電力会社が「抗議のため」に電力供給を拒否か、理由は「年金」
毎年5月に2週間弱フランス・カンヌで開催される、カンヌ国際映画祭。第76回となる2023年は5月16日~27日に開催される予定で、日本からも坂本龍一が音楽を手掛けた是枝裕和監督の『怪物』や北野武監督の『首』が出品され、話題を集めている。
そんなカンヌ国際映画祭が電力危機に直面している。理由は、フランスで起きている、年金制度改革をめぐる混乱。
フランス政府は年金の受給開始年齢の引き上げを進めようとしており、フランスの憲法院は4月14日、政府が提案した年金制度改革の法案について合憲と判断。法案が施行されれば、年金の受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げることになる。
この改革は労働組合から猛反発を受けており、各地でデモに発展している。マクロン大統領は国民の怒りをなだめるために「100日の行動計画」を公約したが、これに対してエネルギー連盟は「100日間の行動と怒り」を発表。その一つがカンヌ国際映画祭への電力供給の停止だ。
停電の脅威はカンヌ国際映画祭のほか、モナコグランプリや全仏オープンなどのイベントにも影響を及ぼす恐れがある。エネルギー連盟の事務局長であるファブリス・クドゥール氏は、電力供給停止の目的は「イベントを妨害することではなく、抗議のためのプラットフォームを持つこと」だとしている。
フランス政府が「年金改革」を進める背景とは?
マクロン大統領が年金制度改革を推し進める背景には、年金財政の苦しさがある。フランスの年金受給年齢は62歳と、近隣諸国と比較してかなり低い。数十年前よりも寿命が延びており、他国と同じく高齢者社会に対応しようとするなか、年金受給年齢が低いままだと、国の財政は圧迫される。この改革が達成できれば、2030年までに赤字が解消すると政府はしている。
フランスでは2019年にも受給開始年齢を引き上げる年金制度改革が進められていたが、市民の抗議運動により途中で断念することとなった。この時の抗議運動は80万人もの人が参加し、警察との衝突を含む大規模なものだった。
(フロントロウ編集部)