こういうものを選ぶことがエコでありサステナブルであると実感しやすいのでは?と考え、コスメでサステナビリティの基準をつくることが決定。「サステナブルコスメアワード」が発足した。

表彰されるのは“人にも地球にもやさしいコスメ”

 「サステナブルコスメアワード」は、「賞賛と応援でコスメをやさしく」をコンセプトに“人にも地球にもやさしいコスメ”を表彰するコスメアワード。

画像: 2021年度の授賞式の様子

2021年度の授賞式の様子

 そこに込められた想いについて岸さんは、「サステナブルコスメアワードは、人にも地球にもやさしくつくられているものを評価しているのですが、そういった製品はただ製品であるというだけではなく、いろんな意義や物語を持っています。だからこそ一緒に暮らすことで、1人1人の生活の質を高めてくれたり、ちょっと楽しくなったりすると思うんですよね」と説明。そんな製品に出会うための道しるべとして、「サステナブルコスメアワード」が存在している。

 それだけでなく自然と製品、そして自分とのつながりを感じてほしいという想いも。岸さんは、「自然の恵みから製品が生まれて、そこから人の想いが込められた製造工程を経て、わたしたちの手元に来て、そしてまた自然に戻っていくというような繋がりを知ることってすごく大事だと思っていて、そのためにサステナブルコスメアワードをつくったという意味もあるんです」とその想いを明かした。

選ばれている製品は“エコ”なものだけじゃない!

 “人にも地球にもやさしいコスメ”を表彰する「サステナブルコスメアワード」の評価基準となるのは、あくまで持続可能な開発目標であるSDGs視点をベースとしたもの。そのため、いわゆる“環境への配慮”だけが評価されるわけではない。

画像: 選ばれている製品は“エコ”なものだけじゃない!

 たとえば地域の雇用創出や地方経済の再生と活性化に貢献している製品を「地方創生部門」として表彰したり、パッケージに点字を記したユニバーサルデザインを導入している製品を「インクルーシブデザイン部門」として表彰したりと、さまざまな方向性での取り組みを評価。そのほかにも「ダイバーシティ部門」といった部門も。

 この意味について岸さんは、「やっぱりコスメは誰もが楽しめるものだし、誰もがアクセスできるものであるべきだし、そうあって欲しいと思っています」と話す。

2030年には終了することを宣言

 「サステナブルコスメアワード」の特徴のひとつが、終了する期限があらかじめ決まっていること。その期限は、SDGsの達成期限でもある2030年。

画像: 2030年には終了することを宣言

 なぜ期限があるかというと、2030年には“人にも地球にもやさしいコスメ”が当たり前の時代になっているはずという想いがあるから。岸さんは終了宣言をしている理由について、「SDGsの達成期限までに業界がそういう状態になってなかったら、それはもうある意味、地球に住む資格もないから」と笑いながらもきっぱり。業界への変革を求めるがゆえの終了期限であるよう。

どんな風に審査されているの?

 コスメアワードというと、気になるのが審査の裏側や基準。「サステナブルコスメアワード」は、SDGs視点をベースとした評価基準をもとに、成分をはじめ原料の生産、製造、販売、流通、消費、そしてさらには廃棄といったあらゆるプロセスを含めた製品のライフサイクル全体を通じて評価・審査・表彰。

画像: 2022年度の授賞式の様子

2022年度の授賞式の様子

 サステナブルコスメ業界の“アカデミー賞”と称されるだけあって、審査では、多角性・中立・公平であることが重視されている。岸さんによると、この審査は忖度ナシの“リアルガチ”なもの。

加点ポイント制と審査員の体当たりテストでガチ審査

 審査について岸さんは、「1次審査は、エントリーシートによる書類審査です。記述式と選択式があります。特に選択式シートが特徴的で、原料生産から廃棄までにおける80項目もの質問が記載されています。そして上位50位までがノミネートとして選出されます」と説明。加点ポイント制による審査で50位に残った製品だけが、晴れて2次審査へ。

画像1: 2次審査の様子

2次審査の様子

 2次審査で行なわれるのは、実際に使って試す官能テストと呼ばれるもの。これについて岸さんは、「審査員たちで、丸一日かけてすべての製品を使っていきます。製品によっては、それぞれが家に持ち帰って試すものもあります」と説明。この審査では五感で感じる実際の使用感と、1次審査で評価された製品の背景を審査員が総合的に評価して審査の点数とコメントを記入。このような審査を経て、授賞する製品が決まっていくという。

画像2: 2次審査の様子

2次審査の様子

多種多様な視点を持つ審査員による審査

 さまざまな視点を持つ人が審査していることも「サステナブルコスメアワード」の特徴。審査員長の岸さんや事務局長の小原壮太郎さんなどの発起人であり環境省「つなげよう支えよう森里川海プロジェクト」アンバサダーの有志のほか、環境・メディア・化粧品など多分野からの専門家を審査員として招いている。さらには環境活動を行なう学生も事務局スタッフ兼審査員に起用。世代や業種を超えた多様な人たちが審査に参加している。

 その多様性は審査結果にも表れていて、たとえば2022年度より新設された「審査員賞ニューフェイス部門」では、聖徳大学附属取手聖徳女子高等学校の学生たちが作り上げた、ひまわリップ「ひまわリップ保湿リップバーム」が授賞した。

画像: 多種多様な視点を持つ審査員による審査

ここ数年でサステナブルコスメ業界にも変化が

 2019年から現在まで審査を続けてきた中で感じる業界の変化について聞いてみると、岸さんが語ったのがストーリー性の高まり。

 岸さんは、「以前はオーガニックコスメやサステナブルコスメというと、内容物がナチュラルであることを謳ったものや、容器のエコ化が多かったように思いますが、最近だと地域で余った農産物を使っていますだったり、廃棄される何かを使っていますだったりといったものが増えています」と説明。徐々にさまざまな意味合いを持たせながら、“幸せの輪”のようにリーチが広くなってきていると明かした。

画像: ここ数年でサステナブルコスメ業界にも変化が

 さらにそれだけでなく、たとえば竹が増えすぎている地域ではそれを使ってなにか製品をつくるなど、地域で問題になっていることや困っていることから着想を得て製品開発をスタートするといった動きも活発に。加えて障害者施設に作業を依頼したり、地域の人を積極的に雇用したりと、地方創生やダイバーシティといった意味でもポジティブの輪が拡大しているそうで、1つの製品のなかでさまざまな取り組みが詰まっていることが多いという。

 それはエントリーシートを見ても伝わってくるそうで、岸さんは「本当にいろんな要素を内包しながらものづくりがされているなっていうのを最近とくに感じていて。次はどういう組み合わせが見れるのかなという楽しみもあります」と話した。

2030年の終了までにはまだまだ課題も

 ポジティブな変化も多い一方で、まだまだ課題も多いというサステナブルコスメの業界。2030年の終了まで残り7年ほどとなっている今、どんな課題がありますか?と聞いたところ、岸さんが挙げた課題のひとつがコスメには欠かせない容器の問題

画像: 2030年の終了までにはまだまだ課題も

 売物である以上、製品として成り立つかどうかが第一条件だと話す岸さんは、「そこで難しいのが容器なんです。生分解される素材でつくられているからといって、中身の安全性が損なわれてしまっては意味がないですよね」とジレンマを明かす。

 つづけてプラスチックひとつとっても、考え方を柔軟にしていく必要があると説明。岸さんは、「プラスチックであることが完全に悪なのかというと、安全に製品を届けるうえではなくてはならない素材だったりもするわけです。バイオプラの比率を高めたりリサイクルプラを使ったり、肉薄化したり過剰包装をやめたりしながら各社頑張っていますがゼロにはなりません」と話し、プラスチックが欠かせない場合は、それ以外のところでサステナビリティを担保していくカーボンオフセットの考えを取り入れるなど、トータルに考えていく必要があると話した。

 NPO法人日本ホリスティックビューティ協会の代表であり、「サステナブルコスメアワード」の審査員長を務める岸紅子さんに聞いた、「サステナブルコスメアワード」のこと。アワードの授賞製品は公式サイト等で見ることが可能。今サステナブルコスメにはどんなものがあり、つくり手はどんな努力をしているのかを知るとともに、使ってみたいアイテムも見つけてみては。

岸紅子さんプロフィール
・NPO法人日本ホリスティックビューティ協会代表理事
・環境省「つなげよう、支えよう森里川海」アンバサダー
・サスティナブルコスメアワード審査員長
自身や家族の闘病経験をもとに、2006年にNPOを設立。多数の美容・健康・医療関係者とともに女性の心と体のセルフケアの普及につとめ、資格検定や人材育成を行う。また、自らも自然治癒力や免疫力を引き出すためのウェルネス講座を幅広く実施。環境アクティビストとしても、ライフスタイルを通じた人にも地球にも優しいSDGsアクションを多く提言している。パーマカルチャーデザイナー、発酵食スペシャリスト、味噌ソムリエの一面も持つ。
NPO法人日本ホリスティックビューティ協会:http://h-beauty.info/

(フロントロウ編集部)

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