クィアの愛と解放を表現したMVが大絶賛を浴びている、トロイ・シヴァンの新曲「RUSH」。この夏最高の一曲と称賛される一方で、MVに登場するのはスリムあるいは筋肉質な人ばかりで「ファットフォビック(肥満嫌悪)だ」と批判する声も。寄せられた批判に対し、トロイ本人のほか、ほかの人気シンガーも反応している。(フロントロウ編集部)

トロイ・シヴァンの5年ぶりの新曲「RUSH」が話題

 オーストラリアのシンガー・俳優として活躍するトロイ・シヴァン。自身のYouTubeチャンネルでゲイであることをカミングアウトした過去を持つ彼が、2018年にリリースした『Bloom』以来5年ぶりとなるニューアルバム『Something To Give Each Other』からの先行シングル「RUSH」をお披露目。

 7月13日に投稿されたMVは、赤くなったお尻を叩くというユニークな映像からスタートし、パシンという小気味よい音と共に音楽が流れ始める。全体的にセクシーで官能的な雰囲気となっており、人々が半裸あるいは全裸で踊り狂ったり絡み合ったりするさまは、解放的で享楽的。男性同士のキスやヴォーギングなど、クィア的な表現も盛りだくさんとなっている。

 MVは公開から約2週間で627万回以上再生され、「このビデオは最高の意味で熱狂的な夢のようだ」「この雰囲気。そしてこの体。そしてこの官能性。一度でいいからこの音楽を生きてみたい」「同性愛を祝福する、このような大胆で力づけられるビデオを恐れることなくリリースしたことを大いに称賛したい」など、クィアコミュニティを中心に大絶賛を集めた。

性の多様性を讃える一方、体型の多様性は…

 クィアな雰囲気を全面に押し出し、コミュニティ内外の人を熱狂の渦に巻き込んだ「RUSH」のMV。しかし一方で、MVに出演している人たちが痩せている人・引き締まっている人ばかりで、プラスサイズの人が登場しないことがやり玉にあがり、「体型の多様性に欠けているのではないか」との批判も一部で巻き起こった。

画像: ©Troye Sivan/Instagram

©Troye Sivan/Instagram

 批判の先鋒のひとつとなったのは、英The Tabに掲載されたハリソン・ブロックルハーストの意見。自身もゲイであるというハリソンは、「これはバンガー(※人々を躍らせる曲)で、即座にソングオブザイヤーの候補となった。私は本当に大好き」と前置きしながらも、「クィアの快楽主義を美しく映した作品だが、ひとつだけ重要なことが欠けている。登場する男性たちは皆、棒のように細いか筋肉ムキムキ」と、体型の多様性への欠如に対する批判を展開した。

 ハリソンは「私はこれを、“トロイ・シヴァンをキャンセルしよう”、“ファットフォビア(肥満嫌悪)”の悪者だ“という暴論にしたいわけではない。ただ、かっこいい子たちと遊ぶには、自分はまだ実力もセクシーさも足りないという思いを抱くことなく、間違いなくこの夏の曲であるこの曲を楽しめるようになれたらというのは、求めすぎだろうか?」とコメントした。

本人は「意図なかった」と反応も、「無意識の偏見」だとまた批判

 ツイッターでは、「RUSHのMVセットへの扉」というコメントとともに細いドアの画像が投稿されると3.3万件以上のいいねを集めるなど、「ファットフォビア(肥満嫌悪)」と揶揄するコメントやミームが拡散するなか、トロイの親友でありシンガーのチャーリーXCXがTwitterで反論。

 「表現とか芸術というものは、あらゆる暗黙の条件を満たさない限り、時間を費やす価値はないと観衆が感じているような世界に生きている気がする。なんて退屈なんだろう。何かが一般的な美的感覚を破れば『奇妙』か『頑張って』、準拠すれば『不快』で『多様性が不十分』なんだ。なんとも退屈な話」と、アート作品がそれぞれの価値観や“条件”に沿っているかで測られる時代の流れを批判した。

画像: ©Charli XCX/Twitter

©Charli XCX/Twitter

 一方でトロイ本人も、米Billboardとのインタビューの中で「批判の声は確かに聞こえる」と批判に言及。「正直に言うと、それは私たちが考えていたことではない。『ある特定のタイプの人をビデオに登場させたい』と言っていたわけではないんです。私たちはただビデオを作っただけで、その背景には何の考えもなかった」と”肥満嫌悪説”を否定した。

 ただこの発言は、一部でさらなる批判を招くことに。というのも、“引き締まったからだ=美しい”という考えの多くはアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)からくるもので、“何の考えもなかった”ことが体型の多様性の低さに繋がった可能性が高いから。批判を受けてもそれに気づいていないと指摘されている。

 「RUSH」がクィアコミュニティを祝福している素晴らしい曲/MVであることは事実。MVに登場した人たちの体型が偏っていることも事実。現代のオーディエンスは特定の社会的条件を満たしていない作品には満足できない傾向にあるのも事実。引き締まった体型が優先される背景にはアンコンシャス・バイアスが潜んでいることが多いのも事実。多くの意見を通して多くの学びがあった今回の騒動。ハリソン・ブロックルハーストが言うように、「暴論」にすることなく、次につながる学びにしたい。

 トロイが「ダンスフロアでのキス、デートのはずが週末一緒に過ごすことになった時、ときめき、冬、夏。パーティーに次ぐパーティー、二次会に次ぐ二次会。失恋、自由。コミュニティ、シスターフッド、友情。そのすべて」が入っていると称するニューアルバム『Something To Give Each Other』は10月13日リリース。

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