マディソン・ビアーが「自伝」的なセカンドアルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』を携え帰ってきた。ジャスティン・ビーバーに発見され、12歳でショービズ界に飛び込み、今やSNSでの総フォロワー数は6500万人以上を誇るマディソンだが、2年ぶりにリリースされたこの新作で聴けるのは、マディソンが自分自身との対話や内省を得て辿り着いた、「自分自身のことを一番学ぶ」ことができた境地。アルバムの楽曲たちに基づきながら、マディソンのここまでの旅路を6つのポイントから振り返る。(フロントロウ編集部)

ジャスティン・ビーバーに見出されショービズ界入りしたマディソン・ビアー

 ニューヨークに生まれ、弱冠12歳でショービズ界に飛び込んだマディソン・ビアー。ニューヨークで母親と3歳年下の弟ライダーと3人で暮らしていたマディソンだったが、マディソンの夢を応援するため、母親は3人でエンターテイメントの本場であるロサンゼルスへ移住することを決断。

画像: ジャスティン・ビーバーに見出されショービズ界入りしたマディソン・ビアー

 母親はインテリアデザイナーとしての仕事を辞めてまで、マディソンのサポートを優先させることに。ちなみに、マディソンの両親は彼女が7歳だったときに離婚しているが、両親はその後も共同でマディソンとライダーの子育てを行なっている。マディソンは全力で自分を応援してくれる家族に支えられながら、自分の夢に向かって活動し、今ではSNSでの総フォロワー数が6,500万人を超えるほどのトップスターになった。

 ちなみに、一家でマディソンの夢をサポートするためにロサンゼルスへの移住を決断するきっかけとなったのが、彼女が12歳のときにYouTubeにアップした、エタ・ジェイムズの往年の名曲「At Last」をカバーする動画をあのジャスティン・ビーバーが発見し、SNSで紹介したこと。ジャスティンのフックアップもあって、一躍将来を最も期待されるアーティストの1人となった。

画像: マディソンと弟のライダー。

マディソンと弟のライダー。

 しかしながら、音楽活動は必ずしも順風満帆というわけではなく、ジャスティンとの縁で最初に契約がまとまりそうだったレーベルとは、“方向性の違い”を理由に、ジャスティンの敏腕マネージャーであるスクーター・ブラウンと袂を分かつことに。インディペンデント・アーティストとして音楽活動をスタートさせたマディソンだったが、2018年にリリースしたデビューEP『アズ・シー・プリージズ』で、インディペンデント女性アーティストとして初めて全米40位以内にランクインするという快挙を達成した。

画像1: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「とても誇りに思っています。すごく報われたように感じたのは、言われた音楽を無理矢理リリースさせられるのではなく、自分が繋がることができる音楽をリリースできたということです」ーXS Noiseにインディペンデント・アーティストとしての快挙について語って

自伝的なセカンドアルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

 その後、マディソンは自身の実力でエピック・レコーズとの契約を勝ち取ると、2021年に待望のデビューアルバム『ライフ・サポート』をリリース。同作から2年を経て、2023年9月にセカンドアルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリースした。

画像1: madisonbeerjp.lnk.to
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 「楽曲の間の沈黙」を意味する『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』というタイトルに込めた思いについて、マディソンは「私が多くの時間を過ごした家にいるときが、最もリラックスできて落ち着けるんです。それが楽曲の合間であり、騒音の合間で、私はそのときに自分自身のことを一番学ぶことができます」と英Official Chartsに話す。

 マディソンが楽曲の合間に自分を見つめ直したことで完成した『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』は、「自伝」のようなアルバム。

画像2: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「私にとって、このアルバムは自伝のようなもの。特定の一つの出来事についてのものではなく、今日の私を形作ったいくつかの出来事についてのものになっています」ーInStyleに語って

 ここでは、マディソンにとってのこれまでの自伝のようになっている『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』の楽曲たちを紹介しながら、マディソンがこのアルバムで再訪している彼女のここまでの旅路を6つのポイントから紐解いていく。

6つのポイントで紐解くマディソン・ビアーのこれまでと『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』

<1>弟ライダーとの関係性の変化

 現在24歳のマディソンにとって、12歳のときから文字通り人生の半分をショービズ界に身を置いてきたなかで、この数年の間に起きた特に大きな変化の一つが、自身の音楽活動に“巻き込んでしまった”ように感じているという、3歳年下の弟であるライダーとの関係性の変化

画像: 2021年12月に映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のLAプレミアに揃って出席したマディソンと弟ライダー。

2021年12月に映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のLAプレミアに揃って出席したマディソンと弟ライダー。

 マディソンの家族は彼女の音楽活動を熱心にサポートしていたというが、そのなかで苦労を経験することになったのが、弟として目まぐるしい日々に一緒に身を置くことになったライダーだったそう。マディソンがアルバムで最も「神聖」な曲だとIndependentに語る、弟の名前がそのままタイトルになった「Ryder」は、ライダーへの謝罪の気持ちと愛を歌った1曲。

画像3: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「弟がただの傍観者になってしまっていた期間が何年もありました。私に起こることすべてが弟に影響を与えてしまっていたのですが、当時はそのことに気がついてすらいませんでした。お互いに年を重ねたことで、私たちの人生を客観的に見ることができて、『あなたの不安定な子ども時代に私が関係していたんだ』って思えるようになりました」ーPeopleに語って

いつも置き去りにしてしまっていたね
あなたはそれでも私を愛してくれた
あなたは友だちが欲しいだけだった
そのときはわからなかった
でも今ならわかるよ
私たちの青春は失われた
すべての責任は私にある
あなたが涙を流した数え切れない時間の

目を閉じて あなたが疲れているのはわかってる
あなたと私 子どもたちだけ 大変なときもあるよね
でもあなたは大丈夫 私たちは大丈夫

「Ryder」歌詞抜粋


<2>3度目の長期交際に突入している

 2020年にTikTokなどで人気を集めているインフルエンサーのニック・オースティンとの交際をスタートさせて、ニックとの交際3年を迎えたマディソン。彼女にとって3度目となる長期にわたる恋愛で、デビューアルバム『ライフ・サポート』を制作していたときには交際していなかった彼が初登場する「Nothing Matters But You」を筆頭に、『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』にはもちろんラブソングも多く収録されている。

 

画像4: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「ラブソングが待ち遠しかったです。みんなに私の愛の側面を見てもらいたくて。彼(ニック)はすごくサポートしてくれますし、お互いを頼りながら、支え合うような関係でいれていると思っています」ーPeopleに語って

 中でも、最もストレートで甘美なラブソングといえるのが、「恋をして誰かに夢中になることについての曲。アルバムにおけるセクシーな側の曲」とTikTokで解説していた「Sweet Relief」。「甘い安らぎ」を意味するタイトルがつけられたこの曲で、マディソンはただひたすらに、好きな人に心からの愛を伝えている。

これは私たちしか知らないこと
ベイビー、自分を抑えられないの
どこへ行ってもあなたのことを見る
他の人は夢に出てこない
私に必要なのは甘い安らぎ
これは私たちしか知らないこと
私たちしか知らないこと

「Sweet Relief」歌詞抜粋


<3>一貫した自己プロデュースの精神

 独自の路線を行くファッションやメイク、力強い発言でソーシャルメディアでも人気を集め、今では総フォロワー数を6,500万人以上抱えるマディソン。ソーシャルメディアでも大きな注目を集めるセレブが音楽をリリースするときにありがちな批判の一つが、“本物のアーティストじゃない”という根拠のない批判。

画像5: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「それが持つ意味が何であれ、私のことを“本物のアーティスト”として見ていない人たちは数え切れないほどいます。そんなことに囚われるつもりはありません。私は、自分のことを真剣に捉えてくれる人たちをたくさん知っていますし、私の音楽を愛し、ツアーに来てくれ、音楽を聴きたいと思ってくれる人たちをたくさん知っていますから」ーIndependentに語って

 そうしたアンチの声には耳を貸さない姿勢を貫くマディソンだが、彼女は、最初にジャスティンがきっかけで繋がった敏腕マネージャーのスクーター・ブラウンとは別々の道を進むことを決めたときからずっと、“自分がやりたいこと”だけを突き詰めてきた。デビュー作『ライフ・サポート』でもそうだったが、マディソンは本作でも全曲の作曲とプロデュースに携わり、「Home to Another One」「Spinnin」ではミュージックビデオのディレクションにも携わった。

 マディソンは「Spinnin」の楽曲やミュージックのコンセプトについてプレスリリースで次のように述べている。「この曲はすべてが止まってしまったように感じたときのことを反映しています。私は毎日が繰り返しのように感じて、不安のなかに閉じ込められたように感じてしまったのですが、最終的には、頭の中にある考えや感情を深く探ることができました。シネマティックで、そういう感情を視覚的にもたらしてくれるようなビデオを夢見ていたので、創り上げたものには誇りを感じています」

世界は止まってしまったの? 何も変わっていないみたい
私は振り出しに留まったまま 痛みを抱えている
太陽は昇るのを止めてしまったの? 空が灰色だから
今日は世界は回るのを止めてしまったの?

「Spinnin」歌詞抜粋


<4>時代を超越する音楽へ

 本作をサウンド面でユニークにしているのは、ザ・ビートルズやザ・ビーチ・ボーイズ、テーム・インパラ、ラナ・デル・レイといった、彼女が尊敬するアーティストたちから受けた影響がアルバムを通して感じられる点。中でも、アルバムに先立ってリリースされた「Home To Another One」 はマディソンの音楽性を消すことなく、テーム・インパラやラナ・デル・レイらから受けた影響を完璧な配合でミックスさせたような仕上がりとなっており、これからさらにマディソンのファンベースが広がっていくことを予感させた1曲。

画像6: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「私の『ポップサウンド』ってどんなだろう?って思ったんです。昔はアップビートな曲を作っていたのですが、そういう曲は私にとって自分に忠実というわけではなかったですし、自分が車で聴きたいと思うような曲ではありませんでした。それで、『ポップで楽しいけど、それでいて私らしくて、アップビートと括られるような売れ線じゃないものにするには、どうすればいいだろう?』って考えました」ー「Home To Another One」についてGRAMMY.comに語って

私を「ベイビー」って呼んで
あなたが他の人のもとへ帰るのはわかってる
私なんて嫌いって言って
別にいいよ、あなただけじゃないから
また1年が経った
私たちはまだここにいる
私を「ベイビー」って呼んで
あなたが他の人のもとへ帰るのはわかってる

「Home To Another One」歌詞抜粋

 そして、より直接的に彼女が好きなアーティストからの影響を反映したのが、ザ・タートルズが1968年にリリースした名曲「You Showed Me」を参照した「Showed Me (How I Fell In Love With You)」。マディソンはこの曲について、「アルバムのなかでも個人的にトップ5に入る曲です。クールな曲ですし、私が目指している新しいサウンドを体現していると思います」とオランダ版Nylonに語る。

あなたは私に方法を教えてくれた
あなたのやり方で
私がどうやってあなたに恋に落ちたか
あなたが部屋に入ってくると
みんなが夢中になる
ああ、どれだけあなたになりたいことか

「Showed Me (How I Fell In Love With You) 」歌詞抜粋

 マディソンが「新しいサウンド」で目指すのは、この先ずっと聴かれる音楽になっていくこと。

画像7: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「私はあらゆる時代の音楽の大ファンなんです。私が一番惹かれるのは、時代を超越する音楽ですし、私もそういう要素を捉えたいと思ったんです。このアルバムを手に取ってくれた人に、『このアルバムは何年のものだろう?』って思ってもらえたら嬉しいです。それが目標ですね」ーイギリス版Vogueに語って


<5>メンタルヘルスとの対話は続いていく

 境界性パーソナリティ障害(BPD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(OCD)、パニック障害と診断されたことをオープンにしているマディソン。日常的にもメンタルヘルスの大切さについて発信し、デビューアルバムでもそのことに触れていた彼女だが、『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』でも、メンタルヘルスとの対話は継続している

 「私はものすごく若い頃から、ある意味ではバラバラになってしまっていました。私は12歳のときに発見されました。なので、私は人生の大半の時期に自分の見た目についてコメントされてきたわけです。それは簡単なことではありませんでした」とマディソンはGlamourに語っている。「周囲からは、それまで見たことがなかったようなことを言われるようになり、私は殻に閉じこもってしまいました」

もう遅すぎるかな? ペースを落とすには

私の人生には訪れる機会がなかった
立ち止まって、花の香りを嗅ぐ機会が
ずっと座ることができずにいる
何時間も夢を見続けることも
思い出はない まるで白黒テレビのよう
大丈夫だってみんなが言う
人生なんてただのゲームだよって
でも私はプレイしたくない

「17」歌詞抜粋

画像8: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「最悪の時期は過ぎたように感じていますが、いつでもそこへ戻り得ることがあると考えると、本当に恐ろしいです。私が一番恐れているのはそのことですね」ーPeopleに語って


<6>自分への愛とリスペクトを学んだ

 メンタルヘルスとの対話はこれからも続けていくが、マディソンが前を向けているのは、『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』の制作期間中にひたすら自分自身と向き合い、自分への愛と自分へのリスペクトを持つことを学ぶことができたから。

画像9: 6つのポイントで辿るマディソン・ビアーの旅路、自伝的アルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリース

「この2年間にすごく自分と向き合ったんだ。セラピーもたくさんやって、スピリチュアルなこともやって、自分について学んでいた。そのうちの一つが、自分と向き合うことだったの。『これは私なの?』って何度も考えた。(中略)『私って愛されない存在なのかも?』って考えたこともあったし、みんながそういう時期を経験するものだと思う。私はセラピーを通じて自分への愛を学んだし、私を愛するのは危険すぎることじゃないってことも学んだけど、この曲はそういうことを考えているときについての曲」ー「Dangerous」について語ったインスタグラムのライブ配信にて

私に真実を伝えて
私は何をしたの?
私を見て
どうして私には見えないの?
こんなに簡単じゃないはず
私を手放すのは
私は愛を危険すぎるものにしてしまうみたいね

「Dangerous」歌詞抜粋

 「この数年でたくさんのことを学びました。セルフラブも、自分へのリスペクトも持っています。他の人たちに対して持っているのと同じくらいのリスペクトを自分にも持てるように心がけているんです」とマディソンはThe Forty Fiveに語っている。「私は自分のために立ち上がりますし、今のような自分も、これからなっていくであろう自分のことも誇りに思っています。私は自分自身の親友になりたいし、1日の終わりに一緒に寝られることを誇りに思える自分になりたい。毎日、そうなれるように取り組んでいます」

 自分のやりたいことに向かって自分でその道を切り拓いていく、自己プロデュースの精神はそのままに、時代を超越する自分好みの音楽を用いて、これまで以上に普遍的な魅力を持つアルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』を創り上げてみせたマディソン。彼女が自分との対話を通じて再訪したこれまでの人生が詰まっているこのアルバムは、確かにマディソン・ビアーというアーティストの自伝ではあるかもしれないが、ここで聴けるのは、誰しもが通ってきた感情でもある。

 『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』には全14曲が収録されているが、様々な人生の“寄り道”を表現しているそれぞれの楽曲を通して、24歳にして多くのことを乗り越えてきたマディソンが、その曲間で寄り添うように聴く人に力を与えてくれるはず。


<リリース情報>
マディソン・ビアー|Madison Beer
「サイレンス・ビトゥイーン・ソングス | Silence Between Songs」
発売中
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画像2: madisonbeerjp.lnk.to
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【収録曲】
1: SPINNIN / スピニン
2: SWEET RELIEF / スウィート・リリーフ
3: ENVY THE LEAVES / エンヴィー・ザ・リーヴス
4: 17 / セヴンティーン
5: RYDER / ライダー
6: NOTHING MATTERS BUT YOU / ナッシング・マターズ・バット・ユー
7: I WONDER / アイ・ワンダー
8: AT YOUR WORST / アト・ユア・ワースト
9: SHOWED ME / ショウド・ミー
10: HOME TO ANOTHER ONE /ホーム・トゥ・アナザー・ワン
11: DANGEROUS / デンジャラス
12: RECKLESS / レックレス
13: SILENCE BETWEEN SONGS /サイレンス・ビトゥイーン・ソングス
14: KING OF EVERYTHING / キング・オブ・エヴリシング

Photo:©️Le3ay,スプラッシュ/アフロ,ニュースコム,Instagram

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