最新作『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリースしたマディソン・ビアー
「私が最も大切にしているのは、自分自身に正直であることです」。セカンドアルバム『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』をリリースしたマディソン・ビアーは、フロントロウ編集部とのインタビューでそう話してくれたが、思い返せば、12歳でショービズ界に足を踏み入れて以来、人生のおよそ半分をショービズ界の中で過ごしてきた現在24歳のマディソンは、デビューする前からずっとそうした姿勢を貫いてきた。
マディソンがショービズ界に足を踏み入れるきっかけとなったのは、12歳のときにYouTubeにアップした、エタ・ジェイムズの往年の名曲「At Last」をカバーする動画をジャスティン・ビーバーが発見して、彼がSNSで紹介したこと。一躍時の人となったマディソンは、間もなくしてレコード契約をオファーされたものの、当時レコード会社が求めていたことと、自分が本当にやりたいと思っていたことの間にギャップを感じて、彼女はそのオファーに断りを入れた。
そのときから一貫していたのは、自分に正直な作品を創りたいという、音楽に対するマディソンの強いこだわり。2023年9月にリリースされた『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』は、2021年にリリースしたデビュー作『ライフ・サポート』の時もそうだったように、マディソンが全曲の作曲とプロデュースに携わり、一部のミュージックビデオでも自らがディレクションを担当した、彼女の思いが詰まった自己プロデュース作品。
自分らしさを貫く姿勢が共感と憧れを呼び、今ではソーシャルメディアでの総フォロワー数が6,500万人を超えているマディソンだが、セカンドアルバムやそのテーマである家族、何もかもを自分でコントロールすることへのこだわりなどについて訊いた貴重なインタビューで伝わってきたのは、そうした姿勢が、いかに彼女の音楽が持つ普遍的な魅力に繋がっていたかということだった。
マディソン・ビアーにインタビュー
フロントロウ編集部:本作『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』では前作と同様、全曲の作曲とプロデュースに参加し、「Spinnin」や「Home to Another One」のミュージックビデオではディレクションも手がけています。自分自身でコントロールすることに対しては、どのようなこだわりがあるのでしょう?
マディソン・ビアー:幸運にも、私はリロイ・クランピットという素晴らしいプロデューサーと一緒に(デビューアルバムである前作)『ライフ・サポート』に取り組んだのですが、寛大にも彼が、私も共同プロデューサーとしてクレジットされるべきだって言ってくれました。アイディアは私と彼の両方から生まれたものだし、私も彼と同じだけのことに取り組んだのだからって。私の作品は私にとってパーソナルなものになっていますし、ファンにもそういう風に伝わってほしいと思っています。今は、自分に対して自信や確信を持てているので、アルバムの大部分のライティングやプロデュースを担当できたことは、素晴らしい取り組みになりました。
ミュージックビデオまでご自身でディレクションするというのは、なかなか無いことだと思います。ビデオを手がけたいと思うようになったきっかけはあったのでしょうか?
元々、演技にはずっと興味があったのですが、次第に監督業にも興味を持つようになりました。今ではこうして自分のミュージックビデオを監督するようになったので、いつかは映画も監督できたらとも思っています。映画や音楽の一部に触れると時折、それがきっかけとなってビデオを作りたいという衝動に駆られることがあるのですが、それは私にとって、その曲がうまくいくかどうかの良い基準になっています。もしも楽曲からミュージックビデオが想像できなければ、それは良くないという兆しなんです。
マディソンさんの自伝的な作品になっているという『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』では、家族との関係性がテーマの1つになっていますね。
家族はとても大切な存在です。目まぐるしい人生を送ってきた私にとって、特に若い頃は、私が常に地に足を着けていられるように家族が支えてくれました。このアルバムは、自分を見つめ直したことがきっかけで生まれたような作品なのですが、家族や、特に弟との関係を振り返りながら、自分自身のことを掘り下げています。
シングル「Ryder」は、その弟さんであるライダーへの謝罪の気持ちが込められた楽曲になっています。マディソンさんがショービジネスの世界に入ったことがきっかけで、ライダーの生活に訪れた変化について謝罪しているこの曲を、彼に初めて聴かせたときのリアクションはどうでしたか?
弟のライダーは私の人生の大きな部分を占める存在です。この曲は私にとって恐ろしい曲でありつつも、アルバムで最も重要な曲の1つです。私と一緒にあらゆることを経験することになったライダーですが、私がそのことに対して罪悪感を認識するようになったのは、数年前になってからでした。私が12歳でキャリアを始めたとき、弟は9歳でした。私がLAに移住できるように、弟まで学校の転校を余儀なくされたことも、弟が巻き込まれることになったあらゆるクレイジーなことも、彼が自分で望んだものではありませんでした。私は弟を愛していますし、誇りに思っています。私には弟に謝罪すべきことがありましたし、弟には、私がこの曲の中で伝えているあらゆることを聞く資格があるように感じました。弟がこの曲を聴いたとき、平穏を見つけてくれたんじゃないかなって私は思っています。彼が図らずも経験したことを私自身が認識できたことは、本当に大きなことでした。
創作活動に関するあらゆることを自らハンドリングしていることもそうですし、マディソンさんは女性としての力強い発言でもファンに力を与えてくれる存在です。そのようなフェミニストとしてのご自身の側面は、お母さんからの影響もあるのでしょうか?
家族は何年にもわたって、音楽から何から何まで、私をずっとサポートし続けてくれました。母は自分のキャリアを脇に置いて、私をサポートしてくれましたし、何をやるときにも母がいてくれたことは、本当にインスピレーションになりました。私にとって、母は女性のエンパワーメントの先駆者のような人です。
このアルバムにはテーム・インパラやラナ・デル・レイといったアーティストからの影響や、ザ・ビートルズやザ・ビーチ・ボーイズといった昔の年代の音楽からの影響も詰め込まれています。今回のアルバムでそうしたアーティストの音楽を参照しようと思った理由を教えてください。
テーム・インパラやラナ・デル・レイは、私が最も影響を受けたアーティストの2組ですし、アルバムを作っていたときによく聴いていたのが、ザ・ビートルズやザ・ビーチ・ボーイズ、クイーンの音楽でした。彼らのようなサウンドの音楽を目指しながら作ったのですが、それを探求するのはすごくワクワクしましたね。とても野心的な挑戦ですし、今になってようやく、それに挑戦する勇気が持てたんじゃないかなとも思っています。
以前、イギリス版Vogueとのインタビューで「時代を超越する」音楽を目指したいと語っていたのが印象的でした。マディソンさんにとって、「時代を超越する」音楽に欠かせない要素は何でしょう?
トレンドというのは、やって来ては去るという繰り返しですが、私は自分の周囲や、世の中で起きていることに目を向け過ぎないように心がけています。タイムレスな何かを作る上で不可欠なのは、自分が愛していることにフォーカスして、ありのままの自分に忠実な音楽を作ることだと思うので。
音楽やミュージックビデオの制作、ソーシャルメディアへの投稿を含めて、マディソンさんがクリエイティブな活動をする上で最も大切にしていることはなんでしょう?
私が最も大切にしているのは、自分自身に正直であることです。そして、どんなものを創るときにも、他の人たちが何かしらの形で共感できるようなものにするということ。ソーシャルメディアについては、ファンと話すために使うのも大好きです!
『サイレンス・ビトゥイーン・ソングス』を通して、オーディエンスがどんなことを感じてくれたら嬉しいですか?
このアルバムに共感したり、心地良さを感じたりしてもらえたら嬉しいですし、アルバムを作っていたときに私がそうだったように、インスピレーションを感じてもらえたら嬉しいですね。聴いてくれる人それぞれにとって、パーソナルな体験になってくれることを願っています。
ところで、過去に来日こそあるものの、まだマディソンさんの来日公演は実現していません。日本のファンは来日公演が実現することを楽しみに待っています!
日本のことは大好きですよ! 素晴らしい場所だと思っていますし、日本へ旅行したときのことは一生の思い出です。近いうちに日本でパフォーマンスできることを願っています。日本のカルチャーは何もかもが大好きですから!
日本のファンにメッセージをお願いします!
みんなのことを愛してるよ! いつもサポートしてくれてありがとう。早くみんなに会いたいな!
<リリース情報>
マディソン・ビアー|Madison Beer
「サイレンス・ビトゥイーン・ソングス | Silence Between Songs」
発売中
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