カンヌが最も泣いた映画『CLOSE/クロース』7月14日(金)全国公開
前作『Girl/ガール』にてバレリーナを夢見るトランスジェンダーの少女の苦悩と葛藤を描き、第71回カンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)や国際批評家連盟賞、LGBTをテーマにした作品に贈られるクィア・パルムを受賞した若手実力派監督ルーカス・ドン。そんな監督が、10代前半に抱いた葛藤や不安な想いなど、自身が思春期に経験したことを基に映画化した長編2作目『CLOSE/クロース』がついに7月14日より日本でも公開となる。
色鮮やかな花畑や田園を舞台に、無垢な少年に起こる残酷な悲劇と再生を描いた本作は、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界各国で上映され、海外の映画批評サイトRotten Tomatoesでは94%フレッシュ(2022.5.31時点)と高い満足度を記録。第75回カンヌ国際映画ではグランプリを受賞し、第95回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされるなど、各国の映画賞で47受賞104ノミネートを果たした。
主人公レオと幼馴染レミを演じるのは、本作で俳優デビューとなるエデン・ダンブリンとグスタフ・ドゥ・ワエル。子どもでもなく大人でもない10代特有の揺れ動く心情を表現した2人には、世界中から賛辞が贈られている。「感情を揺さぶるあまりの強さに打ちのめされた」(Screen)、「涙なしでは見れない傑作」(Los Angeles Times)などと、多くの映画人や観客を魅了した本作。映画ファンから絶大な支持を得る気鋭の映画製作・配給スタジオ「A24」が北米配給権を獲得したことでも話題になった。
他者が親密性を規定する怖さ、ルーカス・ドン監督が語る自身の過去
主人公のレオとレミは24時間ずっと一緒にいる家族のような関係性。しかし13歳になり中学校という集団の中に入った途端、親密過ぎる2人の関係に対し、他者からの余計な詮索が入るようになっていく。入学初日、ぴったりとくっついて座る2人をみたクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。「親友だから当然だ」とむきになるレオ。その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。毎日一緒に登下校をしていたにもかかわらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。2人はその場で大喧嘩に。その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、課外授業にレミの姿はなかった。心ここにあらずのレオは、授業の終わりに衝撃的な事実を告げられる。それは、レミとの突然の別れだった。移ろいゆく季節のなか、自責の念にかられるレオは、誰にも打ち明けられない想いを抱えていた…。
ドン監督は本作について、「この映画は自分にとっては愛についての映画だと思っています。ただその愛というのが必ずしも、名前のある愛ではなく、ラベルとかレッテルなどとは関係のない愛を描いた映画だと思っています。人と人とが親密なシチュエーションにある場合、そこにセクシャリティーが関与すると、我々がなかなかそれをそういう風にみることができない、あるいは親密であるということについて恥ずかしいと思う人が出てきます。本当は繋がりはとても大切で力があるので、我々はむしろその力を大事にするべきだと思っています」とコメント。
続けて、「ただ特に仲の良い2人組の男性がいた場合、親密性を恋愛か友情かで二分されてしまうことがあるんです。僕を含めたわたしたちがある種のそういった眼差しを持つように社会によって教えられてしまっていると思うんです。だからこの映画というのは、レオやレミという少年たちのミクロのアイデンティティがどんなものかについての映画ではなく、むしろそういった眼差し、私たちがどうしてそういう風に(彼らを)見てしまうのかということについての映画だと思っています。そして同時に親密さの欠如の映画だとも思っています。社会が彼らが誰であるかということを勝手に理解しようとしてラベルを貼ってしまう、それによって親密さが欠如してしまうということを描きたかったです」と、自らの経験と共に話した。
「この映画がクィア映画かと聞かれたら、それはそうですと答えます」
そして監督は、「クィア映画とは」というテーマにも触れた。
「この映画がクィア映画かと聞かれたら、それはそうですと答えます。僕にとってのクィア映画というのは、ジェンダー、セクシャリティーというものに対し、役割やルール、そして振舞いなどについて、勝手に紐づけられてしまうことに関しての映画が全てクィア映画だと思っています。ただ同時に、本作で描かれている主人公の傷跡というのは、全ての人が抱える傷跡でもあるとは思っています。すごくパワフルで親密で自由だったものが、突然自分の傷になって、心を痛めてしまう。人によっては壊してしまったことへの罪悪感を抱えて生きている方もいると思うんです。だからそういったことも含めて、この映画はクィア映画でもある、でもクィア映画だけではないと思っています」。
ルーカス・ドン監督最新作『CLOSE/クロース』は7月14日(金)より全国公開。