ハリウッドが昔のような映画を作らなくなったのは? マット・デイモンがその理由を、映画業界の仕組みを説明しながらわかりやすく解説した。(フロントロウ編集部)

DVDが売れなくなって全てが変わった

 ハリウッドが昔のような映画を作らなくなっている。“昔のような映画”がどのような映画を意味するかは人によって異なるだろうが、そう思う人は一定数いるようで、人気YouTube番組『Hot Ones』に俳優のマット・デイモンが出演した際には、「『もう自分向きの映画は作られていない』という思いは、多くの視聴者が共有することだと思います。約30年も映画作りをしてきたあなたとしては、その意見の背景にある、ハリウッドにおけるマクロ的な状態は何だと思いますか?」という質問が飛んだ。

画像: DVDが売れなくなって全てが変わった

 これについてマットは、問題はDVDのセールスが下がったことにあると答えてこう説明した。

 「DVDは我々の収益の大きな部分を占めていました。しかしテクノロジーの発展で、それが廃れてしまった。我々が昔作っていた映画は、劇場で全収益を稼がなくても良かったわけです。劇場の公開から6ヵ月後にDVDのリリースがあって、そこでまた一定の収益を得られますから。映画を再公開するようなものです。それがなくなったとき、我々が作ることができる映画に変化が現れました。『恋するリベラーチェ』という映画を作ったときには、配給会社の重役に、作るのに2,500万ドル(約35億円)かかると言われました。映画をマーケティングするための印刷と広告、P&Aと呼びますが、P&Aにもそれだけかかると言われました。つまりその時点で5,000万ドル(約70億円)が必要になる。さらに収益の半分はエグジビターと呼ばれる映画館のオーナーたちに渡す必要があります。つまり私は、利益を得る前に1億ドル(約140億円)を作る必要があるのです。2人の人物のロマンスについてのストーリーで(劇場だけで)1億ドルを作るのは、素晴らしい皆さんに出演して頂いたとはいえ、もの凄い賭けですよね。僕の大好きな映画であり、僕の生活の糧となってい映画が作られていた1990年代とは状況が違うんです」

 マットが例として挙げた『恋するリベラ―チェ』は、マイケル・ダグラス演じるリベラーチェとマット・デイモン演じるスコット・ソーソンのロマンスを描いた2013年の映画。アメリカでは劇場公開はスルーしてHBOで放送され、プライムタイム・エミー賞を受賞した。

 2019年のCNBCの報道によると、アメリカにおけるDVDのセールスは2000年代後半から減少を開始し、2005年に163億ドルあったDVDの総売上は、2018年には22億ドルへと減少。2019年までの13年で86%減少したという。CNBCはその原因について、不況、映画のオンデマンドやデジタルコピーを購入する顧客の増加、ストリーミングサービスの台頭をあげている。

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