【見どころ解説】UKで大ヒット！ 20代女性の青春ストーリー『ミレニアル・ガールズ～ロンドン無計画ライフ～』

UKで話題のドラマが上陸！ 英人気コラムニストのベストセラーが原作

　『ミレニアル・ガールズ～ロンドン無計画ライフ～』は、イギリスで恋愛や人生相談のコラムニストをしていたドリー・アルダートンの自伝『Everything I Know About Love』を全7話でドラマ化した作品。

　2010年代を舞台に、20代のミレニアル世代4人の恋愛、友情、セックス、仕事などをテーマに描いた原作は、イギリスとアメリカでベストセラー入り。Elleの「世界を変える女性100人」やForbesの「30歳以下の30人」に選出された原作者のアルダートンは、女性たちの経験を代弁するアイコンとなった。

　その社会現象的なヒットに目をつけたのが、『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ラブ・アクチュアリー』といった、イギリスを代表するロマコメ作品を多く手がけるワーキングタイトル社。全7話のドラマとしてBBC Oneで放送したところ、Rotten Tomatoesで批評家から96%、IMDbでは7.6点の高評価を獲得。早くもシーズン2への期待が高く、アルダートンは続編の製作に意欲的な発言をしている。

レトロ懐かしい2012年に、20代女性4人がロンドンで自分探し

　ドラマの舞台は2012年ロンドン。ジャスティン・ビーバーとセレーナ・ゴメスは一度も破局しておらず、夏にはロンドンオリンピックが開催され、世界中がPSYの「江南スタイル」のダンスに挑戦していた。主人公4人が暮らすカムデンは、パンクキッズ、ジャズアーティスト、アートコレクターなど、多様な顔ぶれが集まるサブカルの聖地。歌手のエイミー・ワインハウスが2010年から亡くなるまで暮らしていた人気エリアであるカムデンは、20代を自由かつワイルドに楽しみたい主人公たちにぴったりの場所。

　そんなカムデンでルームシェアを始める主人公たちは、最も破天荒なマギーを中心に、クラブやパブでのパーティーに明け暮れる。2012年は、出会い系アプリTinderがロンドンで大流行するまでまだ1年ほどあり、出会いの場はバーやクラブが中心。本作の主人公も、夜に出かけて、酔って、起きたら一生連絡しないと言っていた相手が隣に寝ている…なんていうことも。

　さらに2012年は、イギリスでもインスタグラムの人気に火がつきはじめ、キアラ・フェラーニのようなファッションブロガーが注目され始めた、インフルエンサーカルチャーの黎明期。20代にとってチャンスに溢れた時代でもあった。

　ネットの発展によってチャンスは増大しており、劇中でも、マギーがブログをやったり、オンラインでライターの仕事に申し込んだりして、将来を探そうとする。とは言え、学生を終えて社会人になる時期は複雑。何をしていいのか、そもそも何がしたいのか分からない。4人の中で情熱を注げるキャリアを見つけているのは、教師のネルだけ。マギーとバーディは職探し中で、アマラはダンサーの夢を諦めて不動産業界で働いている。

　そんな4人の友情、恋愛、自分探しは、笑いの連続。時には自分の黒歴史と重ねて古傷が痛むかもしれないが、そんな共感性が、複雑で失敗が多い20代の青春劇は最高のエンターテイメントへ昇華させている。ラジオやテレビから流れる音楽、街並みやファッションなどで2012年にタイムスリップして、20代の青春ストーリーを楽しんで。

「この作品は絶対にあなたを笑わせると約束します。そして最後の2話まで観てくれれば、きっと泣けます。傷心と、冒険と、汚さと、楽しみがある作品です。（メインキャストの）ベル・パウリー、エマ・アップルトン、マルリ・シウ、アリーヤ・オドフィンにも恋をすると思います」―　原作者兼プロデューサーのドリー・アルダートン、インスタグラムで語って

女友達って最高！と思わせてくれるシスターフッドドラマ

　本作の原題の意味は、「私が愛について知っているすべて」。ドラマは主人公たちがパートナー探しをする恋愛ドラマのように見えるが、作品の核にあるのは友情。

　『ミレニアル・ガールズ～ロンドン無計画ライフ～』で描かれるのは、何でもオープンに語り合え、家族よりも応援してくれて、くだらないことで何時間も笑えるタイプの友情。観終わったあとに、自分史上最高のガールズナイトを思い出させる余韻があり、“やっぱ友達っていいな”気分にするパワーがあるドラマだ。

　キャストはみんな魅力的だが、お酒や男性を前にすると意思のパワーがゼロになるマギー（エマ・アップルトン）と、仕事の面接にパワポのプレゼンテーションを用意するほどマジメで慎重派のバーディ（ベル・パウリー）は、どんなストーリーだろうと全話見ていられるほど最高のペア！ ただ、10代の頃からの大親友である2人は、バーディに彼氏ができたことで変化する。どんな時も頼れる相手だった親友の時間が彼氏にまわり、突然の“独り立ち”に怯えるマギー。

　マギーを演じるエマ・アップルトンは、ドラマ『ウィッチャー』で知られるモデル出身の俳優。ファッションウィークやテニスの英オープン、女性のトークイベントなど、UKセレブが集まるイベントではよく見かける若手アイコン。また、バーディを演じるのは、157センチという小柄ながらスクリーンをいっぱいにする存在感で、『マイ・プレシャス・リスト』や『メアリーの総て』といった映画や『ザ・モーニングショー』のようなドラマで活躍するベル・パウリー。イギリスが誇る演技派若手女優の2人は、今作が現時点でのキャリアの代表作と言ってもいいほどの演技を見せている。

　最高のシスターフッドを描きながら、親友を取られちゃうという疎外感や、大人になるにつれて若い頃の友人関係は変わってしまうのか？ といった永遠のテーマを探求する本作。マギーとバーディのコミカルなやり取りで笑わせながら、2人の友情の行方を全7話で描いている。